第280話 流澪とこの後どうするか話し合った。
流澪とご飯を食べながら遊戯施設やクリーンエネルギー機構の事を質問する。
遊戯施設に関してはダーツの講師及び競技者として立つことは出来るとの事だ、クリーンエネルギー機構は試運転さえ終われば電線を配線して設備と繋げれば完了らしい。
「あ、それと電線や蓄電設備のために銀の採掘量を増やせるかしら。
そもそも採掘してるかどうかわかんないけど。」
「採掘自体はしてないんじゃないかな。
しかし金・銀・銅に関しては鉱石でも保有してるのを知られたくないんだよなぁ、貨幣の偽造とか疑われるのも嫌だし。
というか何で銀なんだ、電線なら銅だろ?」
「それは前の世界の価値と採掘量の問題ね。
電気伝導率に関しては銀が最も高いのよ、銅とは微々たる差だけど……エネルギー変換効率を考えたら少しでも伝導率が高い金属を採用したくて。」
そうだったのか、どこかしこも電線には銅だったから他にいい金属があるなんて思いつきもしなかった。
確かに銀はコストがとんでもないことになりそうだ……銅でも充分高いはずだけど絶対その数倍はするもんな。
「エネルギー変換効率に関しては解決できないのか?」
「解決したくても設備も知識も技術も足りないわ。
私じゃこれが精一杯、耐久性に関してはオレイカルコスを採用したことで解決してるしエネルギー量が足りなくなれば他のエネルギー機構を考えるか増設すればいいでしょ。
それよりもうすぐ終わりが見えることが嬉しいのよ、やっとかーって!」
「研究は楽しんでるように見えたけど、嫌だったのか?」
「好きな物でもゴールが近づくと嬉しいものでしょ?」
それもそうか。
だが問題は銀の保有だ、こればっかりは魔族領と人間領へ事前に報告しておいたほうがいいだろう。
明日にでも行くとするか、特にやることも無いし。
「村長、ここに居たか。」
呼ばれたので振り向くとそこにはオスカーが立っていた。
「ちょっと流澪と仕事の話をしながら食事をしてたんだよ。
オスカーも遊戯施設を使ってくれよ、麻雀やトランプなんかは楽しめると思うし。」
「今までサキュバス・インキュバス族の里に居たからな、話には聞いていたが……今度顔を出してみるとしよう。
それよりだ、パーン族と交流を図ってみたところ村長に会いたいと申し出があった。
どうする、会ってみるか?」
そういえばパーン族との交流も兼ねた部隊だったんだっけ。
「敵意があるかどうか次第だな。
友好な関係を向こうが求めているなら俺は会って構わない。」
「それは大丈夫だ、どちらかというと神に選ばれたという村長を崇めたそうではあったからな。
それに向こうが襲ってきたとしても、ワシを含めた護衛してる者が何もさせんよ。
シモーネは連れていけんが、ウーテにローガー殿、ヒルデガルド殿とシュテフィ殿も護衛に付けようか。
クルトとラウラ殿はまだ凄みが足りん、顔と目で相手を威圧さえ出来れば変な真似はしてこないだろう。
そもそも村で会合をするつもりだから、何かした時点でパーン族は絶滅しても文句は言えぬし。」
護衛が怖すぎる面子だ、絶対敵に回したくない。
だが相手の動きを封じるという意味では最適解なのだろう。
「では早速――」
「オスカーさん、パーン族との会合って明日じゃダメかしら。」
俺とオスカーの話に割り込んで入ってくる流澪、確かに今日は流澪と居たかったから断るつもりだったがどうしたんだろうか。
「む、どうかしたのか?」
「今日は拓志とデートしたいのよ、ダメ?」
それを聞いたオスカーはポカンとしている、俺もだけど。
そんな理由でまだ会った事の無い相手を待たせるのはどうなのだろうか……。
少しするとオスカーはぷっと吹き出し笑い出す。
「それは仕方ない事だ、村長はしっかり相手をしてやらねばな。
パーン族には明日の朝に村へ訪問してもらうよう伝えるがよいか?」
「明日ってそんな早く来れるのか?」
「パーン族との連絡と片付けでサキュバス・インキュバス族の里に部隊が常駐している。
その時に警備兼見張りを付けて転移魔法陣をくぐってこちらに来るようにすれば問題なかろう。」
なるほど、そういうことならいいか。
あれは簡単に模倣できるものではないらしいし……パーン族がどういった事が得意な種族か分からないけど。
「それじゃ明日の朝ということで。
朝食を食べたら広場に居ればいいか?」
「いや、神殿が良かろう。
パーン族が是非見たいと言っておったし、あそこなら少々大人数でも問題無いはずだ。」
なるほど、自分たちを神の眷属だと言うならあそこはうってつけかもしれない。
崇めている神とあの神と違う可能性はあるけどな、魔族領でもそういうことがあったし。
違っていると怒られたりしないかな、ちょっと不安だ。
「じゃあ明日の朝神殿で。
よろしく頼むよ。」
「任せておけ、ワシは他の者とパーン族にこのことを伝えてこよう。
では2人とも逢瀬を楽しむがよい。」
オスカーは笑いながら食堂を後にする、改めて言われるとちょっと恥ずかしいな。
「しかし、まさか流澪が仕事をほっぽってワガママを貫くとは思わなかったよ。」
「私だってそういう時くらいあるわよ、これでも結構自分を律してきたつもりなんだけど?
2人きりじゃないけどデパートも楽しみにしてたのに結局来なかったしさ……メアリーさん達は拓志と2人で行動したりするのに私はあまりないし、たまにはいいでしょ?」
「もちろん構わないぞ、好きなところへ行こう。
あ、ただ俺を着せ替え人形にするのはやめてくれると助かる。」
この間カタリナにやられて滅茶苦茶しんどかったからな。
「男の人を着せ替える趣味は無いし、服なんて外に出て恥ずかしくなければそれでいいわ。
それよりやりたいことがあるのよ、少しでも早く出発したいから急いでウーテさんを探さなきゃ、行くわよ!」
そう言って走り出していく流澪、デートだって言ったのになんでウーテを探すんだ?
それだとデートにならない気がするけど、何か頼みたいことがあるんだろう。
何をしたいかわからないまま俺は流澪を追いかける。
ところでウーテはどこに居るんだろう、そもそもこの事を知ってるのだろうか……哨戒に行ってたらしばらく帰って来ないけど。
ちょっと不安。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます