第298話 島へ行く種族も決まり、各々やるべきことをするため準備を開始した。

ダーツの結果が出た。


島のストーンカと巨大化魔物及び動物の討伐兼調査部隊はドラゴン族とマーメイド族の他にリザードマン族、ラミア族が行くことになった。


カウントアップの成績はヒルデガルドが1400、ユリアが1360と化け物みたいな成績。


「あの2人は私も勝つのに苦労するわ……。」


プロライセンスを持った流澪がそこまで言うのだから相当だろう、素人の俺が見てもすごいと思うし。


ヒルデガルドに至っては1回20のシングルに入った以外は全て20トリプルに入れている。


ほぼパーフェクトじゃないか。


ユリアも2回外しただけで十分すぎる成績、ちなみにユリアより下の人達は1000を超えるのがやっとなので、2人がどれだけずば抜けているかわかる。


俺も流澪にもう少し教えてもらおう、800程度で喜んでる場合じゃないなこれは……。


でも仕事が優先、あくまで遊びと付き合い程度のものだし。


「ではヒルデガルド殿とユリア殿は部隊の編成を頼む。

 アストリッド殿も海の探索要員を何人か頼むぞ。」


「「「分かりました。」」」


3人がオスカーの指示に返事をして遊戯施設を出て行く、やることは終えたしこれで解散かな。


ドリアードはダーツボードが空いたので挑戦するも、あまりうまく当てれない様子。


頬を膨らませながら投げ直すがダメな様子、妻達と帰ってる途中に流澪が「ドリアードさんの事見てきてあげていい?」と言ってきたので承諾。


立派にコーチをこなしている、クリーンエネルギー機構が完成したら遊戯施設を任せてもいいかもしれないな。


ダーツに麻雀、トランプも全てこなせているし適任だろう。


「それじゃ村長、私はドラゴン族の部隊編成の集まりに混ざってくるわ。

 恐らく私も行くことになるだろうし、場所分かっているうえ環境も適任だから。」


「分かった。」


「それじゃ私はパーン族の上位へ食糧を届けてきましょうか、誰も持っていってないはずですし。」


「何言ってるんだ、許可するはずないだろう。」


何を言いだすかと思えば、自分が囚われていた場所に一人で戻るような事を言い出した。


村長の立場からも夫の立場からも許可出来ないに決まっている、いくらオレイカルコス製の牢とはいっても格子状なんだから隙間から何かをしようと思えば出来るんだぞ。


「もちろん誰かに護衛してもらいますよ?

 ですが私はパーン族の上位と一番接触時間が長いんです、あちらも罪悪感やそういった理由から何か話をしてくるかもしれませんし。」


「特に耳を貸す必要は無い。

 長が帰って謝罪を申し出てくるまで最低限の接触でいいぞ。」


「お気持ちは分かります、ですがあれだけ閉鎖的な生活と非効率的な種族のまとめ方をした上で絶滅していないという事は何かしら技術があるはずですし。

 謝罪を申し出て来た時に、それを村のために使うよう交渉するのは重要な事かと。」


メアリーに言われてハッとする。


感情的になっていたかもしれないが、確かにそういう見方もあるのか。


村で保護したパーン族は成り行きで当たり前のように上位に従っていたので分からない事があるかもしれない、メアリーの意見を汲むなら本人に詳しい話を聞くのが一番だろう。


俺がやるべきなのだろうが恐らく感情的になってしまうだろう、人生でここまで他人に怒りを覚えたのは初めてだし。


前の世界で上司からパワハラを受けてた時でもこんな感情は湧かなかったのにな。


「無理をしない、何かあればすぐに撤退、護衛を3人以上付ける。

 この3点が守れるなら許可するよ、メアリーなら上手くやるだろうし。」


「心配をおかけして申し訳ありません。

 やるべきことだと思うので……では準備をしてきますね。」


メアリーなら感情的にもならず本当に上手くやるだろう、敵地に何の躊躇いも無く戻るという事は実力差もかなりあるんだろうな。


メアリーはそのまま準備のため広場へ向かっていく、途中シュテフィに声をかけてるのが見えたので少し安心。


シュテフィくらいの実力者が付いてくれるなら、ほぼ全てのトラブルに対応してくれるはずだ。


俺は俺のやれることをしよう。


とりあえず書斎でやるべきことの纏めからだな、結構溜まってきてるし早めに片付けておかないと。




書斎で仕事をして1時間ほど経っただろうか、体が痛くなったので軽く伸びをする。


纏めてて分かったが、これは魔王とダンジュウロウを村に呼ぶか俺が行かないと前に進まない事ばかりだ。


市場調査も兼ねて各領を見て回ってもいいかもしれないな、自転車がどれくらい普及してるかで今後村の対応も考えなければいけないし。


そうなると鍛冶担当のドワーフ族も連れて行くのがいいだろう、それとお菓子を作れるドワーフ族の奥さんも。


近々やることは無いし、明日向かっても良さそうだな。


早速話をしに行くとするか……と席を立つと後ろでカタリナがニヤニヤして立ってるのに気づいた。


「っ……びっくりした。

 声をかけてくれればいいのに。」


「自分の夫が一生懸命仕事してる姿に見惚れてたのよ。

 そのメモを見る限り魔族領と人間領に行くんじゃない?」


「あぁ、明日早速行こうと思う。

 自転車とお菓子の市場調査のためにな、ドワーフ族とドワーフ族の奥さんを連れて行くつもりだ。」


「なら私も行っていい?

 試作機が完成したんだけど、流澪ちゃんが居ないと動かす意味が無いのよね。

 でも流澪ちゃんは島の調査でしょ、私も手が空くのよ。」


「いいぞ……と言っても面白い事は特にしないけどな。」


とうとう試作機が完成したのか、どれくらいのエネルギーを生み出すか楽しみだな。


とりあえず銀は掘れるようにしたし、効率もどれくらいのものか流澪が計算してくれるだろう。


そうだ、銀の保有についても各領に報告しておかなきゃ……保有量と使用量を今のうちにまとめておいた方がいいのかな。


銀は特に使ってないはずだし、ついでに頼んでおくか。


「さーって、それじゃ私は明日のために服の準備をしましょうか。」


「だから遊びに行くんじゃないんだって――」


「好きな人に美しい、可愛いと見られたい一心だから気にしないの。

 仕事だしそこまで奇抜な格好をしないから安心して。」


カタリナは流し目でウィンクしながら俺にそう言った。


俺はその扇情的なカタリナにドキッとして、何も言い返せず部屋から出るカタリナを見送る。


さっきのはずるいと思う、あんなのどんな男だってイチコロだぞ。

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