第325話 宴会最終日を楽しんでいたら、一難去ってまた一難どころじゃないことになった。
あれからイフリートと別れて俺は再び一人で食事。
イフリートはドリアードを探すため村を見て回るらしい、食事は必要無いからと避けていたが勧められて食べると多幸感を得ることが出来て嬉しかったそうだ。
大精霊は普通の生命より娯楽が無いだろうから村で楽しんでほしい。
この村でも本当の娯楽は最近出来たんだけど、そういえば遊戯施設で遊んだりはするのだろうか?
今度誘ってみるとしよう。
「ふぅー……危なかったぁ……。」
「ドリアード、イフリートから逃げるにしても人が座ってる椅子から現れるのはやめてくれないか?
股から頭が出てくるのは正直いい気分じゃないぞ?」
「ごめんごめん、とりあえず村長の近くにって思ったらこうなっちゃったの。
それよりあいつの正体分かったんだ、相性悪いの納得したでしょ?」
「それは納得したが……イフリートはイフリートで必要な大精霊だろう。」
大精霊同士が相容れないからといって、ずっと離れてるわけにもいかないだろうし。
この間の火山のように協力する場面もあるはずだ。
「そうだけど、過ぎた熱は自然にとって天敵なのよ!
それなのにイフリートのやつ、このくらいは放出してても問題無いだろうって対策しないのは酷くないかしら!?
おかげで一部の山の付近には自然があまり無いのよ……あれじゃ生命も近づかないわ。」
好き好んで活火山の近くに住む生命は少ないだろうな、そういった場所に適応しているならともかく。
だがこれは、ドリアードの子どもっぽい部分がイフリートを一方的に嫌ってるだけなのかもしれない。
村長をしてきてコミュニケーション不足が誤解を招くのを経験しているから、ドリアードにはその失敗をしてほしくないな。
何千年と先輩のドリアードにしたら大きなお世話かもしれないけど。
「イフリートは何か相談したそうだったぞ?」
「分かってるけど……逃げ過ぎた手前姿を現しにくくて。
でも村長と契約してるのを知られたくはないし、ほんと召喚しなくて正解よ?」
良かった、頼られた時に一瞬ドリアードを召喚しようかと思ったがしなくてよかったな。
やはり大精霊が人間と契約してるのは色々問題があるのだろう。
しかし大精霊同士の相談ってなんだろう、何か不吉な事じゃなければいいんだけど……。
しかしドリアードにイフリートとくれば、他の自然の大精霊が居てもおかしくなさそうだ。
俺が思いつくのはウンディーネとシルフくらいだろうか、それぞれ水と風を操るし。
ノームも大精霊になってもいいくらいだけど……星が占める地面の割合が少ないから駄目なんだろうか?
まあこんなこと考えてても仕方ない、もし会う事があれば友好的な交流が出来るように何か考えておくとしよう。
「それじゃ、俺は料理を取ってくる。
ドリアードもいい加減イフリートと話をしてやれよ?」
「ぐ……分かってるわよ。」
俺はドリアードに軽く釘を刺してその場を後にする、さっきのサイコロステーキが美味しすぎるのでもう一皿もらってこよう。
それから色んな人に声をかけられたので、その都度食事と酒を交わしながら話していると辺りは大分暗くなってきた。
宴会も今日が最終日、村は片付けがどんどん進んでいき徐々に静寂が訪れる。
3日も宴会をと思ったが、やってみればあっという間の3日間だったなぁ……エルケとキュウビは満足してくれただろうか?
主にあの2人に向けてしたものだからな、後で感想を聞かないと。
「村長、ちょっと話がある!」
さて、そろそろ風呂に入ろうか――と思った矢先にオスカーが叫んで俺を呼び止めた。
表情は物凄い剣幕、一体何があったのだろうか?
「どうしたんだ?」
「神殿で詳しい話をする、とにかく一緒に来てくれ!」
俺はオスカーに担がれて神殿まで全速力で連れて行かれる、ケンタウロス族よりスピード出てるんじゃないか……?
つくづくドラゴン族の身体能力はすごい、すっごい怖いけどな。
「村長、来てくれたか。」
「ほぼ連れ去られたようなものだけどな……。
しかし妻達に魔王、それにキュウビとダンジュウロウまで。
一体どうしたんだ?」
「話は私と大精霊様からさせてもらおう。」
口を開いたのはダンジュウロウ、大精霊様から話だって?
その言葉とほぼ同時にドリアードとイフリートが姿を現す、2人とも話をしたようで何よりだが……これは絶対良くないことがあったと雰囲気で分かる。
「まず今日の夜、私がオスカー殿と飲んでいると星が見えたので酒の肴に占星術を行ったのだ。
ここまで良い環境を築き上げている村だ、未来はきっと輝かしいものだろうと思ってな……だが、近い将来にこの村は焦土と化す結果が占星術には映った。」
何だって……?
「待て、ダンジュウロウの占星術って――」
「そう、一番起こり得る未来を映し出す予言のようなものだ。
だが何が原因でそうなっているか分からないし、対策の取りようが無い状態でこれを知らせると大混乱どころの騒ぎではない。
どうしようかオスカー殿と悩んでいるとドリアード様とイフリート様の話が聞こえて来たというわけだ。」
村が焦土になる話って……イフリートが村に何かするつもりなのか!?
クリーンエネルギー機構は大丈夫だったが他の技術が駄目だったのかもしれない、話を聞かせてもらおう。
「先ほど話に出たドリアードから散々逃げられていたイフリートだ、知っているとは思うが火と熱を司っている大精霊をさせてもらっている。
このあたりが焦土になる未来は間違ってないが、まだその先があるのだよ――この世界が焦土と化した後に極寒の季節がやってくる。」
「原因は抗いようがない外部からの破壊因子よ。
たまに降ってくる空に瞬く星のかけらじゃなく……恐らく星そのものが降ってくるだろうって。」
超巨大隕石か!
やはりここは異世界なんかじゃなく宇宙にある星の一つ、流澪の仮説は間違ってなかったわけだ。
だからこそ両親との繋がりを断ち切ることが出来んだな……くそっ!
「星だろうが何だろうが、ワシとシモーネ……それに村の総力を挙げればどうにか抗う事が出来るのではないか?」
「破壊は出来るかもしれないけど、それに伴って周りへの飛び火がとんでもないことになるわね。
もちろん村も無事じゃすまないでしょうし、最善を尽くしたとしても結果はほんの少し命が生き残った程度でしょう……それくらい星の力が強いのよ。」
「そういった話をしていて、私の占星術に映ったものとは違う未来を何とかして迎えようとしていて思い出したんだよ。
村長と流澪殿、2人の神の力があれば対抗出来るかもしれないと。」
この世界に通常存在しない異分子の俺達……か。
やれることは何でもやらないとな、だが魔力の関係上俺が隕石を塵にしたところで俺は死ぬだろう。
そうするとドリアードも消えて世界は大変なことになる、焦土になるよりはマシなんだろうけど。
「村長が何を考えてるか何となく分かるし、その通りだわ。
だから今回は特別に神様と直接話をすることにしたの、だからこの神殿ってわけ。
いい場所に神殿を作ってたわね村長、ちょうど村には精霊樹もあるから神様を呼び出しやすいわ。」
ドリアードが言った言葉に理解が追い付かなかった、神がこの場に現れるだって?
他の皆も「は?」と言って固まっている、俺もそうなりそうだったから気持ちは分かるぞ。
「特別だからね、誰にも言っちゃ駄目よ?」
そう言ってドリアードとイフリートが神の像に向かって目に見えるほどの力を発する……本当に神がこの場に現れるのだろうか?
俺は固唾を飲んで2人を見守る……神が居れば何とかなるかもしれないと柄にもなく心の中で祈りながら。
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