第236話 流澪と夫婦の契りを交わしたことが村中に広まっていた。
「おはようございます、昨夜はお楽しみでしたね。」
メアリー・ウーテ・カタリナの3人から同時にツッコまれる、悪い顔でニヤけてるなぁ……。
一緒に起きて来た流澪はそれを聞いて顔が真っ赤になる、ここまでからかわれる流澪は村に来て初めてかもしれない。
「どうでしたか流澪さん、村長の弱いとこ合ってたでしょう?」
「ぅん……そうなんだけどちょっとオープン過ぎるから勘弁して……。」
流澪が情事の会話を朝っぱらから多人数ですることを拒む、まぁ年頃の女の子だしな。
というより、えらく俺の弱いところを的確に狙ってくると思ったらメアリーが教えていたのか……まったくいつの間に。
分かっていたが、妻達が流澪を嫌っているとか俺の妻になるのが嫌だとかいう事は無いみたいだな。
流澪がどう思うかが心配だったんだが……恥ずかしがってはいるが嫌がってないあたり受け入れれるのだろう。
「とりあえずご飯も食べずに話すのもなんだし、着替えて食堂に行こう。
積もる話は向こうですればいいし。」
俺がご飯を食べに行こうと促すと、皆返事をして各々準備を始める。
流澪は何か気になったのか着替えながら3人の準備をじーっと見ている……そんな気になるところがあるのだろうか。
俺は朝の運動をするため一度外に出る、運動をして着替えても妻達はまだ準備をしていることがほとんどだからな。
軽く体操をしていると流澪が後ろに立っていて少しびっくりする。
「どうしたんだ?」
「メアリーさん達、まさかとは思ったけど本当にすっぴんなのね……私より年上なのに私より肌が綺麗だし、私が化粧した時より顔が整ってるから自信無くすなぁって。」
「この村では化粧している人のほうが珍しいからな、たまにしている人もいるみたいだけど。
まぁメアリーもウーテもカタリナも顔が整っているとは思うが、流澪も充分だと思うけどな。」
若いのもあるだろうけど、実際流澪は化粧をしなくても充分整った顔をしている。
俺はあまり化粧の濃い人は好きじゃないから助かるけど。
その後流澪はと一緒に軽く運動をして、着替えに戻って皆で食堂へ向かった。
「流澪さん、号外見ましたよ!
おめでとうございます!」
「へ、号外?」
「これですよ、おめでたい事は広まるのが早いですねー!」
内容の想像は付くが、まさか1日で号外が出回るとは思ってなかったらしくフォークを持ったままキョトンとする流澪。
流澪以外は号外が出るだろうなと思っていたので特に驚かない、もちろん俺もだ。
「優秀過ぎるのもいささか考え物ね……。
今回は私も嬉しいからいいけどさ、本人が望まない情報を急速に広めることに繋がりそう。」
「そこはラミア族を信用してるさ。
まだ印刷所が出来て日が浅いが、出していい情報かどうか悩んだ時は相談してくれるだろうし。」
「まぁ……そうね。
この村に人を困らせるような人って居ないからなぁ、それだけ幸福度が高いってことなんでしょうけど。」
そう言ってくれると嬉しい、もっと便利に幸せに暮らせる村づくりを心掛けなきゃな。
皆に祝福されながら食事をしていると、オスカーが俺を見つけて手を振っている。
俺も振り返すとこっちに近づいてきた、何か用事だろうか?
「村長水臭いぞ、流澪殿と夫婦の契りを交わして報告してくれんとは!」
「まだ俺の家に住む準備が出来てないからな。
ちゃんと住むようになったら皆に報告しようと思ったんだが、妻達が出しゃばって皆に伝えて号外が広まって……という状態だ。」
俺がそう言うと、ちょっと反省したのかしょんぼりしている3人。
嬉しいのは分かるけど、ある程度自制はしてくれよ?
「そういうことだったのか、しかしめでたいことよ。
提案があるのだが、最近何かとバタバタしていたがデパートも終わり落ち着いたし宴会でも開くのはどうだ?
カールの1歳もウーテの出産も祝えておらぬし、カタリナ殿も懐妊したうえ流澪殿と夫婦にもなった……タイミングとしては最適だと思うのだがな。」
まさかオスカーからそんな提案が出るとは思わなかったが、確かにいいかもしれないな。
ペトラとハンナには何かしてやりたかったし、そう思うと本当に稔の季節におめでたいことが重なりつつある。
流石にここまでおめでたいことがあって何もしないのは、確かにもったいないかもしれない。
「そうだな、提案ありがとう。
明日の夜宴会を開こう、今日いきなり開催しても皆慌てるだろうし……デパートが終わって仕事が再開されてすぐだからな。」
「む、今日じゃないのか……ワシとしては今日がいいのだがな。」
「何かあるのか?」
「む……何でもないぞ、忘れてくれ。
では明日の夜に宴会だな、皆に伝えておくとしよう。」
ちょっと困った感じだったが、ほんとに大丈夫なのだろうか。
「オスカーさん、何か変じゃなかった?」
カタリナが食べながら俺に話しかけてくる、やっぱりそう感じたか。
「俺もそう思う、だが話さない以上深く掘り下げるのもなんだかな。
隠し事をしてるかもしれないが、オスカーの事は信頼してるし俺に不利益になるようなことはしないと思ってるよ。」
「私の勘では何か悪巧みを考えてるわね。」
カタリナがニヤリと笑いながら変な事を言う、オスカーがそんなことをするなんて考えにくいし気の所為だろう。
「そうだ村長、倉庫からポーションをいくつかもらってよいか?」
オスカーが慌てたように俺の所へ戻ってきて、何を言うかと思ったらポーションが欲しいだと……ますますどうしたんだ。
「もちろんいいが、オスカーがポーションなんて珍しい。
誰かケガしたのか?」
「む……そんなところだ。
いずれ話す故気にしないでくれ、では後でポーションはもらっておくぞ。」
そのままイソイソと自分の食事へ戻るオスカー、本当に変だな。
「ふふふー、何となくオスカー様の様子が何でおかしいか分かっちゃいました。」
メアリーがそう言うと俺を含めた全員がメアリーに「何で!?」と詰め寄る、ちょっと気圧されたがメアリーは「秘密です、オスカー様も明日話してくれますよ。」と濁されて終わった。
何でそんな隠し事をするんだ……そんなヤバいことでもあるのだろうか。
だが2人の様子を見る限り危険があるようにも感じないしなぁ、とりあえずオスカーの口から話されるのを待つとしようか。
その後家を改装して流澪の部屋を増設し、流澪の家の荷物を運び込む。
ケンタウロス族とミノタウロス族、それにウーテも手伝ってくれたのですぐに終わった。
資材も倉庫から出さずに流澪の家を解体ついでに資材として使ったからな、30分程度で終了。
「近所とはいえ引っ越しと解体が30分で終わるなんてあり得ないわよ……。」
流澪がびっくりしながら家を見つめている、その後は部屋を確認してもらって問題無いということで正式に引っ越しが完了。
晴れて流澪とも夫婦になった、契りは先に交わした感じになるけど……まあ順番はどうでもいいか。
「そうだ、この世界でも確実に再現出来るタイマーのようなものって何か思いつくか?」
「砂時計でいいんじゃないの?」
俺は流澪にダメ元で質問したが即答で最適解を返される、そうだよ砂時計があるじゃないか……流石流澪だ。
これでホットワインを飲みながらお風呂に入っても長風呂しすぎないぞ、早速倉庫で作るとしよう。
「その顔を見るに満足したみたいね、よかったわ。
私は部屋の片付けをしてくるから、拓志はウーテさんと温泉の件よろしくね?」
「あぁ、思いつかなかったから助かるよ。
温泉はこの後ウーテと作りに行くさ、俺だって入りたいからな。」
先に砂時計を作るけど。
倉庫にある資材ですぐだろうし……設定時間は20分くらいでいいかな。
その後は流澪に言われたとおりウーテと温泉の作成だ、アンケートの結果集計もしなければならないが花の季節までは時間があるし急いだものじゃないだろう。
それよりこれからもっと寒くなる氷の季節、温泉があれば幸せになれるからこっちが先。
俺はさくっと20分設定の砂時計を作ってウーテの下へ向かう――思ったより大きい砂時計が出来てびっくりした。
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