第355話 模擬試合を終えて村に帰還した。

メアリーとウーテが魔力切れを起こして倒れたので、模擬試合も途中終了。


片付けをして村へ帰った。


ただ出かけただけじゃなくて、お土産のユニコーンの肉を持って帰れたのは良かったと思う。


それとコロッセオ。


とりあえず村から少し離れたところに再設置している、あっちの方角なら誰の邪魔にもならないだろう。


さて、俺はメアリーとウーテにポーションを飲ませたら馬刺しで一杯酒をひっかけさせてもらうか。


「村長!

 村の外に見慣れない建物がいきなり出現してるのを確認しました、どう対処しましょうか!?」


――マティルデが物凄い勢いで食堂へ飛び込んで俺に報告をしてくる。


埃が舞い上がるから食堂では大人しくしてくれ。


……いや、生活魔術で綺麗にしてくれてるから大丈夫かもしれないけど。


小姑みたいな意見もしたくないので思ったことは口に出さずに飲み込んだ。


「あれは俺が作った物だ、いずれ使うことになるだろうから持ってきただけだから気にしないでくれ。

 あそこなら誰の邪魔にもならないだろう。」


「そうだったんですね、申し訳ございません……。」


「村長、問題はあります。」


マティルデが謝った矢先、後ろからウェアウルフ族の声が聞こえて来た。


恐らくマティルデと一緒に村の周囲を巡回しつつ色々教えていたのだろう、てっきり一緒に飛べるハーピー族かドラゴン族がやるかと思ってたが……警備に関してはウェアウルフ族が一番詳しいからそうしたのかな。


だが、今はそんなことを考えてる場合ではない。


「問題とはなんだ?」


問題があるならあのコロッセオは壊すかどこかへ移動させなければならない。


いつ使うかも未定だし、そもそも壊した所で同じものをすぐ作れる。


「あのような立派な建物、知性が無い魔物や動物でも巣に出来ると判断出来ますので。

 定期的に狩りに行けば問題は無いですが……夜間少し危なくなる可能性が出ると進言します。」


なるほど、それは危ない。


村の戦闘力を信用してないわけじゃないが、減らせるリスクは極力減らすのが俺のモットーでもある。


そのリスクを負って何か益があるなら仕方ない場面もあるが、今回の件に関しては何の益も見当たらないし。


「分かった、あれは解体しておくよ。

 言われなければ気づかなかった、意見してくれて感謝する。」


「警備に携わる者として当然です――それでは失礼します。」


「待ってくれ、他にも話を聞きたいし問題が無ければ一緒に飲まないか?

 ユニコーンの肉が手に入ってるから、無くなる前に食べながら村の周りの状況なんかを教えて欲しい。

 こういう時じゃないと警備の仕事の実情をしっかり知ることなんて出来ないし。」


食べ物で釣るようになってしまったが、効果は絶大だった様子。


ウェアウルフ族はマティルデに謝りながら俺の提案に乗って来た、マティルデも食べたそうだったがすぐには無くならないからと伝えて仕事に戻ってもらう。


「……こほん、それでは警備の現状についてお話をしながら飲ませていただきましょう。」


ウェアウルフ族は物凄く嬉しそうに俺の隣へ着席、尻尾ぶんぶんしてて可愛い。




「――これくらいでしょうか、他に聞きたいことがあれば分かる範囲でお答えしますよ。」


「いや、充分だ。」


警備の仕事だからどういう頻度で魔物の討伐をしているか、村の安全はしっかり確保されているかという話だと思っていたが……村の住民は俺の想像の斜め上の行動を取っていた。


まさか独自に山林を切り開いて村の周囲を制圧しつつあるとは。


元々木が必要だというダークエルフ族の声が発端らしいが……そこまでやっているとは思いもしなかったよ。


だがそのおかげもあって周囲の魔物は以前に比べて減っているらしく、村の安全が確保されているならそれはそれでありだろう。


ただ度が過ぎると行き過ぎた自然破壊になるので注意はしないとな。


ドリアードに怒られてしまう。


「しかしこういう機会でなければ村長に私達の仕事が知られないのも問題ですね。

 何か解決する案はあるでしょうか?」


「一番簡単なのは報告書を作って提出してもらうことだな。

 毎日でなくても七昼夜に一度くらいの頻度でもいい、面倒だし無理にとは言わないけどな。」


「なるほど……それなら引継ぎに使う伝言板を上手く纏めれば対応出来そうですね。

 ただ警備も魔族領や人間領に人手を取られているのですぐには難しいかもしれませんが。」


「パーン族にそのあたり頼めないか?

 まだきちんとした仕事を割り振ってない人も居ると思うんだけど。」


「確かに、少し聞いてみます。

 ……しかしユニコーンの刺身、美味しいですね。」


ウェアウルフ族は生姜をたっぷりと乗せて甘口醬油に付けて馬刺しを口へ運ぶ。


そんなに生姜を一気に食べて辛くないのだろうか、俺はほんの少しで大丈夫。


「そうだ、仕事の話じゃないんだけどさ。

 ユニコーン肉、いつでも手に入ったら嬉しいか?」


「それはもちろん、この味なら誰しもが喜ぶと思いますよ。

 しかし……この近くには生息してないので難しいのでは?」


「そこに関しては考えがある。

 貴重な意見をありがとう。」


ユニコーン肉に関してはかなりいい反応をもらえた、周りを見てもユニコーンに不満を唱えてる人も居なさそうだし……メアリーの案に乗っかるとしよう。


そろそろ目は覚めただろうか、食事を切り上げて様子を見に行って見るか。

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