第329話 流澪も無事だったので、神としてやれることを探してみた。

「村長、ポーションだ!」


「ありがとうオスカー!」


物凄い早さでポーションを持ってきてくれたオスカーからそれを受け取り、流澪の口に注ごうとするが……ここまで苦しいと飲んでくれないかもしれないな。


そう思い俺はポーションを口に含んで、流澪に口移しでポーションを飲ませる。


咳き込んで何度か戻って来たが、最後には全部のポーションを飲んでくれた……とりあえず安心かな?


苦しんだ状態もかなり落ち着いているし、後は家で安静にさせておくか。


「シモーネ、流澪は大丈夫そうか?」


「私が逆にそれを聞きたいわ、流澪さんの体は生命活動を行っているの?」


え……どういうことだ?


「呼吸はしてるし脈もある、今は意識が無いけどそれ以外は非常に落ち着いてるし生きてると思うんだけど。」


「それなら流澪さんは相当無茶をしたのね。

 よっぽど村長と離れ離れになるのが嫌だったのかしら――流澪さんの生命力を視ることが出来なくなってるわ。

 ポーションを飲むまでは生命力が無くなっては回復しての繰り返しで……なんて伝えたらいいか分からなかったわよ。」


流澪……自分の寿命を切ったな!?


まったく危ないことをする、何かしら警告は出なかったのだろうか。


後で元気になったら聞いてみるとしよう。


「さて、とりあえずこれで解散にしよう。

 皆は戻って仕事、エルケは流澪に付いててやってくれ。」


「開様はどちらに行かれるんですか?」


「さっさとこの世界にぶつかる星の処理をしてくる。

 衝突するのは稔の季節の前って言ってたしな、近くに来て他の被害が出る前にさっさと解決したほうがいいだろ?」


「分かりました、気を付けてくださいね?」


「全く実感はないけど神になったし大丈夫だろう。

 それじゃ行ってくるよ。」


俺はメアリーに外出の挨拶をして宇宙へと飛び立った――そういえばこの世界に来て見送られるのって初めてかもしれない。


ちょっと新鮮。




気付けば俺は宇宙に立っている、思えば普通に飛んだりワープしたりしてたけど違和感無かったな。


神にとってはこれくらい造作もないという事なのだろうか、そのあたりの感覚が神よりになるのは少し寂しい。


俺自身は神になったという実感が無いのに、体だけ対応しないでほしいな。


そういえば稔の季節に星が衝突するとは言ってたけど、どこから来るか聞いてなかったっけ。


念を送れば会話出来ると言ってたな……試してみるか。


「オホヒルメノムチ、ちょっといいか?」


「さっき別れたとこじゃん、どうしたのさ?」


「衝突する星をさっさと処理しようと宇宙に来たんだけど、どこから来るか全然分かんなくって。

 どこに行けばいいんだ?」


「無計画で宇宙に飛び出す君を尊敬するよ、慣れないと怖いと思うんだけどね。

 それと宇宙って方角も何も無いから説明も出来ない、こうしている間にも宇宙は動いているからね。

 あくまで僕の能力と星の住民の能力で星がぶつかるのを観測しただけ、それがどこから来るかは分からないのさ。」


思ったより隕石って厄介だな……結果だけ分かってるけど方向までは分からないってことか。


宇宙についてなんて勉強すらした事ないから勝手が分からない、とりあえず今は何も出来ないという事は分かった。


「分かった、ありがとう。

 今日の所は帰るとするよ。」


「僕も何か分かれば連絡してあげるから。

 まだ次の星を担当するまで時間があるし。」


「助かる、次会った時は殴らないでおくよ。」


「出来ればもう殴らないでほしいな?」


俺はオホヒルメノムチと念話で軽口を叩きながら住んでいた星へ戻る――そういえばこの星の名前って何だろう?


まだ命名されてないなら俺が付けてもいいのかな、今度オホヒルメノムチに聞いてみるか。




「村長、おかえりなさい。」


「ただいまエルケ、流澪の様子はどうだ?」


「もう起きてクリーンエネルギー機構の研究所へ走っていってしまいました。

 それと相談なのですが……よろしいですか?」


「どうしたんだ?」


「私も不死になって未来永劫村長の傍に居たいです。」


俺としては皆には生命の営みを全うして寿命を迎えて幸せに逝ってほしいが……妻達と離れたくないという思いは俺にもある。


俺はこれから数えきれない出会いと別れを繰り返すだろうし、変わらぬパートナーが何人か居ると俺の精神は正常に保てる気がする。


「エルケの気持ちは分かった、これに関しては他の妻の意見も聞かないとな。

 流澪は自分で不死になったけど……あれはほぼ事故みたいなものだし。」


「分かりました、では明日話し合いを開くように皆に伝えてきますね!」


そう言ってエルケは猛ダッシュで家を飛び出していった、神になっても反応出来ない速さだったんだけど。


もしかして身体能力自体は人間の頃と変わってないのだろうか、思えばオホヒルメノムチは普通に殴れたし――恐らく戦闘になれば村の住民が勝ちそうだ。


ドリアードの力を借りて身体能力を限界まで向上させれば勝てそうだけど、流石にそこまで大人げない真似はしない。


魔力が無制限になったようなものだし、どれくらい向上するか想像もつかない。


とりあえず俺は空を飛びながら村の見回りをするとしようか、飛べるのが分かっただけでもすごい収穫だし。


ドラゴン族とハーピー族を脅かさないように気を付けないとだけど。

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