第237話 ウーテと温泉作成に取り掛かった。

砂時計を作れたのでとりあえず書斎に置いておく、使わない間もインテリアとして飾れるデザインに出来上がってくれたので普段は置物にしておこう。


俺は流澪に言われた通りウーテと温泉を作りに行くことにする、明るいうちにしておかないとお風呂を利用する住民が来てしまうからな。


とりあえずウーテを探さないといけないが……どこに行ったんだろう?


探すついでに見回りでもするか、多分村からは出てないはずだし。




今居るのはドラゴン族の居住区、探している間に会った住民に聞くとここにウーテが向かっていたのが見えたらしい。


普段あまり行かないから珍しいなと思ったが、そもそもウーテはドラゴン族なので用事があっても全然おかしくはないよな。


だが誰に用事があったのか、とりあえずぐるりと一周回るとするか。


そう思い歩いていると、オスカーの家から「えぇぇぇっ!?」とウーテの物凄い声が聞こえた、何かに驚いたようだが何かあったのか!?


俺は慌ててオスカーの家に向かって走り、玄関をノックして叫ぶ。


「オスカー、ウーテ!

 何かあったのか、大丈夫か!?」


「え、村長……どうしてここに!?

 でも入っちゃダメよ!」


ウーテ本人から入るなと言われたが、さっきの声は間違いなく何かあったはず……一体どうしたんだろうか。


「あ、もう入って大丈夫よ!」


俺が不安になりながら悩んでいると、さっきとは打って変わって楽しそうなトーンで入っていいと言われる。


一体何なんだよ……。


とりあえず心配なのでオスカーの家に入る、するとオスカー・シモーネ・ウーテの3人でお茶を飲んでいる最中だった。


「さっきのウーテの叫び声は何だったんだ?

 明らかに尋常じゃなかったけど。」


「ごめんなさい、私がお茶をこぼしてしまって……。

 ちょっと熱めのお茶だったからびっくりしたのよね?」


俺の質問にシモーネが答える、それは驚くし仕方ないか。


「まぁ、何も無いならいいんだけど。

 それよりウーテ、今日この後暇か?」


「おじ様おば様ともう少し話させてほしいけど、そこまで時間はかからないわ。

 もう2・30分もすれば空くと思うけど、そうよね?」


「うむ、そのくらいで問題なかろう。」


「なら空いたらお風呂場まで来てくれ、ちょっと改造したくってな。

 今よりもっと気持ち良くなる方法を思いついたんだ。」


俺の言葉を聞いてウーテよりオスカーとシモーネが食いついてきた、そんな目を爛々と光らせて俺に迫って来なくても。


「あれより気持ちよいとはまことか!?」


「今でも水浴びと違う天国のようなものなのに……まだ上があるなんて!」


ウーテは食いつきが遅れてしまったのか、驚いてはいるがあうあうと困った様子。


そんな困らなくても素直に驚いていいんだぞ?


「ワシにも何か出来ることはないか?」とオスカーが俺に聞いてきたが、シモーネが首を振って止める。


普段ならそんな事は無いんだが……今朝のオスカーといいウーテの叫び声といい、やっぱり様子がおかしい。


いずれ話すと言ってたしオスカーは俺に話してないことがあるのは間違いないが、シモーネが止めるという事はシモーネにも何か関係あるのか?


だがオスカーを信じると決めたしな、メアリー曰く明日の宴会で話してくれるらしいし、それまで待つとしよう。


「……とりあえず、私だけ行くってことでいいのよね?」


「あぁ、大丈夫だぞ。」


ウーテが2人の勢いに気圧されていたがようやく口を開いて返事をした、よろしく頼むぞ。


3人で話すと言ってたので、俺は伝えることを伝えたし30分くらいしたら風呂場に着くように見回りをすることにした。


特に何もなかったけどな。




「お待たせ村長。」


「大丈夫だよ、俺も今着いたところだから。」


風呂場前で待っているとウーテが到着したので、やることの説明。


「内容としては俺が穴を掘り、地下深くに広めの空間を作った後ウーテの能力でそこにお湯を湧かせる。

実質無限に湧き上がってくるのでお湯は間違いなく地上まで湧き出るからな、湧き出た温泉をプラインエルフ族の生活魔術で汚れだけを取り除きお風呂に使用するんだ。」


「そんなひと手間どころじゃない工程を組み込む意味なんてあるの?

 ただ地下を経由させたってだけのお湯じゃない。」


「何も知らなければそうだろうが、俺が前に居た世界ではそういった地下から湧き出たお湯を温泉と呼んでいたんだ。

 ただのお湯とは違い、岩や土の成分が混ざってより体が温まるし肌や健康にもいいし疲れも取れやすいんだよ。」


俺が温泉の効能を説明する、村の地下でどんな成分がお湯に含有されるかは分からないが良く効く効能を言っておく。


これで効いてくれたらいいけどな、地下を掘る時に周りの土をそういう成分を含んだ土に再錬成出来ないだろうか。


試してみよう。


「肌や健康にいいのはすごいわね、地下を経由するだけでそんな効果が付随されるなんて思ってなかったわ!

 でも、穴掘りとお湯の発生は2人で出来るけど……生活魔術は誰に使ってもらうの?」


ウーテにツッコまれてハッとする、分かっていた事なのに2人で出来ると思い込んでしまっていた……。


「忘れてたのね……いいわ、私がカタリナさんを呼んでくるわよ。

 ちょうど居場所も知ってるし。」


「そうなのか、よろしく頼むよ。

 俺は作業中に誰かが風呂場を利用しないよう看板を作っておくから。」


ウーテが「分かったわ。」と言ってドラゴンの姿になり施設区の方向へ飛んでいく、研究施設に行ってるのだろうな。


俺は看板を作るために倉庫へ、そういえばダメ元でオスカーに何かあったのか聞けばよかった。


俺はそんなことを思いながら看板を作製。


『調整中の為一時使用中止。

 成功すればより気持ち良くなるので我慢してくれ。』


文面はこんな感じでいいか……あ、誰が作業してるか分からないから俺とウーテ、それにカタリナの名前も書いておこう。




しばらくするとウーテとカタリナが風呂場の前にやってきた。


「呼んできたわよー。」


「何のことか分からないけど、ウーテの説明で流澪ちゃんに行ってきていいって言われたから来たわ。

 研究そっちのけでいいからって言ってたし、きっと面白い事なのよね?」


面白いと言うより嬉しいことだな、それよりカタリナが流澪をちゃん付けで読んでることにびっくりだが。


……プラインエルフ族は見た目より年齢を重ねてるし、娘のようなものなのだろうか。


娘と同じ男を夫に持つ心境を想像したがよくわからない、だが本人が納得しているならそれでいいか。


よし、それじゃあ温泉作成を始めるとしよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る