第5話 虎の相棒、不意に訪れるトラブル

朝日で目が覚める。


前の世界では、日が昇る前くらいにアラームで起きてたので清々しい気分だ。


虎のような魔物も俺が起きたと同時に目が覚めたのか、あくびをしている。


そして俺に頬ずりをしてきた。


「お前、元居た場所に戻らないのか?」


言葉が分かるとは思わないが、なんとなく聞いてみる。


グォッと鳴くだけで俺から離れようとはしない。


かわいい。


とりあえず余った肉を保管する方法を考えないとな。


そこまで暑くはなかったが、生肉を常温に晒し続けるのは危険だ。


塩や油もないから干し肉も作れないし。


地下室を作って氷を置いておけば冷蔵庫代わりになるか?


そう思い、地下室を錬成。


もうこれくらいじゃ驚かない、慣れた。


降りやすいように階段と、そこに蓋をする扉と物を置く棚も錬成して設置。


そして泉の水で氷を錬成、これも地下室へ。


しばらくすると大分肌寒くなったな、これで冷蔵庫代わりにはなるだろう。


そこに肉を保管。


虎のような魔物はどこかへ行くわけでもなく、ずっと俺についてきて錬成するたびキョトンとしていた。


かわいい。


だが……これは俺と居るつもりかな?


すごく強そうなので居てくれるなら非常に心強い。


夜は一緒に寝ると暖かいし。


一緒に居てくれることを信じよう。


なら名前をつけたほうがいいな。


多分野生だろうし。


「俺と一緒に居てくれるんだろうし、名前を付けなきゃな……そうだ。

今日からお前はタイガだ、よろしく。」


虎のような魔物をタイガと呼ぶと、グォォーンと鳴いた。


言葉、わかってないんだよな?


気のせいか、タイガと呼ぶと喜んで見えた。


するとタイガのお腹がぐるるるる……と音を立てた。


そういえば朝ご飯がまだだったな。


先ほど地下室にしまった肉を取り出し、1キロほどタイガに与える。


タイガもやはりお腹が空いてたのかすぐに肉を食べだした。


俺も焼いて食べよう、味付けが無くて悲しいが贅沢は言えない。


ん、素材の味しかしない。


でもかなり上質なんじゃないか?


安いスーパーの肉とは違う気がする。


あの魔物を見たら肉にしよう、タイガみたいな関係にはなれそうにないし。


タイガは食べ終わると、森の奥に歩いて行こうとする。


そして振り返った。


「ついてこいってことか?」


俺は家から魔物が持っていた剣を取って、タイガについていった。




しばらく歩くと、タイガが何かを見つけたように一点を睨んでいる。


こうして見ると怖いな、俺に懐いてくれてるのがわかってるとかっこいいんだけど。


視線の先には昨日の魔物。


オークっぽいしオークと呼ぶか。


「オークじゃないか、よく見つけたな。

肉にしよう。」


スキルでお肉にすると、タイガが悲しい表情で俺を見つめてきた。


もしかして力を見せたかったのか?


傷だらけで負けてるとこしか見せれてなかったもんな。


それはごめん。


次は見てやるから、そんな目で見ないでくれ。


気を取り直して、俺は背負える籠を木から錬成し、肉を入れて家に持って帰る準備。


近くに川があったので氷も入れておこう。


結構重いが我慢だ。


内臓はどうしようかと思ったら、タイガが食べ始めた。


内臓好きなのかな。


俺はあんまり好きじゃないからWin-Win。


もう少し進むと、オークより強そうな熊の魔物を見つけた。


が、タイガが数秒で討伐した。


そして食べる。


食欲旺盛だなぁ。


俺に持ってこなくていい、食べないから。


俺はお腹いっぱいだ。


それに帰れないぞ、豚肉が優先。


両手でバツを作ると、タイガが全部平らげた。


ほんとによく食べる。


それにしても、タイガやっぱり強かったんだな。


なんで昨日はオークに負けそうだったんだ?


そう疑問に思いながら、食べ終わったタイガがまた進みだしたのでついていく。




進んだ先で理由がわかった。


とんでもない数のオークの死体。


タイガがつけたであろう噛み傷やひっかき傷で絶命しているのがわかる。


「これ……タイガがやったのか?」


そう俺が言うと、タイガはグォッと鳴いた。


この数が家まで来ていたらひとたまりもなかっただろう。


俺は恐怖を感じながら、タイガに深く感謝した。


しかしこれだけあると血生臭いな。


錬成で作った肉と違って、血だらけなので食べたくない。


食べるように出来るかもしれないが、この量はいくらなんでも持って帰れないしな。


他の魔物や動物が食べるかもしれないが、歩いてこれる距離なのでそいつらに家が襲われても困る。


そう思い、全部肥料にして土に混ぜ込もうと考えた。


すると肥料のレシピが頭に現れ、大量のオークの死体と視界に入る全部の地面が光った。


「よし、やっぱり肥料にも出来るんだな。」


想像錬金術イマジンアルケミーを発動すると、死体はきれいさっぱりなくなった。


タイガはポカーンとしているが、あのままにするよりは精神衛生上いい。


食料の場所を教えたかったのならごめん。


俺は肉が腐るのも嫌なので、タイガに帰ろうと促した。


タイガはグォォ……と少し力無く鳴いて、一緒に家のほうへ歩いて行った。


やっぱり食料の場所教えてたんだな。


ごめんって。




家に着いたので、籠の肉を地下室に保管。


太陽も真上に来ているのでそろそろお昼だろう。


この辺りは前の世界と同じ感覚なのでありがたい。


タイガはさっき食べてたからいらないかと思ったが、肉の量が俺だけの分しかないのがわかるとションボリしていた。


すまん、食べたいならあげるから拗ねるな。


朝と同じくらいの量の肉をタイガの前に置き、俺は肉を焼いて一緒に食べた。


腹ごしらえが終わり休憩していると、タイガが平原を見つめている。


どうしたのか?


タイガの視線の先を見ると、平原で人間が2人魔物に追われている!


「助けて……助けてぇぇぇ!」


人の声だ、助けを求めてる!


「人だ!タイガ、助けるぞ!」


グォッ!と威勢よく吠えて、俺は無意識にタイガにまたがり助けにいった。


これ朝もタイガに乗ればよかった、すごい楽じゃん。

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