第27話 ダンジョン攻略のメンバーが揃った。

ラウラとクルトがドラゴン族の里に行ってから丸1日が過ぎた。


何も無ければ今日帰ってくると思うがな。


昨日はグミを使って荷車の車輪をタイヤのようにした。


後は車軸に鉄を使い耐荷重を上げることにも成功。


武器に回す分の鉄はほぼ考えなくてよくなったので道具に使えるのは大きい。


それでもまだ半分以上鉄は余ってるけどな。


ケンタウロス族からは大好評、とても快適とのことだ。


成功して良かったよ。


馬車のような乗り物も考えたが、特に人を乗せて長距離移動がないので見合わせ。


もしドワーフ族が移動してくるのが決定したら作ってもいいな。


今日は冬の季節に消費した野菜と穀物の補充。


メアリーは狩り部隊と狩りに行っている。


いつも通り皆でやって、1時間ほどで終了。


途中疲れてきたらポーションも使った。


皆に心配かけたくはない。


ポーションの使用も多くなってきたので素材の草も一緒に収穫しておいた。


ハイペリコンという名前の草らしい、ハインツが教えてくれた。


単体でも薬草として成立する便利な草だそうだ。


そこそこな量を収穫出来たので、ポーションの在庫を増やしておく。


ダンジョン攻略も考えて300個ほど作っておいた。


倉庫から出てくると平原側の門から声がする。


「ラウラ様とクルト様がお帰りだー!

 オスカー様とシモーネ様、他のドラゴン族もいらっしゃるぞー!」


お、帰ってきたか。




「ただいまです。」


ラウラがクルトの背から降りてくる。


「ただいま。」


クルトも人間の姿になり村に入った。


「また少し世話になるぞ。」


「グレースディアーのため、頑張りましょ!」


オスカーとシモーネも人間の姿になった。


3人とは違うドラゴンの姿、でもすごく綺麗なあのドラゴンが村の用心棒か。


そのドラゴンも人型になり、こちらに来る。


「今回のダンジョン攻略の間、用心棒を務めるウーテと言います!

 あなたが開さんね、よろしく!」


すごい笑顔で挨拶された、可愛らしい子だ。


「開 拓志だ、妻のメアリーは今狩りに行ってる。

 今日はダンジョン攻略をする部隊も狩りに出かけてる。

 ダンジョンは明日行くから今日はゆっくりしていってくれ。」


「えぇ、ありがとう!」


名前だけ聞いてたが、まさかクルトの幼馴染が来るとはな。


だが、仲違いやトラブルが無いようでよかった。


「ウーテは水を操るミズチという種族のドラゴンで、実力は充分だよ。

 父さまも母さまも認めてる、安心して用心棒を任せていいと思う。」


クルトがウーテの実力を説明してくれる。


これで村も安心だ。


さて、歓迎会も兼ねて宴会の開催を宣言しておこう。


「今日の夜は明日の英気を養うため宴会をする。

 短い間だろうがお世話になるウーテの歓迎会も兼ねてだ。

 俺はデニスたちに準備をお願いしてくる、ラウラとクルトは皆に伝えておいてくれ。」


「わかったです!」


「うん、わかった。」


2人は手分けしてウェアウルフ族とケンタウロス族に伝えに行った。


「悪いな、気を遣わせたか?」


「ダンジョン攻略の前日はそうしようと俺が決めてたから。

 気を遣ったわけじゃないぞ。」


皆慣れないことをするんだ、それくらいしなきゃな。


さて、デニスに伝えに行こう。




「うむわかった、食材も充分あるでの。

 村のためにも腕を振るわせてもらうぞい。」


頼りにしてる。


「開様!

 私に村を紹介してくれないかしら?」


食堂から出ると、ウーテが声をかけてきた。


ついてきてたのか。


「してもいいが、特に何もないぞ?

 畑と牧場、それに風呂と今出てきた食堂くらいだ。

 後は皆の居住する家だけだよ。」


「何か面白いものがあるのを期待はしてないの。

 他種族が力を合わせて氷の季節を乗り越えた村に興味があるのよ?」


なるほど。


デニスも初めてのことだと言ってたしな。


「ウェアウルフ族とケンタウロス族の里を見たことがあるか?

 あれと俺の家を一か所にまとめたのがこの村だ。

 食料は俺の想像錬金術イマジンアルケミーだが、後は村の皆の力で乗り越えれたんだよ。」


想像錬金術イマジンアルケミー

 オスカーおじ様が言ってた神から賜った業ね!

 それも後で見たいけど、やっぱり村も気になるのよ。」


見せてもいいが、今日作るものはもうないんだよな。


「今は作るものがないから、狩り部隊が帰ってきたら武器の調子を見て使うよ。

 そこまで気になるなら一緒に村を回ろうか。」


「えぇ、楽しみだわ!」


好奇心旺盛な子だな。




村を一通り回って家で休憩。


「村自体は本当に普通だけど、住民の表情に活気があったわ。

 氷の季節を越したばかりとは思えない、本当にすごいと思うわよ。」


それはよかった。


「皆が居なかったらもっと苦労してたさ、俺だけの力じゃないぞ。」


「開さんの力があったから集まったのよ、もっと堂々と誇っていいと思うわ。」


まぁそれはあるのかもな。


想像錬金術イマジンアルケミーは生きるために必要な手間と時間を激減出来る。


他にも使い道はあるんだろうけど、今はそれでいい。


「ありがとう、胸の内で誇っておくさ。」


「開さんは謙虚なのね、でも嫌いじゃないわ。」


「ただいまー!

 開様、今日もグレースディアーが獲れまし……た……よ?」


メアリーがウーテを見てキョトンとしている。


「――どちらさまですか?」


一気に真面目モードになったな、さっきのデレッとした顔はどこにいった?


「ダンジョン攻略の間村の用心棒に来たウーテです、よろしく!」


「この村に住んでる開様の妻であり補佐のメアリーといいます、よろしくお願いしますね。」


「そうだメアリー、狩り部隊の武器の状態を見ておきたい。

 メアリーも一緒に武器の確認をお願い出来るか?」


「わかりました、今は獲物の仕分けをしてるので食堂の裏に行けば皆居ると思います。」


「私も見にいっていい?」


「あぁ、そういう話だったし構わないぞ。」




3人で食堂の裏へ。


「皆技術がすごいのね、1回の狩りでこんなに獲れるなんて。」


狩りの結果にウーテが驚いてる。


「開様の武器とメアリー様の弓の技術、タイガ様の力。

 いろいろ結果が出る要素は多いですから。」


ウェアウルフ族がウーテに答える。


でも技術がないとここまで結果が出ないのも事実だろうし、すごいぞ。


「ちょうどいい、獲物を肉にするのに想像錬金術イマジンアルケミーを使うぞ。」


そう言うとウーテの目が輝きだした。


「やってみせて!」


急かさなくても片付けのためにも使うさ。


いつも通り獲物を肉にする。


ウーテの反応はどうかな?


目を大きく開けてパチパチしている。


戸惑ってるな、これは。


「え、あれ?

 一瞬でお肉に……あれ???」


そういうスキルだ。


武器は異常なかった、それはそれで安心。




ウーテと別れて歓迎会を兼ねた宴会の準備をする。


といってももうすぐ終わるけどな。


ドワーフ族の手際はすごい。


「うわぁぁ……こんなご馳走がたくさんなんてすごい!」


ウーテは感動と喜びが混じった声で感想を言ってくれる。


表情豊かで見てて飽きないな。


「この子はウーテ。

 明日からのダンジョン攻略の間、村を守ってくれるドラゴンだ。

 皆よろしくな。」


「ウーテです!

 水を操るミズチというドラゴンです、よろしく!」


村の皆が「よろしくお願いします!」と挨拶を交わし、メインの食事へ。


さぁ、明日からダンジョン攻略だ。


しっかり食べて、休んでくれよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る