第347話 ウンディーネに現状の説明をした。

「ウンディーネです、結構長い期間この石に閉じ込められてた水の大精霊――ってこれ、自分で言ってて情けないわ。

 たまたまこのドラゴン族と魔力の波長が合って念話を飛ばせたけど……そうじゃなかったらずっとこのままだったと思うから本当に感謝してる。」


「ウーテよ、私こそ大精霊のウンディーネ様を救出出来て良かったわ。」


ウーテの力でホープストーンがあった場所から同じくらいの量の水が出るようにして、ウンディーネと自己紹介を交わす。


「俺は未開の地の村で村長をしながらこの世界の神をやってる開 拓志だ。

 事故でウーテと契約してしまったみたいだが不死なので安心してくれ、ちなみに俺はドリアードと契約してるぞ。」


「……ドリアード、この人は何を言ってるの?」


「あんたは石の中に居たから知らないかもしれないけど、全部本当の事よ。

 ウーテちゃんの生命を良く感じてみて、本当に不死でしょう?」


そうしてウンディーネはウーテの手を握りながら目を瞑り、何かを感じることに集中し始めた。


やっぱり見ただけで分かるシモーネの能力は特殊なんだな。


「本当に不死じゃない……え、じゃあ貴方って本当に神様!?」


「そうだよ、信じられないかもしれないけど。」


「あの説明不足なチンチクリンじゃなくなったのね、やったー!」


不敬の極みのような暴言でオホヒルメノムチを貶すウンディーネ、ちょっと噴き出してしまった。


すごい大人しそうな顔立ちをしてるのに口が悪いんだな……俺には手加減してほしい。


「相変わらず口が悪いわねぇ。

 まあ確かに前の神様の説明は足りなかったわ――でも村長も元人間だしこの世界に来て全然日も浅いから無知な事が多いからね。

 ウーテちゃんは村長の奥さんだから、何か困ったことがあったらサポートしてあげてよ?」


「分かったわ、ドリアードも居るなら盤石だと思うし。

 そういえばイフリートとシルフもその村で誰かと契約してるの?」


「イフリートは村に半分住み着いてるわ、誰とも契約はしてないけど。

 シルフは気ままにどこかで漂ってると思う、ハリケンやジクロンの被害も軽微なものしかないから仕事はしてると思うわよ。」


シルフという大精霊も居るんだな、話を聞く限り大精霊は全部で4人か。


シルフも村に訪れたら大精霊全てが村に一度以上来たことになる……結構凄いことなんじゃないか?


「村長、出立の準備が整いました。

 他の者からこちらに居ると伺ったの……ですが……。」


俺・ウーテ・ドリアード・ウンディーネの4人で話をしていると、そこに荷物を持ったマティルデが入ってきた。


だが様子がおかしい。


「そちらの水を纏った方は一体……?」


「石に閉じ込められてた大精霊のウンディーネよ、よろしくね。」


ウンディーネは困った表情をしつつも、何とか笑顔を取り繕ってマティルデに手を振りながら自己紹介をする。


だが、ウンディーネの努力も空しくマティルデは荷物を持ったままその場に倒れてしまった。


中から何か割れる音も聞こえたし……あぁもう!


「あーあ、ウンディーネやっちゃったわね。」


「他にどうしろっていうのよ!?」


ドリアードとウンディーネが漫才してる間に、俺とウーテでマティルデを横にして荷物を一度解かせてもらう。


下着とかあるかもしれないからウーテにワレモノだけ出してもらう事に。


しかしこう何回も気絶されると対応に時間を取られて勿体ないな。


こんな時ケンタウロス族が居てくれれば対応を任せれるんだが……そうだ、ついでだしここに来てもらうか。


「ちょっとケンタウロス族を呼んでくる、気絶した人の対応ならピカイチだし。」


「それだけのために呼ばなくても……とは思ったけど慣れてる人にしてもらうのが一番かも。

 村長、よろしくね。」


分別はウーテに任せて俺は一度村に帰ることに。


すぐに戻るからな。




「ずるいです、何で私も連れて行ってくれなかったのですか。」


ケンタウロス族にお願いして早々少し怒られてしまった。


「許してくれ、そんな事になるとは思わなかったんだ。」


謝ってから思ったけど、人が気絶してる状況をずるいというケンタウロス族もどうかと思う。


気絶なんてしないほうがいいに決まってるし。


ケンタウロス族は介護に必要な道具が入った籠を抱えて「行きましょう。」と力強く言ってきた。


そんなに介護するのが好きなのだろうか、変な使命感を与えてしまって申し訳ない気がしてきた。


本来の仕事……忘れないでくれよ?


俺はケンタウロス族とホープストーン前に瞬間移動して、早速マティルデの介護をお願いする。


あれは使命感とかじゃないな、本当に介護が好きなんだろう。


めっちゃ笑顔だし。


さて、俺はウーテが分別してくれたワレモノを直すとしよう。


見る限り恐らく食器類だな……何か特別な物じゃなくてよかったよ。


俺は想像錬金術イマジンアルケミーでそれらを直すと、ウンディーネが驚いた声をあげたのでそちらを向く。


「どうしたんだ?」


「本当に神様だったのね……。」


信用してなかったのかよ!


――仕方ないけどな、俺だって威厳は無いと思ってるし。


ケンタウロス族は運搬可能なベッドにマティルデを寝かせ、それを背負ってこちらに来た。


「一通り処置は完了しました。」


「ありがとう、お疲れ様。」


かなり安定もしてそうなものだ、いつの間にそんなものを作ったんだろう。


とりあえずアンドレアの所へ向かうとしようか。


マティルデは……きちんと処置をしてるし大丈夫だと信じよう。


ウンディーネの事も説明しないと駄目だし、困らないように対処はしたから許してくれると信じたい。


トラブル、起きないといいなぁ。

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