第41話 グレーテが無事元気になった。

魔族領からはるばる単身でこちらに来て、村に流れ着いたグレーテ。


ドラゴン族とデモンタイガーを見て、安心したところに恐怖が来たのか気絶してしまった。


今は俺の家で寝かせている、とりあえず少し長めに住むし家を建てる場所の整地を済ませておくか。


想像錬金術イマジンアルケミーで一瞬だけど。


しかし魔族領の情報と取っ掛かりが出来たのは非常に大きい、起きたら無理のない範囲で色々聞かなきゃな。


海があるのか、漁業をしているか……技術者も向こうの経済が壊れない範囲で食料を融通して引き込みたい。


しかしギルドがあると言っていたな、依頼というなら報酬がある……魔族領には通貨が存在している可能性があるな。


なら商人も居るだろう……食料を売りに出して技術者を雇うのもいいな。


こちらは通貨を求めてないし、物々交換が出来れば一番早いけどな。


まぁそこはグレーテに話を聞いて、おいおい決めればいいだろう。


勝手に家を作ってもいいけど、本人のリクエストも聞いたほうがいいから起きるまで待つか。




待ってる間にメアリーが裁縫から帰ってきた。


「ただいま帰りました……あら、魔族の方ですか?」


「あぁ、衰弱してて食堂でご飯を食べたら回復したんだが、ドラゴンとトラを見て気絶しちゃってな……。」


メアリーは苦い顔で「それは気絶しますよ……。」とつぶやいた。


まぁ山越えがどれほどきついかわからないが、このあたりの魔物に苦戦しているようだし畏怖の象徴が歩いてきたら気絶もするか……。


「うぅーん……。」


グレーテが唸りながら目を少し開ける。


「お、気が付いたか。」


「はっ!

 すみません、何か怖いものを見て気絶してしまったようで……村は大丈夫ですか!?」


何を見たか記憶から消えるほど怖かったのか、村は大丈夫だ。


「そうですか、よかったです。」とグレーテは笑顔で返してくる、あの2種族に村は守られているんだぞ。


「動けるくらい体調が戻ったら、グレーテの住む家の要望を教えてくれ。

 建てる場所の整地は終わってるから、教えてくれたらすぐに作るから。」


グレーテは「えっ、そんな長い間気を失っていたのですか!?」と驚くと同時に慌て始めた。


すまん、想像錬金術イマジンアルケミーを知らないならそうなるよな。


「俺のスキルで整地や建築は一瞬で終わるんだ、驚かせて悪かった。」


「そうなんですね、建築系のスキルなんて聞いたことがないですがそういうのもあるんですね。」


建築だけじゃないけど、まぁ説明は後でいいだろう。


グレーテからある程度要望を聞く、遠慮はしなくていいと伝えてるが聞く限りはほぼ最低限の住居だな。


要望を聞けば後は多少良くしても嫌な思いはしないだろう、と思いグレーテの家の建設予定地に想像錬金術イマジンアルケミーで家を建てる。


「よし、出来たぞ。」


「開様、グレーテさんは気絶しました。」


様子を見に来たメアリーからツッコミが入る。


もう一度俺の家に運び、寝かせてる間にケンタウロス族のところへ寝具と着替えを貰いに行く。


グレーテの家へ運んでくれるらしい、助かるよ。




ここなら問題ないだろうというところへ寝具を置き、着替えをタンスに入れてグレーテの家の準備は完了。


「はっ……すみません。

 気を失ってたみたいで……この村に私の家が一瞬で出来るという有り得ない夢を見ていましたよ。」


「現実ですよ、グレーテさん。」


メアリーがグレーテの顔を覗き込み、笑顔で言うと「ひゃぁぁぁっ!」と可愛らしい声を上げて驚く。


「いいリアクションで驚いてくれて楽しいですね……。」とメアリーがポツリとつぶやく。


メアリー、お前も結構いいリアクションしてるぞ?


「とりあえず家は完成した、寝具と着替えも準備してるから今からでも使えるぞ。

 何か不満があったら言ってくれ、可能な限り対応するからな。」


「えぇぇ……魔族領よりすごい快適どころの騒ぎじゃないんですがホントに未開の地なんですかここ……死地だと思って覚悟してましたが。

 いや実際魔族領と比べ物にならないくらい魔物が強いんですけどね。」


「そうなんですね、まぁ未開の地という名も魔族領から来た冒険者が遺言で残したという言い伝えがあるくらいなので、魔族領のほうが過ごしやすいのは想像してましたが、魔物も弱いとは思ってませんでした。」


グレーテは「いや、この村のほうが魔族領の首都よりご飯も美味しくて快適です!」と食い気味に返した。


「仕方ありません、この村は本当に快適ですから。

 この村にたどり着くまでに苦労したと思います、私も魔族領の冒険者が生きた姿を見るのは初めてですから、ゆっくり休んで話を聞かせてくださいね。」


メアリーは嬉しそうに返事をした。


「ありがとうございます、こちらこそお願いしますね!」


メアリーは「いえいえ、では私はお風呂を頂いてきますね。」と言って家を出る。


また一人で出て……メアリー自身やお腹の子に何かあったらどうするんだ。


グレーテに視線をやると、すごい申し訳なさそうな表情でこちらを見ていた。


「どうしたんだ?」


「いえ、その……メアリーさんがお風呂に行くと言われてて、聞いたことない単語ですが着替えを持っていってたということは水浴びですよね?

 ここ最近満足に体を洗えてなかったので、私も行きたいなぁと……。」


なんだ、そんなことか。


というかこの世界、お風呂という概念がないんだな……氷の季節の水浴びとか地獄だろうに。


「構わないぞ、グレーテの家に着替えも置いてある。

 水浴びと違ってお湯を使ってるから体も温まるし、リラックス出来るから入るといい。」


俺がそう言うと、一気に笑顔になり「ありがとうございます!」と一礼して着替えを取りに飛び出していった。


さて、帰ってきたらグレーテは何が出来るか聞いておかないとな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る