第281話 流澪とデートするため、ウーテを入れた3人で出かけることにした。
流澪と俺でウーテを探すと、割と時間を掛けずに見つけることが出来た。
だが準備している物を見る限り哨戒の仕事へ向かっているので、流澪が慌てて呼び止めている。
俺もその後ろを追いかけているが、どうやら間に合ったようだ。
しかし仕事があるのにワガママで呼び止めて、しかもそのワガママが俺とのデートなのにウーテが仕事の穴を空ける意味はあるのだろうか?
どう考えてもウーテは仕事に行きそうだけど。
「面白そうじゃない!
分かったわ、哨戒は他のドラゴン族に代わってもらう。
すぐ村長と流澪さんのデートに付き添う準備をするから待ってて!」
流澪から話を聞いたウーテは、まさかの二つ返事で快諾。
そんな面白そうな事をするの?
失礼かもしれないが、ウーテ基準で面白そうって少し身の危険を感じるんだよな……。
ポーションと防寒具を多めに持っておくとしよう、本当に何があるか分からないし。
「よし、ウーテさんはついてきてくれるらしいわ!
私達も準備しましょ!」
「何を準備すればいいんだ、それにウーテは何をしについてくるんだ?」
嫌な予感はしつつも流澪に聞いてみる。
「お楽しみよ、とりあえず様々な環境に適応出来るようにしておいて!」
流澪からとんでもない言葉を聞かされる、本当にどこへ何をしに行くんだ……?
デートなんだよな、死地へ赴くようにしか聞こえないんだけど。
「よし、準備出来たわよ!
と言っても、私はそこまで準備するものはなかったけど。」
「私も大丈夫かな、防寒具に食糧に着替え……1日だけだしこれだけあれば大丈夫だと思うわ!」
「俺も流澪と同じようなものだ、それにポーションなんかは足してあるけど。
一体どこに行くつもりなんだよ、いい加減教えてくれていいんじゃないか?」
俺とウーテ、それに流澪の準備が終わったので気になってる……というか疑問に思ってることに答えてもらうため質問した。
流石にこの準備だけしろと言われてもデートには聞こえないし。
「治外法権の土地よ、コンパスは作ってあるからどこからどの方角に行けば何があるかメモをしておけば次に訪れるのは容易なはず。
船で行くにしては時間がかかりすぎる、かといって空路でも急なトラブルや飲料水の確保が難しいかもしれない。
そこでウーテさんにその2つを担ってもらえば万事解決ってわけ、戦闘になっても相当頼りになるし!」
おおよそ俺が思っていたデートの内容とはかけ離れた回答が流澪の口から告げられる。
着せ替え人形はやめてくれといったが、これはこれで気苦労が凄そうだぞ?
流澪は言い方がきついだけで、思考は平和な人よりだと思っていたが……未知の事になるとそんな事は無いのかもしれない。
実際ものすごいワクワクしてる目をしてるからな、子どもみたいだ。
「コンパスの動作確認は大丈夫か?」
「大丈夫、知的生命体が住むのに北極と南極にある磁力は必須なのかもね。」
「もし場所が分からなくても、私が何とか出来るだろうし。
どうしてもだめなら村長がドリアード様を呼んで何とかしてもらえばいいんじゃない?」
どうにかなるか怪しいが、一応無事に帰れる算段はあるようなので一安心。
塩は持っていってるので、最悪何かあっても生きるだけなら何とかなるはず……かなりひもじい思いをするけど。
「よし、それじゃ行くとするか。
あまり時間が遅くなってしまうと大変だし。」
「そうね、そうしましょ!」
「分かったわ、それじゃ私の背に乗って!」
ウーテは早く出発しようと言わんばかりのスピードでドラゴンの姿になり、俺達を背に乗せる。
首元を銜えなくても大丈夫だから、すぐに背中に乗るからな。
俺達2人を乗せたのを確認すると、ウーテは早速南へ向かって飛んでいった。
あっという間に村が見えなくなる、命綱は結んであるが振り落とされないように注意しておかないとな。
命綱……前の世界でいう安全帯のようなものに作り直してもいいかもしれない。
「何も無いわねぇ……もう少し島や大陸があると思ったんだけど。」
明らかに未開の地を出て洋上を飛行しだしたのでウーテも速度を少し緩めている、流澪もそれに合わせて周囲の観測をするため周りを見渡してるが退屈そうだ。
「そんなものだろう、新しい発見なんて早々簡単に出来るものじゃないさ。
俺も1時間くらいウーテの背に乗って分かったが、それでも新発見をする準備や労力は格段に楽だよ――そんな慌てなくてもいいんじゃないか?
そもそも何でデートなのにこんなことをしてるんだよ……。」
「普通の事をしても面白くないでしょ、買い物なんていつだって出来るんだし。
デパートならいつもと違うからいいかなって思ったけど、それを待ってると陽の季節になるから待てないわ。
それなら他の人は絶対しないような事をしようと思って、ウーテさんには迷惑かけちゃってるけど。」
それを聞いたウーテは飛びながら首を振って返事をする、迷惑とは思ってないらしい。
表情を見る限り楽しそうでもある、哨戒よりは楽しいのだろうか?
「まさかこんな事をするとは思ってなかったよ、いつもよりしっかり準備をしてて良かった。」
明日はパーン族との会合もあるし……今日事故があって会えませんっていうのは流石に不誠実だろう。
「待って、ここから南東に島みたいなのがないかしら?」
俺の愚痴をよそに流澪はコンパスをチラチラ見ながら前を確認している、俺も流澪の視線に合わせると確かに島のようなものが見えた。
あんな島は見たことが無い……もしかしたら本当に新発見をしたかもしれない。
「ウーテ、あの島に降りてくれ。」
ウーテはコクリと頷くと、島に向かって全速力で進んでいった。
振り落とされるのでもう少し手加減してほしい、命綱がなければ吹っ飛んでたぞ。
島を発見してから15分、海岸に到着したので近くの木を拝借して仮拠点を作らせてもらう。
これが次ここを訪れる時目印になるだろうし、これくらいはいいだろう。
「よし、それじゃあ島の探索をするとしようか。
今日はここを軽く探索したら村に帰るぞ。」
「「はーい。」」
2人ともいい返事をして俺に付いてくる。
未知の生物や魔物が居たら怖いけど、代わってくれる様子もない。
「俺が先頭なの?」
「村長が先に歩き出したんでしょう……私が先頭を歩くわ。
流澪さんは殿をお願い、村長は真ん中で。」
ウーテが呆れながら3人の列を再編成する、前の世界のゲームでもこのあたり重要だったし現実でも相当大事なんだろうな。
「分かった。」
「りょーかい。」
ウーテについて行きながら、俺と流澪は島に何か無いかを調べながらウーテについていく。
無人島なら仕方ないけど、何も無いのは少し寂しい――そう思っていた直後。
「何か話し声が聞こえるわ。
ドラゴンの姿になるから2人は私の後ろに隠れて。」
ウーテの指示に従い流澪と後ろに隠れさせてもらう、穏便に事が済めばいいけど……。
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