第118話 マーメイド族への謝罪と歓迎を兼ねた宴会をした。

今日はマーメイド族に迷惑をかけたこと、それに伴って村に移住することになったという理由で久々の宴会。


本当はもう少し頻繁にしたいんだが、ここ最近色んなことがあったからあまり開催できずにいたな。


「開様、村の住民から聞いたんですがカールの生誕祭も兼ねておこうという事です。」


「そうだったのか、住民が祝ってくれるのは嬉しいことだな。」


確かにカールが産まれてからお祝い事は何もしてやれてなかったな、まぁ今何かしても理解も出来ないだろうから大人のエゴになるが……それでも何もしてやらないよりはいいだろう。


そういう事なら何か準備しておけば良かったな、親なのに気が利かなかった。


ドワーフ族にカレーとキノコ料理を注文しているし、量も充分用意出来ると言っていたのでかなり楽しみ。


この後には神殿建設イベントが控えているが、当初の内容よりかなり俺への負担が無い企画に仕上がっていたのでそんなに心配もしていない。


懸念事項があるとすれば、大勢の前で話すという事くらいか……慣れてないけど大丈夫かな。


結構な数のドラゴン族に圧倒されて、俺の話はあまり頭に入らないかもしれないけど。


メアリーと話しながらゆったりとした時間を過ごしていると、気づけばもう夕方になっていた。


「そろそろ宴会が始まるな、広場に移動しようか。」


「わかりました、久々にいっぱいお酒が飲めますよー!」


「喜んでるところ悪いが、授乳期間ってお酒を控えないと母乳に影響が出たはずなんだが……大丈夫なのか?」


「最近母乳の出が少し悪いので、ちょっと早いですが離乳食に挑戦するんですよ。

 ドワーフ族にお願いして少し準備してもらっているので、今日はカールに頑張って食べてもらいます!」


もうカールが産まれてそんな期間が経ったんだっけ、つい最近産まれたと思ったのに……親になると時間が経つのが早く感じるものなのだろうか。


カールをベビーカーに乗せて2人で歩きながら広場へ向かっていると、既に何人か飲みだしている……見たところまだ料理も出てないし。


空きっ腹にお酒を入れるとすぐ酔いが回ってしまうから気を付けろよ?


「そうだ、マーメイド族をここに連れてこないと。

 陸上移動は得意じゃないらしいし、ちょっとケンタウロス族に声をかけてくるよ。」


「分かりました、私は広場で待っていますね。」


少しメアリーと離れ、ケンタウロス族に声をかけてマーメイド族を馬車に乗せて移動させていく。


アストリッドはもちろん、他のマーメイド族も「いいんですか……?」とかなりオドオドしているが村からの謝罪も兼ねているから気にしないでくれ。


仕事の件で不安にさせているかもしれないが、マーメイド族が最適任な仕事を思いついている――そのためにも魔族領と人間領に仕事を受け入れてもらえるか話にいかないといけないが。


両者が損をすることは恐らくないので充分勝算はある、神殿建設イベントも終わって落ち着いたら話をしにいくとしよう。


マーメイド族を全員移動させ終えた頃には、住民全員が広場に集まっていた。


「お腹空いたー。」「お酒飲みたーい。」と欲望の声がそこかしこから聞こえてくる、今日は久しぶりに全体に話すことがあるから少し我慢してくれ。


ドワーフ族も料理を運び終えたみたいだ、そろそろ始めるか。


「皆知っているとは思うが、今日からマーメイド族が村に移住することになった。

 今は仕事が無いが適任の仕事は考えている、ウーテの治療で迷惑をかけたことや慣れない土地で不安もかなり見えている、皆仲良くして早く村に慣れてもらうよう努めてくれ。

 じゃあマーメイド族から軽く挨拶をしてもらおうか、族長頼む。」


「マーメイド族族長のハラルトと言います……この度は移住の受け入れをしていただきマーメイド族一同感謝しております。

 アストリッドから話を聞いた時は世迷言かと思いましたが、まさか聞かされた当日にこのようなことになって驚いておりますが……歓迎していただいてありがたい限り。

 慣れないことが多い上、陸上での活動が苦手な種族なので迷惑は多くかけると思いますがこれからよろしくお願いします。」


「ありがとうハラルト。

 改めて皆仲良くしてやってくれ、それじゃ皆お待ちかねの宴会の始まりだ!

 心行くまで飲み食いして楽しんでくれ!」


「「「「「うぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


本当に待ちかねていたんだな、盛り上がりが過去最大だ……久しぶりなのもあるのだろうが。


それと今回は村に訪れていた魔族も参加してもらっている、普段より高めのお金をいただいてるが、食べ放題飲み放題だし皆納得して払っていたから大丈夫だろう。


俺はマーメイド族のところへ話に行くことに、まだ緊張は解けてないだろうし少しでも打ち解けれるようにしないとな。


それに仕事の話もある、出来るはずだが一応確認をしておくべきだろう。


「ハラルト、いきなり挨拶を振ったのにきちんとやってくれてありがとう。

 こんな場で悪いが、マーメイド族にやってもらう仕事について話しをしても大丈夫か?」


「いえいえ、こちらこそ移住を受け入れてもらってありがとうございます。

 仕事の話はもちろん大丈夫です、ただで住まわせてもらおうとは思っておりませんので。」


「魔族領と人間領から出ている漁船の先導と漁業の手伝いをしてやってほしい。

 魚がたくさんいる場所、海中の情報なんかを漁師に伝えてほしいんだが、可能だろうか?」


これが俺の考えていたマーメイド族の最初の仕事、そんなに多い数の漁船は出てないだろうが間違いなく適任なはずだ。


「もちろん大丈夫です、ただ生態系のバランスを崩さない程度にしたいのでそのあたりの調査を行う者を独自に送っても大丈夫でしょうか?

 我々も漁猟で食べて来た身、そのあたりを考慮していたので……。」


「それはもちろんだ、長い目で見ると大事なことだからな。

 出来るようでよかったよ、近いうちに魔族領と人間領に話して仕事が出来る環境を作っておく、それまでは村に馴染む努力と他に何か出来るか探すことに専念してくれていいから。」


「ありがとうございます。」


とりあえずこれでマーメイド族は大丈夫だろう、後は俺の交渉次第だな……頑張ろう。


ハラルトとの会話も終わったので戻ろうとすると、アストリッドに止められた。


「そんちょぉー、のんでまふかー?」


出来上がりすぎだろ、まだ宴会が始まって10分ちょっとだぞ?


「飲んでるよ、それよりアストリッド……もしかしなくても酒に弱いだろ?

 ほどほどにしておくんだぞ?」


「これはじゅーすです、おいしいですよー。」


ジュースじゃない、お酒だ。


完全に出来上がったアストリッドを宥めていると、他のマーメイド族が「すみませんすみません、この子お酒飲んだことなくて……!」と、ものすごい勢いで謝られた。


飲んだことないなら仕方ない、早い段階でアルコール許容量を知れてよかったじゃないか。


とりあえずアストリッドはほとんど飲めない、もしかしたら飲めるようになるかもしれないが今はそんなに飲ませないようにな。


マーメイド族がアストリッドを押さえてる間に俺の席へ戻ると、メアリーも少し顔が赤くなってた。


久々だから少し弱くなってるのかな?


そうだ、ウーテのご両親に挨拶にいかないと……しかし肝心のウーテの姿が見当たらないんだよな。


「あら村長、誰か探してるの?」


「ん、カタリナか。

 ウーテが妊娠したしご両親に挨拶をしたいんだが……ウーテが見当たらなくてな。

 出来れば一緒に行きたかったんだが。」


「ウーテなら少し不安だからって村の外へ行ってたわ、グレーテさんに状態異常回復魔術は掛けてもらってるし、少ししたら帰ってくると思うわよ。」


そうだったのか、まぁ完全に悪阻が無くなるわけではないと言ってたから仕方ないな。


それなら帰ってきてからにしようか、俺だけで行くよりはいいだろうし。


「それより村長……私今夜が妊娠しやすい状態なの。

 是非相手をしてほしいから、あまり飲みすぎて潰れないようにね?」


「分かった、ほどほどにしておくよ。

 カタリナもあまり飲みすぎるんじゃないぞ?」


「もちろん、前はダメだったけどチャンスは逃したくないわ。」


カタリナの目がちょっとぎらついてる、そんな必死になるとストレスになって逆効果だと思うが……1人だけ子どもが出来てないという焦りもあるのだろう。


心配しなくてもそれで優劣をつける2人じゃないし、俺だってそれでカタリナの評価を変えるつもりはない。


その後俺は他の種族とも色々話して飲んで、楽しく有意義な宴会をすることが出来た。




片付けは酒が飲めない人や元気な人がやってくれるらしい、俺も手伝おうとしたがゆっくりしてくれと言われたので甘えることにする。


メアリーは久々のお酒で大分出来上がり、早々に寝てしまった……カールはあの後戻ってきたウーテが見てくれるらしい。


無理してないかと聞いたが、生まれてくる子のために練習させてもらうということらしい、それならよろしく頼む。


風呂に入ってカタリナの待つベッドに行き、準備万端のカタリナと肌を重ねてその日を終えた。


赤ちゃん、出来るといいな。

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