第32話 インフラの改善と、更なる生活の質の向上を求めて。
ダンジョンが村に出来てしばらく経った。
獲物の発生具合はちょうどいい感じらしい、毎日新鮮な肉が食べれて村の皆も前より笑顔になった。
ドワーフ族も移住してきて、採掘と加工が進んでいる。
鉱石はもちろん、ワイバーンとドラゴン族の素材も加工してるみたいだ。
住居は予定通り食堂近くに、デニスも出来ることが増えると喜んでいた。
他の種族と交易があるはずなので、どうするんだと尋ねたら「街道を通ってこの村に来てくれ」と立て札を立ててきたらしい。
来客も増えそうかな?
硬い鉱石の採掘に苦労してるが、加工をするドワーフ族は興奮気味に加工している。
上質な見たことない鉱石らしいからな、職人魂が騒ぐのだろう。
いい装備が出来てくれるのはいいことだ、有事の際には大いに役立つだろうし。
魔族領への遠征の時も装備は固めたいからな、もっとここでの生活を盤石なものにしよう。
そう思っていると、平原側の警備から「ドラゴン族が来たぞー!」との声がする。
空を見ると、数十体のドラゴンがこちらに向かって飛んできている。
その光景は圧巻の一言だ、襲われないという確信がなければ恐怖しかないだろうがな。
門の前に行き、ドラゴン族の到着を待つ。
待つといっても見えてるからすぐだけどな。
オスカーとシモーネが門の前に降り、人の姿になる。
他のドラゴン族も次々と降りてきて、人の姿に。
「話し合いの結果、村に移住することが決定した。
突然種族全員で押し掛けて申し訳ないが、移住を受け入れてもらえるか?」
オスカーが少々申し訳なさそうに挨拶をしてくる、そんな気をつかわなくていいぞ。
「大丈夫だ、どんな家が住みやすいかリクエストしてくれたらすぐに準備するから。
後は勝手な希望だが、ドラゴン族は有事の際に戦力として頼りにしている。
森側と平原側と、半々に居住区を構えてほしいんだが問題ないか?」
「何も問題はないぞ、受け入れ感謝する。」
そして家のリクエストを聞き、森側と平原側に居住区を作る。
見たことないドラゴンはあっけに取られていたが、いずれ慣れるだろうと特に反応はしていない。
ポーションを飲みながらサクッと家を作り終える、必要なものがあれば言ってくれとも伝えた。
「オスカー、ドラゴン族には空の哨戒を任せるよ。
脅威だと思うものは倒してくれ。」
「うむ、任された。」
ラウラの索敵魔術、入り口の警備、空の哨戒。
守りはほぼ盤石だろうが、遠距離の攻撃が少ないと感じる。
戦争をするわけじゃないからそこまで気にする必要はないだろうが、やはり守りの戦力は多ければ多いほど安心するからな。
その辺も考えなければな。
「ドラゴン族のブレスじゃダメなの?」
考え事をしてると、突然後ろからウーテが話しかけてくる。
びっくりした、というか独り言を聞いてたのか。
ちょっと恥ずかしい。
「ダメじゃないが、威力が高すぎて地形や周りに被害が出る恐れがあるだろう。
メアリーの弓のような、敵をピンポイントに倒せる遠距離攻撃はあるに越したことはない。」
「ふぅーん、色々考えてるのねー。」
当たり前だ、破壊の限りを尽くしたいわけじゃない。
「あたしも何か役立てることはないかしら?」
「特別ウーテ個人に頼むことか……そうだな。
水を操るって、飲料水やお湯を出すことは出来るのか?」
ウーテはキョトンとしてこちらをじっと見る。
「えぇ、出来るわよ?
飲料水もお湯も、私の能力で常時出しっぱなしに出来るんだから!」
待て、
「それは、ウーテが離れてても寝ててもってことか?」
「もちろんよ、能力を使用してる間だけ出てるのは常時出しっぱなしとは言わないでしょ?」
ということは水もお風呂も心配しなくてよくなった、お風呂に至っては大幅な進化だぞ!
「ウーテ、お前すごいよ!」
ウーテの両手を握りしめて叫ぶ。
「えっ!?
う、うん……ありがと……。」
急に手を握って叫んでしまったのか、びっくりさせてしまった。
ウーテの顔が真っ赤になって、汗ばんでるし目も泳いでしまってる。
「すまん、驚かせたな。
だがウーテのその能力は生活の質の向上にものすごく役立つぞ。
浴場に来てくれ!」
「うん、わかった……。」
共用浴場の改修をやらないとな、
浴場に入る、お風呂を利用するためでなく改修のため。
「誰もいないかー?」
誰か入ってたら問題なので、声をかける。
返事は無いな、
「よし、誰も居ないな。
そういえば、ドラゴン族は人の姿でも同じように疲れが取れるのか?」
「えぇ、人の姿でもドラゴンの姿でも同じように動けるわ。
だから広さとかは気にしなくていいわよ。」
ならそこまで広さを確保する必要はないな、だが人数も増えたので少し広くしよう。
お湯の逃げ道は、村の外に貯水場を作って地下を経由して流し込み、川へ放流という形を取った。
これで問題は無いかな。
そしてお世話になった湯沸かし器を一旦倉庫に移動させた。
よし、下準備は終わった。
「ウーテ、この浴槽に体が浸かって温かくて気持ちいいくらいのお湯を常時出せるようにしてくれ。」
「わかったわ、それっ。」
浴槽を指差しただけで、いい感じのお湯がみるみると湧き出てきた。
しばらく待って、貯水槽と川への排水もうまくいってるのを確認。
よし、成功だな。
「ありがとうウーテ、これでお湯の残量を心配して風呂に入らなくて済むし、掃除もお湯を使える。
人数も増えてきたから懸念事項だったんだよ。」
「役に立ったならよかったわ!」
うん、いつもの元気なウーテに戻ってよかった。
ドワーフ族が移住してきて歓迎会をやってなかったので、ドラゴン族が来たのと合わせて今日歓迎会を行うことに。
いつも通りのどんちゃん騒ぎ、酒と肉で皆大盛り上がり。
だいぶ人数が増えたなぁ、と遠くからチビチビとお酒を飲みながら思う。
「ウーテさん、水を操れると聞いたんですけど温度まで自由自在とは。
前のお風呂より手軽で快適になりましたよー!」
風呂上がりのメアリーがお酒を片手に話しかけてくる。
温度と湯量の調節をしなくてよくなったんだ、快適になって当たり前だよな。
お風呂だけじゃない、他の生活も快適な環境を目指したほうがいい。
今の環境もさほど苦ではないが、堕落しすぎない程度の快適さは必要だよな。
前の世界みたいにガスや電気と言ったインフラはないんだ、この世界にある技術でそれに近い生活を送れるようにしていこう。
「メアリー、前に行ってたプラインエルフの魔術が欲しい。
今度里まで連れて行ってくれないか?」
メアリーは少し顔がひきつりながらも、コクリと頷いた。
「開様が必要な技術があるのでしたら、行くべきですよね。
私も覚悟を決めます。」
気まずいだろうが、頼むぞ。
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