第252話 カールの対処をするため、シモーネとアラクネ族を訪ねた。
俺とメアリーとカールの3人でオスカーの家を訪ねる、哨戒から帰って家に居るのではないかと他のドラゴン族から聞いたからな。
「オスカー、居るか?」
玄関をノックしてオスカーを呼ぶ、居てくれたら話が早いんだけど。
シモーネは妊娠中だから恐らく家に居るだろうし。
「む、村長ではないか。
どうしたのだ?」
「ちょっと頼みたいことがあってな。
シモーネの負担にならなければでいいんだが、カールの生命力と魔力の量を見てもらいたいんだよ。」
「あれは能力というよりシモーネ自身が持つ特性のようなものだ。
見たところで体に負担は一切かからんから安心してくれ、シモーネは中に居るし頼めばいいだろう。」
「分かった、ありがとう。」
良かった、とりあえずこれで一つ懸念事項は解決される……どれくらい魔力があるかでアラクネ族に頼む装飾品の質が変わるからな。
安全を考慮すれば最高品質がいいのだろうが、在庫があるかもわからないし……。
俺はオスカーの家にお邪魔してシモーネが居る居間へ向かった。
「あら村長、家族で来るなんて珍しいわね。」
「ちょっと緊急事態でな――」
俺は事情を説明し、シモーネにカールの生命力と魔力の量を見てもらう。
「ん、どちらも現状健康ね。
量で言うなら生命力は年齢相応、魔力量はプラインエルフ族の平均より少し低めくらいかしら?」
「それは、
「程度による、としか言えないわね……それは村長が一番よくわかってるのではなくて?
大きい物を錬成すれば大きく消費するし、小さい物なら少ない消費で済むし……でも人形を作った程度じゃ魔力は枯渇しないわよ。
なんなら私と初めて会った時の村長より魔力量は多いくらいだわ。」
それもそうだ、俺も装飾品で魔力量を増やすまで家を数棟錬成したらしんどくなってたし。
その時の俺より多いと分かっただけでも一安心だろう、よくよく考えればその素材で何かを作りたいと思えないと
ガラスを理解していたのは驚きだけどな、恐らく偶然だろうけど。
「ありがとう、それを聞けただけでも安心したよ。」
「しかしカール君が
ペトラとハンナも使えたりするのかしら?」
シモーネは本当に驚いている、俺達だって驚いたからな……だって神のスキルだし。
「それは今後注意深く見てあげていくしかないだろうな……子どもの好奇心で連発してたら命の危機になるし持っていないほうが安心するけど。
それにスキルの有無で子どもの尊さは変わらないし。」
「ふふ、優しいのね。
厳しい環境だと遺伝した能力・才能次第で子の価値が決まるところもあるのに。
村長はそうだから皆に好かれているんでしょうけど。」
シモーネから直球で褒められて照れてしまう、好かれているのかな……そうならありがたいんだけど。
「それじゃあ俺はアラクネ族の所で魔力量を増やす装飾品を貰ってくるよ。
シモーネもしっかり休んで元気な子どもを産んでくれよ。」
「えぇ、2人目だし特に何も心配してないのだけど。
それにポーションとグレーテさん、それに魔族領から来ている冒険者の方々が状態異常回復魔術を使ってくれるのでクルトの時より安全に産むことが出来るわ。
何かあれば流澪さんも居ることだし。」
冒険者ギルドで鍛えられてる人たちも状態異常回復魔術が使えるんだな、しかし村の住民に使ってくれているなんて思っていなかった。
今度会ったらお礼をいっておこう。
俺達はオスカーの家を後にして、アラクネ族の工房へ向かった。
「お邪魔するぞ。」
「村長、珍しいですね……あら、メアリー様とカール様もご一緒ですか?」
工房に行くとイェンナが俺達を出迎えてくれる、少し見ない間に装飾品がずらりと棚に陳列されていた。
「この装飾品は商店街やデパートに出さないのか?」
「効果が相当高い物ですから値段が値段でして……行商の方々と相談したのですが金貨数十枚は下らないと言われたのです。
なので念のため私達の目が届く範囲で管理、販売を行ってるんですよ。
ちなみに、いくつか売れたこともありますよ。」
効果の高い物がこれだけの数揃っているとなると、有事の際も安心だな。
そんなことが起こらないのが一番だけど。
「ちょっとアラクネ族に依頼したくてここに来たんだ。
俺に魔力量を増加させる装飾品を作ってくれただろ、あれと同じような効果でカールが付けてても不快にならないようなものを作ってほしいんだけど……出来るかな。」
「カール様にですか……お子様が長く付けれる装飾品は初めてですね。
しかしどうされたのですか?」
俺はイェンナに事情を説明。
するとイェンナの表情が一気に覇気迫るものになった、どうしたんだ。
「それは一大事ですね、初めてですが装飾品を作ることで村に住まわせていただいている身。
村の知識と技術の粋を集めて必ずや完成させてみせましょう!
……あ、とりあえずこのネックレスをお渡ししておきます、紐の長さは調整出来ますのでカール様にあった長さで付けてあげてください。
村長の物と比べても遜色ない効果ですのでご安心を。」
もうこれでいいんじゃないだろうかと思ったが、イェンナの表情は完全に職人のそれだ。
依頼した手前これでいいやとも言えず「わかった。」とだけ言ってネックレスを受け取ってカールに付ける。
イヤイヤして外さなければいいけど……お、思いのほか気に入ったみたいだ。
「それにしてもアラクネ族の作った装飾品はどれも綺麗ですねぇ。
デパートや商店街でも大人気なんですよ、私もいくつか買わせていただきました。」
そうだったのか、あまり付けたところを見ないから知らなかったぞ。
口には出さないけどな、気づいてなかったら機嫌を悪くしそうだし。
「メアリー様が買われてたんですか!?
申し訳ございません、言ってくだされば無償で気に入ったシュムックを使いあつらえてお作りしましたのに!」
イェンナは慌ててメアリーに謝罪する、だがメアリーはそれを聞いて首を振った。
「オシャレ用ですからいいんですよ、それに私にとってお金は欲しい物を買うために使うものですから。
魔族領と人間領では生きるために必要ですが、この村ではそうじゃありませんし。」
「それならいいのですが……。」
メアリーの言葉を聞いてイェンナは顔を上げた、今はクズノハの式典で使いたいからあればあるほどいいけど、それも過ぎてしまえば特に必要としないからな。
むしろどうやって各領に還元しようか悩むくらいだ、人間領にもいずれ大きな額を還元したいものだが……今のところ交易以外特に無いんだよな。
クズノハのようにおめでたい事があればパーッと使うんだけど、俺の耳に入っている情報じゃそんな事も無さそうだし。
強いて言うならオスカーとキュウビくらいだろうか、しかしキュウビは既に人間領に属してないからな……どうするんだろう。
聞いてみればよかったな、今度食事か風呂で一緒になれば聞いてみるか。
「では、私は早速カール様の装飾品を作る作業に移りますので。」
「分かった。
しばらくはネックレスで大丈夫だろうから、そこまで急がなくていいぞ。」
……と言ったのだが、イェンナの姿は既に無かった。
どうやら工房の奥へ行ってしまったらしい、根を詰めて体調を崩さなければいいけど。
とりあえずカールの心配事は無くなったので、メアリーは狩りに戻るとのこと。
1週間に一度肥料を作って森に還すローテーションをするらしいので、
もちろんそれくらいはさせてもらうぞ、他に出来ることが無いし。
外でメアリーと別れてカールと2人で家に帰り、お昼前に寝かしつけようとするが……今日は興奮しているのか少し寝付きが悪い。
いつもならベッドに寝かせるとすぐに寝るんだけど、色々歩き回ったし疲れてると思ったんだけどな。
でも元気そうだし遊ばせておくか。
俺はカールを連れて書斎に行き仕事をする事にした、前の世界でいうToDoリストを作っていたのでそれの編集をしないと忘れたら大変だし。
手書きだとものすごい面倒なのが玉に瑕だけど。
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