第363話 作物の層がどうなっているか確認と見回りをしに行った。

メアリーが作ったダンジョンの作物層には、後から来たであろうケンタウロス族・ミノタウロス族・プラインエルフ族の3種族が一丸となって収穫に取り掛かっていた。


それを仕切っているのはカタリナ、的確な指示で仕事を回している。


流石だな。


見た感じここで収穫出来る物は野菜・米・麦・果物・後はワイン用のブドウか……今のところはこんなものだろう。


俺が野菜の品種なんかを教えたらダンジョンコアはそれを生成してくれるのかな。


後で流澪に思いつくものを挙げてもらって試してみるとしよう。


出来なければ品種改良が出来る環境を少しずつ整えればいいし。


何をどうすればいいかさっぱりだけど。


「村長、こっちは今のところ不備は無いわよ。

 足りない物はドワーフ族の意見を参照にしたから無いと思う……あったらメアリーに伝えておくわね。」


「ありがとう。

 不備が無いのは良いことだが、環境はどうだ?

 ここをこうすればいいとか、これがあればもっと効率的だとか……そういう意見はどんどんあげてくれよ。」


「そうねぇ……。

 皆を見てるとかなり余裕そうなのよ、ミノタウロス族とケンタウロス族まだ荷物が重くなっても持てるし運べると思うのよね。

 そこのところ、どうかしら?」


カタリナは2種族に聞いてみると、軽快な返事が返ってくる。


「この10倍でも余裕ですよ!

 ですがこれが仕事道具なので……この規格の箱で倉庫に一括保管してるので私達のワガママで変更出来ないんですよね。」


なるほどな。


確かにそれ以上大きかったり重かったりするとドワーフ族が困ることもあるだろうし、今が一番ちょうどいい規格の箱なんだろう。


だからこそあの大きさの箱が沢山あるんだろうし……だがまだ力に余裕があるとなるとちょっともったいない気もする。


「やっぱりそうよね、ここ最近この仕事で汗一つかいてないんだもの。

 流石に陽の季節だと少しかいてるけど……それでも少しってことは体の負担は全然ってことだし。

 この箱をたくさん乗せれるものがあれば、まとめて運べるんじゃないかって思うのよね。」


「なるほど、確かにまとめて運べるなら効率化にも繋がるし便利だろう。

 ちょうど高さも余裕がありそうだし、俺が思ったものを試作してくるよ。」


「えっ、今ので案が出たの?」


「前の世界でカタリナの考えに基づいたものに近しい物があるんだ。

 ちょっと待っててくれ。」


そう言って俺は一度ダンジョンを後にして想像錬金術イマジンアルケミー用の資材が入った倉庫へ。


そこで俺が使ったのは鉄と木。


パレティーナと木のパレットを作ってみた。


昔の工場見学で多くの資材を入れてフォークリフトで運んでいたのを見たことがあるんだよな、覚えてて良かったよ。


肝心のフォークリフトは無いけど、あの箱の10倍の重量を持てると言ってたし取っ手を付ければパレティーナは持ち上げれるだろうな。


パレットは……生活魔術でフォークリフトのような事が出来る魔術を作ることが出来ないかという淡い期待を込めて作った。


出来なければ資材に戻せばいいし。


さて、これをダンジョンに持っていくとする……か……あれ?


パレティーナとパレットってこんな重かったの?


荷物を載せてなければ大したことないだろうとか思ってたけど、滅茶苦茶重いぞこれ。


仕方ない、ドリアードの力を借りて身体能力を上げるか。


そうして持ち上げてダンジョンに向かっていたが、道中出会ったミノタウロス族に強い口調で止められてパレットとパレティーナを奪われてしまった。


結構余裕で持ててたんだけど……嬉しそうだからいいか。




「作ってきたぞ。

 これを使ってみたらどうだ?」


「なるほど、箱をひとまとめにする道具ね。

 この鉄籠の用途は分かるけど、この木の板を寄せ集めたものは?」


パレティーナも本来の用途とは違うんだけど、取っ手を付けた時点で間違ってるから別に気にしない。


「これは軽量化を図ったパレティーナのようなものだ。

 これに荷物を載せて運ぶような生活魔術を作れないかと思って作ったんだけど、無理かな?」


「なるほど、物質移動系の生活魔術を使えばそれも可能ね。

 すぐには出来ないけど、2日もあれば出来ると思う……私はそのあたり得意じゃないから得意なプラインエルフ族に頼むことになるけど。

 それに私もそれに付き合いたいから帰れないかも、いいかしら?」


「それはいいけど、いくら不死でも無理はするんじゃないぞ?」


「分かってるわよ。」


カタリナはノリノリで生活魔術の開発を承諾してくれた。


可能ならもっと早くやったほうが良かったかもしれない……そうすればミノタウロス族とケンタウロス族の人員配置がもっと楽になったかもしれないし。


そんな事を考えていると、背後から視線を感じたので振り返るとミノタウロス族とケンタウロス族が涙目でこっちを見ながら悲痛の叫びをあげた。


「村長とカタリナ様は我々の仕事を奪うのですか……!」


そんなつもりは無いから、利便性と効率を求めてるだけだから。


あまりに懇願されたので、急遽パレットを運ぶ物質移動系の生活魔術の開発は中止。


まさか荷物の運搬にそこまで懸けているとは思わなかったよ……悪いことをした。


ちなみにパレティーナの使い心地は上々らしい、一応箱が8箱入るようにしてるからこれだけで効率は大幅に良くなるはずだ。


そう思ってると12箱入れて無理矢理持ち上げるミノタウロス族を見て思わず制止、10倍以上になってるし籠から箱がはみ出てるし……危ないぞ。


だが、制止したミノタウロス族から思わぬ答えが返ってきてびっくりしてしまった。


「この10倍でも行けそうです。」


これ以上積み上げると前が見えなくなるからやめておきなさい。

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