第40話 別視点幕間:カタリナの心境。

私はカタリナ。


少し前にプラインエルフ族の里から、プラインエルフ族の魔術が欲しくて移住を勧めて来たのでどういう村かを報告するために使者として来てる。


今は食堂でご飯を食べてるわ。


稔の季節が少し過ぎるまでとおばあ様は言ってたけど、そんなにかからず結果は出たんだけどね。


うん、快適すぎる。


ご飯は美味しい上に食糧難じゃないし、他種族の技術が上手く合わさって生活が潤ってるし、警備の戦力も過剰過ぎるくらいにある。


何よドラゴン族が住んでるって、畏怖の対象と肩を並べてご飯食べるなんて思うわけないじゃない。


しかもどんどんおかわりしても、それに対応してるし……この村すごすぎるわ。


あ、私もおかわりください、ご飯とグレースディアーのお肉を大盛りで。


こんな美味しいご飯食べたの初めてだから、つい沢山食べちゃうわ。


太りすぎないようにしなきゃね……。


肉は村に作られたダンジョンから、野菜や穀物は開様が神から賜ったスキル……想像錬金術イマジンアルケミーで育てて村の皆で収穫。


で、私が生活魔術で保存。


その間ウェアウルフ族とケンタウロス族で村の門を警備、ドラゴン族が空から哨戒。


うん、開様がいる限り安泰だからこの近くに住む種族はすべてこの村に住むべきよ。


プラインエルフ族がもっと来てくれたら生活魔術の水準も上げれるはずだから、もっと快適になるわね。


何とか足りてるけど、魔力より移動の労力が少ししんどい。


そう思ってるとデモンタイガーのレオ様がこちらを見ている、心でも読めるのかしら。


「乗ってく?」みたいな顔されても困る、大人しいとかわいいけどデモンタイガーも畏怖の存在だから!


大丈夫よー、と言いながら頭をなでると満足した顔で去っていった。


かわいいなぁ、この前開様に怒られてからヤンチャしなくなったから子どもたちには少し不評らしいけど。


まぁ、危ないことはしないほうがいいわよね。


「カタリナさん、デモンタイガーの3匹によく懐かれてますね。」


一緒に食事していたドラゴン族からふとそう言われる。


「そうなのかしら?

 他の皆には撫でられに頭を出したりしないの?」


「自分から行くのは村長・メアリーさん・ラウラさん以外に見たことないですよ?」


そうだったのね、自分がされてるから他の皆にもしてるのかと思ってたわ。


ちょっと嬉しい。




食事が終わって門の周りから落ち葉やゴミを生活魔術で集めに行く。


近くが森だから、定期的にしておかないと結構な量になっちゃうからね。


後は警備の一部が所望している骨付き肉の骨も一緒に回収、骨がついてるだけなのになぜか美味しく見えちゃう……今度作ってもらおう。


一通り終わって掃除のルートを回ろうとすると、警備の人が「あれはなんだ?」と声をあげた。


振り返ってみてみると、身なりも体もボロボロで衰弱しきっている人がフラフラしながら村に向かってきている。


……魔族かしらね?


未開の地に住む種族には見えないわ。


「大丈夫か!?」と警備の人が駆け寄っていくと、「何か……食べ物を恵んでくれないかしら……。」とか細い声で訴えてきた。


うん、里のピンチとかなら食べ物より先に力を借りようとするはず。


やはり魔族領からの冒険者ね、単身で女性、しかも軽装……よく山越えに成功したわね。


まぁこんな推測は後でいいわ、今はこの人を助けないと。


「私は開様を呼んでくるから、あなたはその人を食堂へ連れて行ってあげて。

 衰弱してるから消化にいいもの、食べやすいものをドワーフ族に頼んで作ってもらうといいわ。」


私がそう言うと、警備の人が肩を貸して食堂へゆっくりと連れて行く。


私は哨戒をしているドラゴン族に声をかけ、一時的に門の警備をしてもらうよう頼み、開様の家へ向かう。


道すがらメアリーに会って少し話すと、気晴らしに裁縫を習いに行くらしい。


昔から思うと似合わないけど、幸せそうで何よりだわ。


思えば手先は器用だし頭もいいから、裁縫も覚えれば難なくこなせそうよねあの子。


そんなことを考えながら歩いてると、開様の家についた。


……さっきメアリーに会ったのでそのことで少し話が逸れてしまったわ。


しれっと妻に立候補してみたけど、鈍感なのか堅物なのかよくわからないわね。


少なくとも自分の欲望をぶつける人ではないと分かったので全然良し、ウーテちゃんと一緒にメアリーのところに相談に行かなきゃ。


ウーテちゃんは開様が近くに居ると顔を少し赤くしてチラチラ見てるから可愛い。


幼馴染のクルト君がラウラを妻に向かえてるから、気になる異性を意識してるのかしらね。


閑話休題。


開様に遭難者が来たことを伝えて一緒に食堂へ行くと、卵粥とスープをゆっくり食べてさっきより体調が良くなってる魔族が座っていた。


私たちが来たことに気づくと、立って深々と頭を下げた。


「助けて頂いた上に食事まで恵んで頂いてありがとうございました。

 私の名はグレーテ、見ての通り魔族でございます……。」


未開の地に生きる理性ある生き物を見て、ここには魔族が居ないことを悟ったのだろう、どういう扱いになるか不安そうに体を震わせていた。


チラッと村長に目をやると、子どものように目をキラキラさせている村長の顔があった。


え、なにどうしたの?


「俺の名は開 拓志、この村の村長をしている。

 いずれ魔族領に行きたかったから、ここで魔族と繋がりが持てたことを嬉しく思うよ!

 傷が癒えるまでと言わず、俺たちが魔族領に行くまでゆっくりしていってくれないか?」


え、そうだったの?


グレーテと名乗った魔族も覚悟していた結末と全然違ったのか、困ったような嬉しいような表情で目をパチクリさせている。


というか開様、向こうの意思を確認せずグイグイ行くのね。


魔族領に気になるものがあるのかしら?


「魔族領の冒険者ギルドからの依頼で、この地にどんな魔物が住んでいてどんな生物が住んでるのかを調査しに来たんです……正直この村に助けられるまで死を覚悟してました。

 依頼の期日は無制限なので、証人になっていただけるなら魔族領を案内いたしますよ?」


村長のガッツポーズがすごい。


「ありがとうグレーテ、家も用意するからゆっくりしていってくれ。

 稔の季節を少し過ぎればプラインエルフ族が移住してくる、そこから氷の季節への準備をするから、魔族領へ行くのは花の季節になってからになるが大丈夫か?」


グレーテは「大丈夫です、長くお世話になるので村のお仕事を手伝いますよ。」と快諾。


よろしくね、グレーテ。


その後、食堂を出るとドラゴン族とデモンタイガーが並んでこちらに歩いてきてグレーテは固まってしまった。


大丈夫?


……気絶してるわね、一旦開様の家に運ぶわよ。


そう言って開様と二人でグレーテを家へ運んだ。

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