第421話 精霊石の使い道が決定した。

「ここまで大量・高品質の精霊石があるなんて……。」


「うむ、某もこれほどの逸品を見たのは初めてだ。」


フェンリルとフラウが精霊石と呼んだ石を見て唸っている、周りの人たちも初めて聞く名前らしく少し困惑気味だ。


「すごいことなのか?」


精霊の名を冠しているしすごいのは分かるが、どれくらいすごいかは教えてもらわないと分からない。


精霊はどうして自分の中で納得して話を終わらせようとする節があるのだろう、そのあたりはドリアードが一番顕著だけどな。


「えぇ、すごいですね。

 精霊の名を借りてるのは伊達じゃないです、この石には高濃度の魔素が含まれていますからね。

 見つけるのは非常に難しいんですよ、何せこの外皮のような石も特殊で魔素を完全に遮断してますから……でも、なんでホブゴさんは見つけれたんですかね?」


それを聞くと本当にそうだ、ますますホブゴが分からなくなる。


卓越した能力を持ってるとは言っても、物理的に完全遮断してる魔素を感知できるものだろうか。


それとも、何かの拍子に見つけたのかな……オスカーを交えて今度聞いてみるとしよう。


あの様子だとまだ村に居るだろうし。


「しかしこれだけの精霊石だ、フラウの力を取り戻すには充分じゃないだろうか?」


フェンリルがフラウを見ながらぽつりと呟く。


え、そんな事が出来るくらいすごいことなのか?


「ダメよ、私が持ってる属性の適性は氷なんだから。

 フェンリルが氷を司っている以上、私が精霊に戻るとパワーバランスが崩れちゃうわ。

 オスカーさんとイフリートが同時に、かつ本気で存在を抹消しに来てもいいなら精霊に戻ってもいいけど。」


「……やめておこう。」


懸命な判断だと思う、そんなの誰にも抗えないだろ。


いや……もしかしたらシモーネとキュウビなら出来るのかもしれない。


それくらいあの夫婦の力は計り知れないというか、常軌を逸してるというか。


「さて、皆話は聞いたかの?」


「えぇ、もちろん。」


「聞き逃すわけないよ!」


くだらなくはないけど必要ない事を考えていると。ドワーフ族・アラクネ族・ダークエルフ族が物凄いワクワクした声で話しだしたのが耳に入ってきた。


「ドワーフ族は玻璃の時に利用した技術を活かして精霊石の武具を。」


「アラクネ族も同じく玻璃を加工した時に培った技術で、高品質な装飾品を。

 それと、さっきの話の通り注文があれば加工を承るわ。」


「ダークエルフ族は祭壇を含めた神殿にはめ込む精霊石の寸法計測、及び加工!

 アラクネ族にも協力を仰ぐと思う、寸法が測れたら任せる分の図面を持っていくわ!」


急にどうしたんだ、というか当初の原因はどこへ行ったんだろうか。


「何かすごい話がまとまったけど、そもそも精霊石の取り分で揉めてたろ……それはどうするんだ?」


「フェンリル殿とフラウ殿、もしくは村長が受け取ってくれれば問題無いぞ。」


「某は必要無い、フラウが力を取り戻せないならな。」


「私も要らないかな。」


「じゃあ村長じゃの。」


半ば強引に回収してきた精霊石の4分の1が俺の手元に残ってしまった……別に俺も要らないんだけど。


だが、倉庫に入れておけば想像錬金術イマジンアルケミーで何かに使えるかもしれないな。


さて、3種族は自力で手押し車に精霊石を積んで自身の作業場へ戻ったし、俺もこれを倉庫に入れないとな。


――よし、後ろで待機してるケンタウロス族に任せるとしよう。




精霊石を倉庫にしまってもらった後、俺はリゾート地へ。


少し落ち着いたので釣りでも嗜もうかと思ったが、利用者が想像の10倍ぐらい観光船待ちだ。


これだけ釣り目当てだと観光船というより釣り船だけどな。


「おや、村長もこれから釣りかい?」


「そのつもりだけど、リッカは慌しそうだな……どうしたんだ?」


釣り船の待機列に並んでいるとリッカに声を掛けられた、少し疲れている様子だし……大丈夫だろうか?


「大丈夫、と言いたいけど正直厳しいね。

 今は釣りが大流行、そして世界一安全で最高の釣果を出せるのがこのリゾート地だというのがデパートの時に広まったのさ。

 今や村で必要な物を買い揃えたら、生粋の冒険者以外は全員リゾート地で釣りをしている状況でね、ここに常駐している人じゃ捌ききれない状況だから僕が昼夜問わず動いているんだ……今は猫の手も借りたいくらいだよ。」


どうしてそんな状況になって相談もしなかったんだ、何か言ってくれたら今割り振られている人員の見直しをして応援を送ったのに。


よく周りを見ると、リゾート地で仕事をしている種族は全員顔色が良くない状態……そんなことあるわけないと思って気付かなかったのが情けなくなる。


「リッカ、今必要な物はなんだ?」


「提供する料理の材料、それとこの長蛇の列を解決するアイデア……それと単純に人員かな。」


「それらは俺が揃えてくる。

リッカはもうひと踏ん張りして、ここの対応と他に必要な物が無いか洗い出しをしておいてくれ。

すぐに応援を向かわせるからな!」


俺はそう言ってリゾート地を離れ、遠隔会話で広場に集合をかける。


さて、リゾート地の大混雑を何とかするぞ。

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