第276話 遊戯施設を作るため施設区に行くと、シュテフィが手伝ってくれることになった。

皆で麻雀をして遊んだ次の日の朝。


妻達は早朝に起きてデパートに参加しに行った、俺も起こされたが遊技場を作ると宣言したので今回は見送ることに。


残念だが仕方ない、今回が最後というわけではないし気にする事は無いか。


だが早めに参加しておいたほうがいいな、元々どういった感じで運営されてるか客目線で見に行くのが目的だったし。


アンケートでは概ね好評だが、現場は実際見てみないと分からないものだからな。


だが今は遊技場だ、土地の選別から始めなければならないのでいつもより時間がかかるぞ。


雀卓も10台くらい準備すると言ってしまったし、それにダーツボードやトランプをする場所もと考えると結構な広さが必要だ。


最悪施設区側の土地を新しく広げることも視野に入れておくか、だがまずは準備して見に行くところからしなければ。


寝間着姿の俺は着替えて朝の運動をし、食堂で朝ご飯を食べて施設区に足を運んだ。




「いい土地があるにはあるが……敷地面積が少し足りないなぁ。」


デパートの近くで休憩所も近い、それに宿泊施設も近いと娯楽施設にしては一等地のような土地が空いている。


一番適した施設を建てたいと空けていたのを思い出した、今ここを使うべきなんだが……どうしたものか。


色々悩んで周囲を見渡していたらデパートが目に入る、それと同時に解決策を思いついた。


デパートと同じように高層施設にすればいいんだ、1階毎に遊べるものをまとめて自分が行きたいところへ行けばいい。


入り口に受付を作り現在の利用状況を表示したボードも作れば、利用者も分かりやすいだろう。


我ながら名案だと思ったが、これ前の世界のネットカフェと何ら変わりない運営の仕方だよな。


やっぱり俺より賢い人なんてごまんと存在する、ちょっといい気になった自分が恥ずかしい。


だが前の世界であれだけ普及した施設が使っている手法だ、電子的な管理は出来ないにしても充分運営は可能だろう。


少し歩けば食堂もあるし飲食の問題は無いかな、中で飲食が出来ればベストだが。


そういえばドワーフ族の手が空いている気がしたな、魔族領と人間領への出店の話も兼ねて少し話をしに行って見るか。


もし娯楽施設でも軽食や飲み物を提供出来れば物凄く便利だし、建物を作るのはドワーフ族と相談してからでもいいだろう。


「村長、何か施設を作るの?」


俺を呼ぶ声が聞こえたので振り返ると、そこにはシュテフィが居た。


「あぁ、昨日俺の家でしていたゲームが盛り上がってな。

 皆も遊びたいと言うので遊戯施設をここに作ろうと思って。」


「それはいい事だわ、この村には娯楽が足りないって思ってたから。

 私に手伝えることがあれば言って、今日は休みで1日暇をしてるのよ。」


「デパートや鍛錬所には行かないのか?」


シュテフィは女性だしデパートは好きそうなんだけど、それに時間があれば鍛錬所に行ってローガーと戦ってるイメージがあるし。


「今はヒルデガルドさんに両手短剣を習ってるのよ、徒手格闘は好きだけど村の戦力になることを考えると武器を扱えた方がいいと思って。

 でもヒルデガルドさん、今はデパートの倉庫警備でニコニコしてるから今日は行かなくていいかなってなったのよね。

 それに私、買い物はそこまで好きじゃないのよ。」


女性でも買い物が嫌いな人って居るんだな、完全に俺の偏見だけど皆好きなものだと思ってたよ。


だが精霊を使役してローガーに徒手格闘で互角に近い戦いが出来るうえ、圧倒的な魔力量でとんでもない攻撃魔術を使えるシュテフィが更に強くなろうとしているのか。


流石古代に封印がやっとだった存在なだけある、シュテフィも相当な実力者だな。


だがシュテフィに手伝えることか……考えたが今のところは無さそうだと思う。


そう返事をしようと思ったが、もしドワーフ族に料理が出来ないと断られたらシュテフィの能力で作り置きを大量に保持しておけば遊戯施設でも料理や飲み物を提供出来るんじゃないだろうか。


むしろそうしたほうが、注文の度に作らなくていいので有難いかもしれない。


「シュテフィの時間を止めれる簡易倉庫って、鍵さえあれば誰でも開けれるのか?」


「ええ、大丈夫よ?

 ちなみにそれくらいなら何個でも作れるから、でも生ものを扱う遊戯施設って気になるわね。」


違う、遊びに使うんじゃない。


だが何個でも作れると言ったな、それなら倉庫全体でなく取り扱う商品を纏めて箱か何かに保管した後、シュテフィに時間を止めてもらえば鮮度や温かさを失う頻度も最低限に抑えれる。


これは是非採用したい。


「遊戯施設にシュテフィの能力が必要になった。

 今日一日付き合ってくれるか?」


「あら、それは嬉しいわ。

 私も村長と話がしたいことがあったしちょうどいいわ、是非付き合わせてもらうわね。」


「ありがとう、よろしく頼むよ。

 まずはケンタウロス族とミノタウロス族に資材をここに運んでもらおう。

 いや、先に地下室の穴を空けておくか……だがもし誰かが落ちたら大変だな。」


「それくらい見ておくわよ、穴を空けて呼んでらっしゃいな。」


「そうか、すまない。」


俺は建設予定地に地下室分の穴を想像錬金術イマジンアルケミーで空ける、土はいらないから処分した。


だが給水施設の水道管が少し露出してしまったな、想像錬金術イマジンアルケミーで干渉しない場所まで迂回させるか。


この程度の迂回は問題無いだろう、問題があればもう一度引き直せばいいだけだし。


俺はシュテフィに見張りを頼んで、ミノタウロス族とケンタウロス族に声をかけて倉庫へ。


建てる建物の規模を伝えると2人がどんどん資材を荷車に積み込んでいく、本当にどれくらい資材を使うか分かってきているんだな。


「村長、二往復してもいいですか?」


「それくらい構わないよ、それに無理のない程度の量を運んでくれ。

 無理をして体を痛めると大変だからな。」


まさかそんなことを聞かれると思わなかった。


今回は大きめの建物を作るから資材が多くなるのは当然だし、前の世界のトラック並の量を運んでいるので怒ることもない。


むしろその荷車の強度にびっくりしている、鉄で作っているとはいえそこまで耐えるとは思ってなかった。




「相当な資材量ね、この村で困ることってあるのかしら。」


ミノタウロス族とケンタウロス族が運んできた資材量を見て、シュテフィが少し啞然としている。


「これだけ資材があるのも、シュテフィを含めた皆が仕事をしてくれてるからだよ。

 この村で困ることは人材が欠ける事だ、今は上手く嚙み合っているが技術の継承が出来なければ衰退していくだろう。

 飢えに関しては俺とダンジョンがある限り大丈夫だが、それ以外の事はそこまで安定しているわけじゃない。

 代替技術も確立出来てないし。」


「ふぅん、結構考えてるのねぇ。」


「一応村長だからな。

 前の世界の知恵と想像錬金術イマジンアルケミーくらいしか出来ないけど。」


「それが唯一無二だからここに皆集まってるんでしょうけどね。」


それは否めないな、本当に有難い。


さて、世間話はこれくらいにして遊戯施設を作る……前に、せっかく俺以外の人がここに3人も居るんだから意見を聞いておくとしよう。


俺の独断で作るともっといい案を見逃すことになるかもしれないからな。


「――と言った施設を作るんだが、何かこうしたほうがいいっていう案はあるか?」


それを聞いた3人は首をかしげてうんうん唸りながら考えてくれている、何かいい意見が出るといいんだけど。

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