第25話 花の季節がやってきた。

氷の季節が明けて、花の季節に。


特に困ったこともなく無事に越せたな。


「何不自由無く氷の季節を越せた……!

 開どの、本当にありがとうございます!」


「これまでは何かしらの犠牲があったのですが……。

 感謝いたします、開様。」


ローガーとハインツに泣きながらお礼を言われた、気にしないでくれ。


さて、花の季節になったので色々やることがある。


ラウラとクルトはドラゴン族の里へ朝一番で発った。


謝罪だし、早めに行ったほうがいいな。


手土産もあったほうがいいんじゃないか、と俺が言ったらグレースディアーの干し肉を持っていくとのこと。


干し肉でいいのか?


皆「問題ないですよ、美味しいですから。」と言ってた。


まぁ皆がいいって言うならいいんだろう。


狩り部隊は久々の狩りへ。


メアリーは狩りに参加せず、俺の街道を敷く護衛に付くとのこと。


タイガは氷の季節の間ほとんど寝てたな。


花の季節になったら外に出だしたので、寒いのが苦手なのかもしれない。


街道を敷く間、留守番を頼んだぞ。


そう言うと、グォッと鳴いて村をウロウロしだした。


見回りをしてくれてるのかな?


いや違うな、子どもたちのところへ遊びにいってる。


平和でいいことだ。


狩り部隊は全部隊が狩りに行かず、1部隊だけグミの採取に行くことに。


ケンタウロス族も採取と荷車を引く役目でついていってる。


氷の季節を越えても肉は多少余裕があるので大丈夫らしい。


みんなありがとう。




交易部隊も準備をしている。


俺も今回の交易に参加するので、準備を手伝う。


調味料や村で採れない野菜を交換してほしいとデニスから要望があった。


向こうに渡す肉や野菜を荷車に積み、ドワーフ族の里へ出発。


「では開様、この門からあの大岩の方向へ街道をお願いしてよろしいでしょうか。」


「あぁ、任せておけ。」


俺は想像錬金術イマジンアルケミーを使い、見える範囲で街道を敷く。


土と石しか光らなかったので楽だ。


「出来たぞ、見える範囲でしか出来てないから街道が切れたらまた続きを敷くからな。」


「おぉぉ……!

 今まであった小石の段差やデコボコが無くなってものすごく快適です、ありがとうございます!」


よく使うんだから整備して当然だ、むしろ気づかなくて申し訳ない。


魔力回復のため、ポーションを飲んでおく。


お、ちょっとの疲れが消えたな。


疲れの原因がわかってよかったよ。


「そのポーション、魔力回復も出来たのですね。

 特に特殊な素材が必要でなくてよかったです。」


確かに。


傷を治すポーションを想像して作ったんだがな。


某RPGの全回復するヤツを想像して作ったからなのか?


使えなくて症候群になるアレ。


よく素材が足りたな、その辺の草と水だぞ。


売っても安かったのはそういうことか?


まぁ、それはいい。


街道が途切れるまで荷車に乗って移動する。




道中特に襲われることもなくドワーフ族の里へ着いた。


街道は敷き終わった、特に問題も無いとのことなので安心。


ドワーフ族の里は畑と鍛冶場と食堂で、後は各々の家だ。


40人前後のドワーフ族がいるらしい。


「デニス様が居る村から交易に来たものです、長老様をお呼びいただけますか?」


交易部隊のケンタウロス族が門番に話しかける。


「おぉ、いつもご苦労さん。

 ちょっと待っていてくれよ。」


しばらくすると、長老らしきドワーフ族がこちらへ来る。


「よぅ来てくれたの。

 肉と野菜がこれだけ手に入るのは助かるわい。

 ……おや、そちらの人は誰かの?」


「デニスが居る村に住んでる開 拓志だ。」


「「「「村長です。」」」」


メアリー含めて全員から村長と付け足された。


いい加減認めるか。


「ほっほ、いつもドワーフ族が世話になっておる。

 ドワーフ族の長老のホルストじゃ。」


「こちらこそ調味料は非常に助かってるよ、デニスがいなかったら今でも味付けがない料理を食ってるだろうな。」


「それはいかん、食は美味く楽しくなければの。

 おっと、取引を先に済ませるかの、いつもの場所へ来てくれ。」


「わかりました。」




取引も終了し、荷積みも終わった。


「あ、そうだホルスト。

 ドワーフ族の里から俺の村まで整備された街道を敷いてる。

 交易もだが、デニスからこっちに来るドワーフ族がまだいると聞いてるからその時使ってくれ。」


「うむ、使う時は使わせてもらうでの。

 そちらに鉱山があればすぐにでも移りたいんじゃがの。」


「村にダンジョンが出来れば、それも叶う可能性がある。

 ついでに希望する鉱石も聞いておくよ、何がいい?」


「ダンジョンが村に……?

 まぁよくわからんが鉄があれば問題ない、後は希少鉱石が手に入れば鍛冶の者が喜ぶの。」


帰ったらいろいろ聞いてみよう。


「わかった、進展があれば交易を通じて報告するよ。」


「いい知らせを待ってるでの。」


ダンジョン次第だな。




夜になる手前に村に帰れた。


街道が敷けたのでスピードを出しても問題ないらしい。


かなり怖かったぞ……俺もメアリーも足がプルプルしてる。


「ケンタウロス族ってあんなに早く走れるんですね……。」


まぁ下半身が馬で、しかもかなり筋肉質だ。


調味料と野菜をデニスに預け食事にしようと思ったが、裏に呼ばれた。


狩り部隊も大猟だったらしく、食堂裏に獲物が並んでいた。


サクっと肉に錬成し、片付け。


さて、食事にしよう。


「思ったより交易も街道も早く終わりましたね。

 ラウラたちが帰ってくるのはもう少し先でしょうし。」


確かに、1日で終わると思ってなかった。


「街道が無い時は荷を崩さないようゆっくりでしたからね。

 あそこまでキチンと整備された道なら早いですよ。」


なるほどな。


「そうだ、グミの採取はどうなったんだろうな。」


「聞いておきます、また明日お伝えしますね。」


「あぁ頼む。

 俺は錬金術の倉庫に居ると思うよ、ポーションを作らなきゃだからな。」


「わかりました。」


「メアリーも手伝ってくれるか?

 片付けと素材の草の収穫があるんだ。」


「わかりました。」




食事が終わり帰宅。


クルトとラウラはうまくやっているだろうか。


あの2人なら大丈夫だろう。


そう思いながら風呂に入り寝る準備、早く準備を済ませなきゃな。


メアリーがベッドでソワソワしながら待ってる。

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