第282話 島に居た先住民と交流を図れた。

新発見だと思われる島して数十分、ウーテが何かの話し声を聞いたので警戒態勢に入った。


流澪も想像剣術イマジンソードプレイをいつでも使えるようにナイフを構えている、俺も丸腰だがいつでも想像錬金術イマジンアルケミーを使う態勢だ。


「近くに居るんだけど声が小さいわね……。

 敵意が無ければ出てきなさい、私達はここを荒らしに来たわけじゃないわ!」


ウーテが手に水球を浮かべて、近くに居るであろう何かに呼びかける。


だが話し声は聞こえるものの、出てくる気配はない……一体どこから話し声がするんだ?


一瞬植物の声かと思ったが、あれは頭の中に直接語りかけてくるタイプなので除外。


「光学迷彩を持った種族かしら?」


「光学迷彩なんてSFみたいな技術、この世界の文明力であり得るのか?」


「生物としての擬態能力なら光学迷彩も十分あり得るわよ、カメレオンやタコ・イカなんかが有名じゃない?」


あれって光学迷彩になるのか、かなり高度な技術で生き延びているんだなぁ。


「擬態ってことはその辺に隠れてるってことかしら?

 村長、この辺に能力を放ってあぶり出していい?」


「ダメだ、こちらから先に戦闘行為をするのは誰であれ認めない。」


「それで誰かケガをしたり危険な目にあったりしても?」


「もちろんだ、その手の解決能力は充分備わっているだろう。

 とにかく待とう、近くに何か居るのは分かってるんだし。」


ウーテに「平和主義の頑固者なんだから……。」と呆れられたが、この信念を変えるつもりはない。


もし不慮の事故で誰かの命を奪ってしまったら、その種族と友好関係を結べなかったら、それが広がり他の種族へ不信感を抱かれたら……1つの命は世論を動かす充分な力を持っているだろうし。


何より村の住民に殺人をしてもらいたくない、話し声ということは理性がある種族が近くに居るという事だし。


「ちょっと拓志……下。」


「下?」


流澪に言われて下を見ると、足首くらいまでの背丈しかない何かが数匹まとわりついていた。


よく見るとウーテと流澪の足元にも。


「うわっ、これなんだ?」


「あーっ!

 コロポックル族じゃない、そりゃいくら周りを警戒しても何も見つけれないわけだし声も聞こえるわよ!」


ウーテはそう言うと地面にうつ伏せになり、コロポックル族と話し始める。


ファーストコンタクトはウーテに任せるとしよう。




「村長、紹介したいから地面に寝そべって。」


「分かった。」


俺は地面に寝そべりコロポックル族に自己紹介をする。


向こうも自己紹介をしてくれた、どうやら近くに集落があるらしい。


「――というわけなんだ、この島を少し探検してもいいか?

 集落には迷惑をかけるつもりはないし。」


「近頃魔物が居るのでもし見かけたら討伐してくれると助かる。

 超大型のリーズィヒエーバーなんだが……。」


なんだあのイノシシか、それくらいならウーテが楽勝で倒してくれるだろう。


「分かった、見かけたら討伐するよ。」


「いや、ここから見えるぞ。

 アレだ。」


コロポックル族が小さな指で茶色の山を指差した、俺もその方向を見るが山しか見えない。


滅茶苦茶目がいいんだろうな、まさか山に居るイノシシがここから見えるなんて。


流澪はニコニコでコロポックル族と会話を楽しんでいたが、俺の会話が耳に入って来たのか俺の視線と同じ方向の山を凝視している。


「……待って。

 山だと思ってるアレが超巨大なリーズィヒエーバーなの!?」


「嘘、どこ!?」


流澪はとんでもない事実に気付いて顔面蒼白になっているが、ウーテは間髪入れずに嬉々としだした。


ドラゴン族は本当に戦闘が好きだなぁ、でもあんな大きなヤツどうやって倒すんだ?


「あのリーズィヒエーバーが邪魔で集落は狩りや採取に行けない。

 もし討伐して退けてくれたらお前たちの願いを何でも1つ聞くぞ。」


「じゃあ私達の村に移住してよ!」


今度は顔面蒼白だった流澪が笑顔でコロポックル族と交渉を始めた、村長は俺なんだけど。


どうしようか考えてたらウーテはイノシシと戦闘に行ってるし、流澪はコロポックル族の会話に割り込んで自分の願いを伝えてるし。


流澪のワガママを聞く日だから別にいいんだけど、村や他の人の命が関わる選択を好き勝手させるつもりはない。


コロポックル族だって事情があるだろうし、移住出来ないかもしれないからな。


「何だと!?」


「仕事さえしてくれたら誰でも移住が認められる村なんだけど、衣食住すべてが心配ないから損は無いのになぁ。」


最初は流石に断ろうとした表情のコロポックル族だったが、流澪の言葉を聞いて物凄い悩みだした。


動植物は豊富そうに見えるが……あんな突然変異体のようなイノシシがいる場所だと決して安全だとは言えないからな。


それに気づいたけど、あの少し離れたところに見える茶色い山も超巨大イノシシだろ……見えるだけで20匹は居る。


この島、案外危険かも。


「倒したわよー、あれ血抜き間に合わないから村長の力で肉に加工して。」


「分かった。」


ウーテはウーテであの大きさにもかかわらずイノシシをほぼ瞬殺、ドラゴンの姿になったのは見えなかったからあの体格差でも何も問題無いということだろう。


ドラゴン族はやっぱり規格外だ。


俺はイノシシを肉に加工してコロポックル族に渡す。


「これ、皆で分けて食べてくれ。」


「こんなにもらえない!

 消費しきれなくて腐らせてしまう!」


軽く見積もって数十トンある肉のうち5キロくらいを渡そうとしたが断られる……どうしようこれ。


「ドリアードさんにこれを肥料にしてここの植物に与えてもいいか聞いてみたら?」


流澪から名案が提示される、そうすることにしよう。


「ドリアード様!?」


コロポックル族は俺達の会話に驚くことしかしていない、とりあえず集落に帰っておいていいぞ。


後で顔を出させてもらうから。




ドリアードを召喚すると頭にタオルを乗せた状態で召喚された。


「え、ちょ、なに!?」


「すまん、お風呂を満喫してたのか。

 いやな、今この島にとんでもない大きさのイノシシが出てるんだが……それを1匹討伐したんだよ。

 だがあの肉を持って帰るのは不可能だしここで消費するのも不可能、なら肥料にしてこの島の植物に……と思うんだがそれはしていいのか?」


「お風呂を満喫してたところを呼ばれたからどうしてくれようかと思ったけど、滅茶苦茶いい話じゃない!

 いいわよ、どんどんやって……はダメね、流石に栄養過多で植物が腐っちゃう。

 その巨大イノシシも何回かに分けて肥料にするか、超広範囲に栄養を広げてくれればいいわ。」


行き過ぎた栄養は根腐れを起こすからな、流石はドリアード。


よし、それじゃ後者の案を採用するとしよう。


「ウーテ、俺を乗せて島が一望できる高さまで飛んでくれ。」


「分かったわー、ちょっと待ってね。」


俺はイノシシ肉を肥料に錬成する準備、といっても思い浮かべるだけ。


問題無さそうだ。


ウーテもコロポックル族との会話が終わったらしく、俺を乗せて島全体を見渡せる高さまで飛んでくれた。


「範囲は島全体……でも光ってるな、よかった。

 ウーテ、もう降りていいぞ。」


降りるとコロポックル族が走って俺に寄って来た、そんな慌てなくてもいいぞ。


「コロポックル族、村に移住する!」


え、上空に行ってた数分の間に何があったんだ?

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