第4話 別視点幕間:虎の魔物はこう懐く。

ワガハイはデモンタイガー。


他の種族からはそう呼ばれている。


この辺では恐れられてる種族だ。


人間はもちろん、魔族だってワガハイを見たら逃げる。


最近は見ないけど。


現在縄張りである森を巡回中。


ついでにご飯も探している。


そこに、ちょうどよくオークを発見。


オークに向かって飛び出していく、いただきまーす。


するとオークも珍しく向かってくる。


なんでだ?いつもはワガハイを見ると逃げていくのに。


珍しいことだが、力の差はワガハイが圧倒的上。


サクっと倒して食べさせてもらおう。


ん?


なんだこのズドドドドっていう地鳴りは。


どうやらこのオーク、近くにあるダンジョンから集団暴走スタンピードしてきたオークの集団から前に出すぎた1匹だったらしい。


とんでもない数が倒したオークの後ろから現れた。


圧倒的数の有利を理解してるのか、ワガハイを見ても逃げない。


どうりでさっきの1匹も逃げなかったわけだ。


簡単に見積もって3000匹以上。


絶対もっと居る。


ダンジョンから出てきたからか、体の大きな個体は武器も持っているのが厄介だ。


ちょっと、いやかなり絶望。


でもワガハイ頑張った。


いくらワガハイのほうが強くても、数の有利で何度も押し負けた。


けどガムシャラに押し返した。


なんとか残り一体、というところまで倒したがワガハイの体力もほぼ限界。


向こうは最後尾にいたのかほぼ無傷。


しかも剣持ち。


ワガハイもここで最期か、と諦めかけたその時だった。


泉のほうから、魔力を使用した流れを感じる。


このオークさえ何とかしてくれれば生き残れるかもしれない。


先にワガハイが倒される可能性もあるが、現状で諦めるよりマシだ。


一縷の望みにかけて、最後の力を振り絞りその方向へ走り出す。


オークは……もちろん来るよね。




魔力の流れを感じた場所へ近づくと家が見える。


え、なんでこんなところに家?


この森だいぶ危ないところなんだけど。


家を建てるような種族がこの森に住むとは思えない。


混乱していると家の前で完全に追いつかれ、何もなければワガハイの負けが濃厚な戦闘に。


すると家の中からすごい間抜けな声が聞こえた。


この家の住人が中に居る。


だがあんな間抜けな声を出すなら大した力はないかもしれない。


でもここに家を建てる種族なら知性も力もきっとあるはず。


助けて、お願い。


そう思っていた瞬間、魔力を感じたと同時に目の前のオークが肉と骨と内臓になった。


剣は使い手を失い地面に落下。


……。


え、なんで?


啞然となる。


声のした方向を見ると人間と目が合った。


すると何かをワガハイめがけて振りまいてきた。


何をする!やめろ!


そう思った矢先、全身の傷が無くなった。


え、嘘?


何をした?


そんな薬あったっけ?


というか人間や魔族の使う上級魔法でも、瀕死の傷を一瞬では治せないはず。


すごすぎない?


ここに来てビックリしか起きてないんだけど。


ビックリしすぎて人間を再び見つめる。


色々考えることはあるけど、まずは腹ごしらえ。


食べて休んで、体力回復しなきゃ。


まずは内臓から。


いただきまーす。


肉より先に内臓から食べれるのはいいね、ワガハイ内臓が好き。


うん、美味しい。


お腹が空いてたのもあってすぐに無くなってしまった。


お肉も食べよう。


薄くなってて食べにくい、あの人間の魔法かな?


…ん?


オークの肉ってこんな美味しかったっけ?


めちゃくちゃ美味しいんだけど、今までで一番美味しい。


この味もあの人間が何かしたのかな。


つくづくすごい、飼ってくれないかな。


人間にも肉を持っていこう、助けてくれたからね。


人間は少し考えて肉を受け取った。


もっと持ってくるから待ってて。


その後人間は、そのあたりの木から木を割ったものと、細長い枝のようなものを作り出した。


ん?


今何したの?


魔力は感じた、でも魔力だけでそんなこと出来る種族見たことないんだけど?


細長いものに肉を刺し終えると、火で肉を焼き始めた。


傷も回復して腹ごしらえも済んだが、虎生最大の戦闘で疲弊していたので休みたかった。


身体も冷えていたので火に当たらせてもらおう。


この人間はワガハイを襲わない、そんな気がする。


あったかーい。


あ、人間の食事が終わった。


泉の方向に向かおうとしている、ワガハイも水飲みたい。


水を飲み終えると、また人間が道具を木から作り出し、枯れ葉を集め始めた。


ワガハイの寝床?


そこまでしてくれるの?


飼われちゃうよ?


というか、飼ってください。


ワガハイより絶対強いもん、長い物には巻かれたい。


お肉美味しくしてくれるし。


仲間と会えたら教えてあげよう。


皆元気かな?


おや、枯れ葉を集め終えたみたい。


ならワガハイも……。


入れない。


この扉狭くて頭しか通らない。


人間、助けて。


そう思って見ていると、扉が2枚になった。


これでワガハイも通れる。


やっぱりこの人間はすごい、一瞬で建物を改造するなんて。


いや、もうご主人。


飼われるって決めたから。


ご主人すごい。


ご主人、一緒に寝よう!

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