第221話 想像剣術を使ったカタリナの治療に成功した。
「ウーテさんどうかしら。
こっちは手ごたえあったんだけど、体に変化はあった……?」
剣を振り下ろしたまま流澪がウーテに問いかける、手ごたえがあったのなら何かが切れたのだろう。
思った通りウーテの肩こりが治っているなら大成功だ、その人が罹患している病気も切ることが出来るはず。
滅茶苦茶だがあの神のスキルだ……
少し怖かったのか目を瞑っていたウーテがゆっくり目を開いて腕を回す、最初はゆっくりだったが徐々に回すスピードが上がって、最後には子どもが腕を振り回すくらいの速度になった。
「すごいすごい!
肩がとっても軽いわ!」
はしゃぎながら腕を回し続けるウーテ、少ししてカタリナが居るのを思い出し「ごめんなさい……。」と謝りながら座って大人しくなる。
そんな小さくならなくていいから、被験者になってくれただけ今はとても有難い。
「成功したけど、カタリナさんの病気に対して成功するかしら……?」
「流澪は
「光ってるわけじゃないけど、対象に筋が見えるようになるわね。
その筋をなぞるように刃を走らせると
「そのポップアップとどうすればいいかが出てるなら、経験上絶対成功するから安心していいと思うぞ。
流澪の知識はすごいが、せっかく神からもらったスキルなんだし
俺も使用時にはポップアップが出てるし材料が無ければ光らない、恐らく対象に見える筋が
「その言葉を聞いて安心したわ、もし失敗したらって考えるといつも不安だったのよね……。
それなら早速カタリナさんと病気の繋がりを切ってみるわ。」
流澪は表情に安堵を浮かべながらカタリナに向かって短剣を構える……俺は発動できることを祈りながらその姿を見ていた。
「出たわ、筋とポップアップ……!」
発動できることを確認した流澪はそのまま短剣を振り下ろす、流澪は疲れたのかその場にへたり込んでしまった。
「大丈夫か?」
俺は流澪に駆け寄って起こそうとすると「私は大丈夫だから、カタリナさんを心配してあげて。」と窘められた。
頑張ってくれた流澪も心配だったが本人がそういうなら大丈夫なのだろう、後で労ってやらねばと思いながらカタリナの様子を見る。
額を触ると熱はすっかり下がって気持ちよさそうに眠っていた、目で見て分かるくらい健康体になっているな。
「良かった、カタリナの十日熱は治ったみたいだぞ!」
振り返って皆に伝えると、流澪がウーテに支えられて苦しそうにしていた。
「ごめん、
剣術だからてっきり魔力とは縁が無いと思ってたがそんな事は無かったようだ、あの神は本当に説明不足だな。
「多分魔力切れだろう、持ってきた俺のポーションを飲むと楽になるはずだ。
今度アラクネ族に頼んで魔力増幅の装飾品を流澪に渡すよう言っておくよ。」
「魔力切れって、そんな説明されてないわよ!?」
「俺だってされてないぞ?」
「はぁ!?
拓志があの神様を殴りたいって言ってた気持ちが少しだけ理解出来たわ……。」
理解を得れたようで何よりだ、いいのか悪いのかは分からないけれど。
「それじゃカタリナが起きたら村に帰るとしよう。
だが転移魔法陣を残しっぱなしにしてしまうな、どうしようか……。」
「後で私が消しに行くから大丈夫よ。」
「それじゃあ頼む。」
ウーテが消してくれるとの事なのでお願いする、一応魔族領王家の秘術だからな……もし流れてきた他の種族に見られて悪用されたら大問題だし。
とりあえず一安心したので俺達も休むことに、片付けは帰る時でいいだろう。
「うぅ……ん……ん?
あれ、体が軽い!?」
「ん……カタリナ、目が覚めたか?」
カタリナの声で目が覚める、どうやら休んでいるうちに寝てしまっていたらしい。
「村長、何をしたの?
十日熱がこんなに早く治るなんて……というか十日熱前より体の調子がいいんだけど?」
「流澪のおかげだ、後でお礼を言っておけよ。
それと今回のような事があっても一人で何とかしようとするな、もっと周りを頼ってくれ。」
元気になったようなので今回カタリナが取った行動を少し諌める、何かある度にこうなっては助け合いが成立しなくなるからな。
「ごめんなさい……十日熱だと分かったから村に感染を広げちゃダメだって頭がいっぱいになって。
それと悪阻の症状もあったし、迷惑しかかけないと思ったのよ。」
「気持ちは分かる、だがそれを助けてこその家族だし村だろう?
カタリナは今まで誰かが体調不良で動けなくなって助けるのは嫌だったのか?」
「そんな事ないわ、むしろ率先して助けたいと思うもの。」
「皆それと同じだ、色んな人に心配かけたんだからきちんと謝っておくんだぞ。」
カタリナはしょぼくれていたが納得はした様子だったので良しとしよう、今度からはきちんと頼ってくれるはずだ。
「んはっ、寝ちゃってた……カタリナさん!
元気そうだ、良かったあぁぁ……。」
流澪は元気なカタリナを見て抱き着いて号泣する、流澪の声で起きたウーテとミハエルも一緒に抱き着いて泣き出した。
「ごめんね皆……ありがとう。」
カタリナは3人を抱きしめ返して涙を流す、とにかく母子共に無事で何よりだよ。
皆落ち着いたので片付けを開始、カタリナには休んでていいと言ったが「私がしたことだし、もうすっかり元気だから!」と手伝ってくれる。
十日熱が治ったと言っても妊娠してるんだから無理しないでくれよ。
「それより流澪がどうやって十日熱を治したか聞いてないわよ。
村長と流澪が居た世界の技術なの?」
「ううん、
以前より調子がいいのは自覚症状が無い他の病気も一緒に切ったのかも?」
それを聞いたカタリナは深くため息をついた。
「村長の
つくづくこの村に住んでて良かったと実感するわ、流澪が居れば医者いらずじゃない。」
「体の調子が悪い場合は対応してもらえばいいが、剣術という名なのに魔力を消費するんだよ。
だから流澪の魔力量次第だ、カタリナの病気を切った時も魔力切れを起こしてふらついてたし。」
「なるほどね、それなら本当に辛い時には流澪を頼ることにするわ。」
その後村であったことを話しながら片付けを終えて村へ帰還、事の顛末を皆に伝えて事態は終結した。
明日は3つ目のダンジョンコアの使い道を話さないとな、それと一緒にメアリーが2個目をどう使うか確認を取ろう。
俺はそんな事を考えながら、村の皆に少し怒られながらも無事に帰ったのを祝福されるカタリナを見ながらお風呂に向かった。
疲れたし一安心したから、ホットワインをお風呂で決めさせてもらおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます