第192話 さっそく人間領から許可をもらった土地の開発に向かった。
今日は人間領に遠征して倉庫と駐屯地を作りに行く、俺はその準備をしているところだ。
とは言っても着替えとポーション、それに毛布しか準備するものもないけどな、資材は全部積み終わってるみたいだし。
しかしこの暑い時期に毛布なんているのだろうか、少し疑問ではある。
ポーションを鞄に詰めて集合場所に行くと全員揃っていた。
「別の土地に行くのも久々ね、最近鍛錬と狩りばっかりだから新鮮な気分!」
ミハエルが伸びをしながらつぶやく、よく考えれば村には娯楽がプールと将棋以外に無いよな。
何か考えて作ってもいいかもしれない、将棋に至ってはメアリーの独壇場で皆少し敬遠気味だし。
テーブルゲームがいいのか体を動かすものがいいのか、今度アンケートを取ってみようか。
「さて、それじゃ出発しようか。」
ドラゴン族がドラゴンの姿になり、資材が入った箱をミノタウロス族がベルトでドラゴン族に固定。
皆もドラゴン族の背に乗って出発、いつ乗っても気持ちいいんだが少し怖い。
落ちないようにしなきゃな。
しばらく飛んで洋上に出る、見渡す限りの水平線――そして寒い。
毛布が必要だと言われた理由が分かった、いくら陽の季節でも洋上の上空は冷える……俺は持ってきた毛布に包まった。
ミハエルも自前の毛布に包まっている、一方ミノタウロス族は寒さに強いのか普通に座って前を見ていた。
あ、こっちに気付いて手を振ってる。
別に呼んだり注目したりしたわけじゃないんだけど、一応手を振り返しておこう。
人間領に到着、上空から見ると柵で囲った土地はすぐにわかったので近くに着陸。
土地を警備していた人に書面と通行証を見せて土地の利用許可をもらった、そのまま帰るのかと思ったがまた警備の任務に戻る。
「今日ずっとここに居るのか?」
「交代が来るまでは私が警備を担当します、安心して作業をしてください。」
想像錬金術を見られるのはいいが、転移魔法陣を見られるのは少しまずいんだよな……ミハエルもちょっと困ってるし。
「村長、大きめの転移魔法陣を村に書いてきたからそれを隠さないと……。」
「分かってる、とりあえず転移魔法陣を隠す小屋の作成を最優先にしよう。」
俺とミハエルが小声で会話をして、倉庫と駐屯地より転移魔法陣を隠す小屋を作ることにした。
想像錬金術で大きめの小屋を作製、警備の人は……驚いてるけど話に聞いていたのか気絶はしなかった。
ミハエルが中に入り魔法陣を書いてる間に、この土地の建物をどう配置するか考える。
出入り口に駐屯地を置こうと思ったが、よく考えればここは町の外なので出入り口には簡易の詰め所を作って奥に駐屯地を作ると都合がいいかもしれない。
……町の中でもそのほうがいい気がしてきたな、村の建物配置を大幅に変更してから色々考えるようになったが無計画に建て過ぎてる気がする。
もっと周りの人も意見を出してくれればいいのに、俺が全て正しいと思われているのだろうか。
とりあえず奥に駐屯地を作る、小屋の近くになるので交代の際も便利だろうし。
資材の残りを見ると簡易詰め所くらいは作れるかな……くらいの資材しか残っていない。
転移魔法陣さえ作れれば資材の搬入は楽々だが、警備の人が居るとは思っていなかったからな。
「村長、こっちは完成したわよ。」
ミハエルが小屋から出てくる、何がとは言わないが転移魔法陣の起動が終わったのだろう。
「分かった、見に行くよ。」
返事をして小屋に入る、他の皆も一旦小屋に集合をかけた。
「この資材量だと簡易詰め所くらいしか作れない、だが警備の人が居るから安易に転移魔法陣を使って資材の搬入も出来ない状況だ。
そこで、まずはミノタウロス族が警備を請け負い今後は村で警備も管理もするからと伝えてくれ。
ダンジュウロウに報告が入っても俺達ならいいだろうと分かってくれると思う。」
「分かりました、そのように話してきましょう。」
そう言ってミノタウロス族は外に出て警備の人に近づいていく、ドラゴン族もドラゴンの姿になって一緒についていったが……どうするつもりだ?
3人で何か話している、警備の人が両手を振って慌てているが……変な事言ってないよな?
あ、戻ってきた。
「警備は私が変わり、ドラゴン族が警備の方を首都までお送りする形になりました。
これで人目も払えますし一石二鳥ですよね?」
確かにいい案だが、警備の人の顔が真っ青だぞ……絶対怖がって肯定しか出来なかっただろあれ。
それにドラゴン族の背に乗るのも相当怖いはずだ、俺はそうでもなかったが他の人達は皆畏れ多いからと拒否する人も多かったし。
……大丈夫だろうか?
「送るのは構わないがあまり怖がらせるなよー?」
ドラゴン族が俺の声を聞いてこくりと頷く、警備の人は俺を見て「既に怖いですけど!?」みたいな表情を向けてきたが頑張ってもらう事にした。
実際今は人払い出来たほうが嬉しいし。
背に乗って飛び立つと「うわぁぁぁぁ………!」と叫びながら飛んでいった、慣れると快適だから暴れなければいいけど。
さて、これで人間領の目は無くなったので好きに出来るな……まずは転移魔法陣で資材の搬入だ。
朝に村を発ったがもう夕方前、早めに終わらせて晩御飯までには皆で帰りたい。
他のミノタウロス族とドラゴン族は資材を取りに魔法陣をくぐった、俺を警備するために2人のドラゴン族は残ったけど。
「私はこのまま帰るわね、もうやることもないし。」
「分かった、ついでにそのままウーテを呼んできてくれ。
次の資材搬入でお風呂も作るから。」
「はーい、あんまり遅くならないようにね。」
手を振りながら魔法陣の中に消えていくミハエル、資材さえあればそこまで遅くならないし大丈夫だろう。
30分ほどで結構な量の資材を持ってミノタウロス族とケンタウロス族、それにウェアウルフ族とリザードマン族が次々と魔法陣から現れる。
俺はそのまま駐屯地・倉庫・簡易詰め所と建設して周りの柵を高めの石壁に差し替えた。
その後は風呂を作ってウーテにお湯を張ってもらい、排水関係のあれこれを作ってとりあえずこの土地の開発は終了。
「他に必要なものはあるか?」
「食料とお酒が欲しいですね。」
即答でそう言われると心配になる、酔ったままトラブル対応が出来るかどうか不安だけど……さすがにそのあたりの自制はしてくれると信じよう。
後日保存の効く食料とお酒、それに定期的にラミア族に生活魔術を使ってもらうよう言伝をすることで納得してもらった。
ちなみに魔族領では普通にそうしているらしい、トラブルが起きたとも聞かないので信用していいだろう。
俺もやることを終えたので村に帰る、警備はウェアウルフ族とリザードマン族が請け負ってくれるらしいので任せることに。
話を通してなかったんだが、すぐさま調整出来るあたり流石だな。
次の日。
朝食と見回りを終えて鍛錬をしていると、リザードマン族に声をかけられた。
「村長、人間領の将軍とやらが話があると例の土地を訪ねて来ているんだが。」
何も悪いことはしてないし話って何だろうな。
「分かった、しばらくしたら行くからちょっと待ってもらっててくれ。」
俺は疑問に思いながらも将軍とやらと話をする準備を進める、話を聞いたオスカーが「ワシも付き添おう。」と一緒に来てくれることになった。
「心強いがあまり威圧しないようにしてくれよ、こちらに不手際があったかもしれないんだから。」
「任せておけ。」
オスカーの存在は畏怖だからなぁ……と心で思いながら人間領へ繋がる転移魔法陣へ足を運んだ。
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