第376話 偵察部隊を見送って子ども達とカタリナと俺で過ごしてた後、とんでもないトラブルが起きた。

偵察部隊がダンジョンへ出発したのを見送って広場で寝そべっている。


隣にはカール・ペトラ・ハンナの3人、全員スヤスヤと寝息を立てているけど。


「子どもって元気ねぇ……というか体力配分とか考えてないから常に全力なんだろうけど。」


子ども達は俺に構ってほしそうだったが、流石に3人一気には見ることが出来ないのでカタリナに応援を頼んでいた。


結果、カタリナはへとへとになっている。


俺もだけど。


「元気じゃないよりいいさ。

 それよりいきなり声をかけたのに引き受けて助かったよ、忙しくなかったか?」


「大丈夫よ、クリーンエネルギー機構は私が出来ることが無くなったし。

 今は流澪ちゃんとクズノハさん、それにドワーフ族とダークエルフ族でどうすれば運用に足りる静音化が出来るか研究してるわ。

 特にクズノハさんは張り切ってるわよ、もうすぐ魔族領へ行っちゃうから最後の仕事だって。」


そうか、次の稔の季節には魔王の所へ行くんだよな。


少し寂しいが本人も望んだ事だし、笑顔で送り出してやらないと。


だが式典ではこの前のような投げっぱなし演説はしないようにだけ釘を刺しておかなければ……もうあんなことはごめんだ。


そういえば、人間領の式典ってどうなってるんだろう。


リッカが帰ってきたら聞いてみるとするか。


閑話休題。


「それに、お腹の子と上手く遊んでやる練習にもなるかなって。

 動けるうちに色々知っておいた方がいいでしょ?」


「それもそうだけど、無理しすぎないでくれよ。」


「分かってるわよ、でも最近は悪阻も無くなったから安定してるのよね。

 出産予定日までまだ日にちはあるし、平気平気。」


それならいいけどな。


まあ妊娠が発覚したのが前の稔の季節だから、陽の季節に入る手前か入ったくらいに産まれるだろう。


母子ともに健康であってくれると嬉しい、妊娠発覚時は大変だったから。


「さて、3人とも寝たし私もちょっと奥様方の所に行って母親についての座学を受けてくることにするわ。」


「最近そんな事やってるのか?」


「そうみたいよ、少し前から開始したみたいだから私は最初から受講してる。

 やることや準備すること、子どもとの接し方……色々教えてくれてタメになるわ。」


「父親についての座学もしてくれたらいいのに。」


「母親の座学だと多くの父親には最大限のおもてなしを――って習ったわ。

 そういうの欲しい?」


カタリナはいたずらっぽく笑いながら俺に問いかけてきた。


「いつも通りで大丈夫だ、改まってそういう事をされると照れくさい。」


それに俺はそんなことをされるほど働いてないからな、想像錬金術イマジンアルケミーが必要な場面があれば使っているだけで。


後は重要な決定と書類仕事、それが無ければ休みのようなものだ。


「ふふっ、そう言うと思った。」


「でもこの村は女性も多く働いているだろう?

 女性だけ男性をおもてなしするのは不公平じゃないのか?」


「あぁ、この村の外での常識のようなものよ。

 普通の住民でも外の人と話すことがあるだろうし、知識としてってだけ――村の住民は奥様方の託児所を使って働いてくださいねですって。

 あの人達、今の2倍子どもが見えても余裕で面倒見ますよって言い切ったから本当に頼もしいわ。」


それは本当に頼もしい、ある意味この村最強かもしれないな。


オスカーですら逆らえないんじゃないか?


「それじゃ行ってくるわね。

 夕方には帰ってくると思うから、その子達を村長だけで見てるっていうのは奥様方に伝えておくわ。」


「それは助かるよ、よろしく。

 じゃあ、いってらっしゃい。」


子ども3人がいっぺんに起きると俺だけじゃ面倒見切れない可能性があるからな。


さっきまで一緒に世話をしてたから察してくれたのだろう。


父親として頼りなく見られてるのかもしれないけど……実際頼りがいがあるわけではないからちょっと悲しい。


カタリナを見送り子ども達の寝顔を見ながら俺も寝そべっていると、少し離れたところで誰かの叫び声が聞こえる。


どうしたんだ、と思い声の方向に視線をやると誰かがうずくまっているのが見えた。


体調不良者だろうか、とりあえずポーションを持っていってやりたいが……子ども達から離れるのもな。


そうだ、ドリアードに少し見ててもらおう。


俺は足元に生えている草に触れてドリアードに念話を送り、許可をもらったので召喚。


「それじゃよろしくな。」


「任せておきなさい、これでも世界の生命をたくさん守って来たんだから。」


確かに、これ以上ないくらい頼れる存在だった。


さて、俺はポーションを取りに行って渡してくるとするか。




瞬間移動で倉庫に行き、ポーションを取って瞬間移動でさっきうずくまっていた人のところへ。


「大丈夫か、これを飲め――ってカタリナ!?」


ポーションを渡そうとすると、うずくまって苦しそうにしているのがカタリナなのに気付く。


お腹を押さえてるし……子どもに何かあったのか!?


「カタリナの容態は!?」


近くに居たケンタウロス族に聞く。


「私も気づいた時にはこの状態でして……。

話しかけても答えられないくらい苦しいらしく……。」


相当痛いか苦しいんだろう……何も無ければいいんだが。


「大丈夫か、お腹が痛いのか?」


俺の問いにコクコクと首を振るカタリナ――まさか流産……?


でもそんなストレスを感じている様子もなかったし、体調が悪いような素振りはさっき見せなかったよな。


まさかさっきの運動が……でも無理はしてないって言ってたし。


それが嘘だったらとも考えたが、カタリナ自身待ちに待った子どもだしそんな噓をついてまで無理はしないだろう。


また何か病気だろうか、と思ったらカタリナが「あっ。」と何かに気付いた声を出す。


「喋れるようになったか、どうしたんだ?」


「多分、破水したわ……。」


えっ。


予定日、まだ先だったよな?


――とにかく、やれることをやるしかない。


「ケンタウロス族は布団とタオル、それにお湯の用意を!

 俺はカタリナを奥様方のところへ連れて行く!」


「分かりました!」


俺はカタリナを抱きかかえて瞬間移動で奥様方のところへ。


話を聞いた奥様方は座学を急遽中止し、カタリナの対応を全力でしてくれることに。


施設は一気に慌しくなった、少し申し訳ないが頼れるのはここしかない。


だがかなりの早産だ、色々覚悟しないとな……。

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