第33話 プラインエルフ族の里を訪問。

少しずつ暑い日も増えてきた、もうすぐ陽の季節らしい。


前の世界でいう夏、だが湿気は住んでいた場所より断然少ないので過ごしやすいな。


メアリーとラウラは遠出の準備をしている。


俺はもう終わったがな、何せ準備するものが着替えとポーションくらいだ。


前に言っていたプラインエルフ族の里へ訪問することが決定、そのための準備である。


「快適になるなら是非。」と他の住民からも要望があったのと、稔の季節になるとプラインエルフ族も忙しいだろうと意見があったからな。


技術が手に入るなら早いほうがいいし、じゃあ今日行こうと軽いノリで決定した。


メアリーとラウラには少し悪いが、我慢してくれ。


「準備出来ました……、気が重いですが行きましょうか。」


「私も出来たです、何言われるんですかね……。」


2人とも本当に気乗りしないんだろうな、まぁ何も言わずに飛び出してるから当然か。


俺はウーテ、メアリーはシモーネ、ラウラはクルトに乗り出発。


当初はウーテの枠がオスカーだったのだが、ウーテが「プラインエルフ族の里も見てみたい!」と言ったので急遽交代。


水回りはウーテの能力で改修・動作確認が済んであるので問題はない。


2人には悪いが、出発しようか。




メアリーとラウラに道案内をしてもらい、プラインエルフ族の里の近くへ到着。


向こうからドラゴン族の姿は確認出来てるかもしれないが、そのまま里に下りると混乱させてしまう恐れがあるので、少し離れた場所で着陸。


ここからは歩いていこう。


「はぁぁー……何も変わってないだけに気が重いなぁ……。」


メアリーはものすごく嫌そうな顔をする。


村のため、生存報告も兼ねてると思って頑張ってくれ。


呑気に雑談をしながら歩いていると、ラウラが立ち止まった。


「ラウラ、どうしたんだ?」


「索敵魔術に魔物の反応があるです、里に向かってるです!」


なんだと、それはまずいぞ!


「ウーテ、シモーネ、クルト!

 この際混乱はしてしまうが里を助ければ悪い方向にはいかない、ドラゴンの姿になって俺たちを乗せ魔物に向かってくれ!」


「「「わかった!」」」


「あっちの方角です!」


ラウラの指示する方向に向かい、全速力で向かう。


里の近くで魔物に追いついた、オーガだ。


プラインエルフ族の警備だろうか、食い止めようと数人が里から出てきている。


「私は数年前に里を出たプラインエルフ族のメアリー、ドラゴン族と私たちでオーガは絶対に倒します!

 あなたたちは下がっておばあ様に安全だと伝えてきて!」


警備を見たメアリーはすぐにそう叫び、オーガと対峙して弓を構える。


構えた時にはドラゴン3人がブレスで倒してたけど。


「……あれ?終わったんですか?」


3人とも人の姿に戻り「オーガくらいなら……。」と小さくつぶやく。


「メアリー姉、ドラゴン族はオーガを脅威と見てないです。

 感覚的には害虫くらいだと思うですよ。」


「ウッソでしょ!?

 でもまぁ戦闘力の差を見ればそうなのかも……。」


警備の人たちはついていけず茫然としている。


「俺は向こうに村を構えた開 拓志という。

 ここに居るプラインエルフ族のメアリーとラウラ、ドラゴン族は村の住民だ。

 プラインエルフ族が持つ魔術に興味があって里を訪れた、長と話がしたいんだが大丈夫か?」


警備の人は現状の把握が出来てないのだろうか「はぁ……。」と気の抜けた返事しか出来ていない。


「とにかく、メアリーとラウラが顔を出しに来たっておばあ様に伝えてきてもらえる?」


そうメアリーが伝えると「わ、わかった。」と警備が自分たちに出来ることを言われ、すぐ行動に移した。


「見ない顔だったわねー、私のことも知らないし子どもが成長したのかしら?」


しばらくすると、メアリーがおばあ様だと言っていたと思われる人物が籠に乗せられてこちらまで来た。


2人ともすごい嫌そうな顔をしてるから間違いないだろう。


「メアリーにラウラ、よく無事でしたね。

 里を飛び出していったのに、どうして戻ってきたのです?

 もう会わないものだと思っていましたよ。」


「お久しぶりですおばあ様、勝手に飛び出した件については謝るわ。

 でも用事があるのは私たちじゃなくて開様、今私たちが住んでる村の村長よ。」


メアリーが簡単な謝罪と俺の紹介をする。


「今名前を紹介してもらった開 拓志だ。

 俺が村に欲しい技術をプラインエルフ族が使えると聞いて里を尋ねさせてもらった。

 村にはドラゴン族・ドワーフ族・ウェアウルフ族・ケンタウロス族が住んでいるんだが、プラインエルフ族の魔術が欲しくて移住を勧めに来たんだ。」


俺も挨拶と自己紹介をする。


「プラインエルフ族の長、ザスキアです。

 先ほどはオーガの討伐していただきありがとうございました。

 開さん、と言いましたか……他種族が長い間一緒に過ごせるはずもありません、一時的な気の迷い……いずれ種族間の争いで身を亡ぼしますよ。

 それに我らプラインエルフ族は神の樹があるこの場を離れるわけにはいきません、そこの2人は勝手に飛び出しただけですからね。」


食料は潤沢と言っていいし、氷の季節も越えれるから何も問題はないが……こればっかりは見てもらわないと証明出来ないな。


だが、神の樹ってなんだ?


「里の中心にある大きな樹です、あれを神が育てた樹だと信仰してるのがプラインエルフ族ですよ。」


メアリーが説明してくれる。


「種族間の争いは今後も起こりえません。

 ドラゴン族の始祖リムドブルムのオスカーの妻である私、シモーネが保証いたしますわ。」


シモーネが助け舟を出してくれる、最大戦力を持ったドラゴンのお墨付きは大きい。


「これは、ドラゴン族の長の妻でありましたか。

 何故種族間の争いが起きないか説明してくださいますか、氷の季節の厳しさはドラゴン族も重々承知されておると思っておりましたが。」


「村長の力、としか私の口からは説明出来ませんわ。

 見せたほうが早いのではなくて?」


確かに、それもそうか。


「俺は1つ前の稔の季節に、神によって別の世界からこの世界へ転移させられた。

 その時神にもらったスキルに想像錬金術イマジンアルケミーというものがあってな、好きなものを材料があれば一瞬で作れるんだ。

 作物も種と畝があれば問題なく、即時収穫まで育てられる。

 証明するために実際に見せたい、何でもいいから種と肥料を持ってきてくれないか?」


そう説明すると、ザスキアは警備に指示して種と肥料を取りに行かせる。


「平原と森の近くに何か集落が出来ていたのは物見から聞いていましたが……。

 神から賜った力……この目で見ないとなんとも言えませんね。」


「おばあ様は驚いて腰を抜かすと思うわ。」


メアリーがザスキアをからかってる、会うまですごい嫌な顔をしていたのを伝えたらどうなるだろうか。


「持ってきました、種芋と肥料です。」


「ありがとう、これを植えてすぐに成長させたら信用してくれるか?」


「信用はしますが、プラインエルフ族はこの地を離れれませんよ?」


「神の樹がそこにあるからだったな?」


「えぇ、そうです。」とザスキアが返事をした。


俺は肥料を撒いて種芋を植え、想像錬金術イマジンアルケミーで成長させる。


「本当に育った……、神から賜った力はものすごいですね……。」


ザスキアが成長に驚いていると、俺は育てた芋を植えた場所とは違う場所に移動させた。


「俺が錬成したものは任意の場所に移動させれる、この力で神の樹も村に移動させるから、移住してくれないか?

 どうしても生活魔術が欲しいんだ。」


説明していると、メアリーから肩を叩かれる。


どうした?


「おばあ様も他のプラインエルフも気絶してますよ?」


そういうことは早く言ってくれ、急いで家に運ぶぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る