第294話 メアリーの無事を確認していたら大事なことを思い出した。

「ご心配をおかけしました……。」


「本当に心配したぞ、だが無事でよかった。」


俺は村について部隊を解散した後、家でメアリーを抱きしめる。


見た感じどこも怪我をしてなさそうだし健康そのものだが、妻が誘拐されるなんて思いもしなかったから色々ベタベタと触りながら確認してしまう。


メアリーはその度恥ずかしそうにしているけど。


違うからな、変な考えを持ってしているわけじゃないから。


本当に五体満足のようなので一安心、メアリーには1日ゆっくりしてくれと伝えたが……。


「開様と行動したいです、ダメですか?」


「それはいいけど、何も無いとは言え精神的に辛かっただろうし休んだ方がいいんじゃないか?」


「絶対助かる自信がありましたし、開様と村の皆様が来るという自信がありましたのでそこまで負担は無かったですよ。

 それより寂しかったというのが大きいので。」


肝っ玉が太いと言うか何というか、そういえばパーン族にかけられてた拘束具を自力で解いてストーンカを討伐したんだっけ。


……ストーンカを討伐?


「なぁメアリー、オスカーがストーンカは美味いって言ってなかったか?」


「言ってました……あ!」


メアリーも気づいたらしい、ストーンカを討伐したという事は死体がもちろんある。


「行くぞメアリー、今日はストーンカの肉で宴会だ。」


「分かりました、私はシュテフィさんを連れてきます!

 開様はウーテさんとカタリナさんに理由を話して、サキュバス・インキュバス族の里に繋がる転移魔法陣の前まで!」


それだけ言うとメアリーは物凄いスピードで家を出てダンジョンへ向かっていく。


急いでるのは分かるが窓から飛び出さないでほしい、ここ2階だし。


子どもが真似したら危ないからな?


俺はメアリーに言われたとおりウーテとカタリナに声をかけるとするか、ウーテは食堂に行くって言ってたっけ。


俺も小腹が空いたし、少し何かつまんでからカタリナを呼びに行くとしよう。


俺はどうするか考えたり、ストーンカの肉の味を想像したりしながら食堂へ向かった。




「すぐ行くわ、これを食べ終わったら。」


「私もそうする。

 研究施設は少しくらいほっといても大丈夫でしょ。」


食堂でウーテを見つけると、たまたま一緒になったであろうカタリナと2人で食事をしていたのでストーンカの件について説明。


それを聞いて返事をした瞬間、食べるスピードが倍くらいになったし顔が必死だ。


ちょっと怖い、楽しみだけどそんな必死になることでもないと思うぞ?


「ふー……お待たせ。

 ストーンカなんてすっごい珍しい魔物の肉、すぐに回収しなくちゃ!

 オスカーおじ様が美味しいって言ってたし楽しみ!」


「普通は見ただけで逃げ一択の魔物なんだけど、この村の感覚は狂ってるわね……メアリーも一人で討伐してるし.

 でも美味しいお肉が食べれるならそれでいいか。」


「そうだな、討伐して少し時間が経ってしまっているから急がないと。

 ウーテは移動の手助けと必要なら水を、カタリナは生活魔術で出来ることを頼む。

 それじゃ転移魔法陣で行こうか。」


食堂を出た途端ウーテは俺とカタリナを担いで転移魔法陣まで走っていく。


めっちゃ怖い、そんな肩に人間を担いで出していい速度じゃないんだけど!?


カタリナは止まってと叫びながらウーテのお尻を叩いている、俺も正直止まってほしい。


ケンタウロス族やタイガより速度は遅いが、恥ずかしいしこの体勢だと怖いから。


結局転移魔法陣に着くまで止まらなかったけどな、カタリナはまだウーテの肩をバシバシ叩いて文句を言ってる。


俺は止まったからそれでいいや。


それよりメアリーがまだだ、てっきり先に着いてると思ったんだけど。


「あれ、これ何かしら。」


ウーテが地面を見ながら何か言ったので俺も一緒に確認。


そこには『お肉が腐りそうなのでシュテフィさんと先に行ってます!』とメアリーの書置きだった。


「道理で居ないはずだ、それじゃ俺達も行くとしよう。」


「「はーい。」」


俺はもうくぐることはないと思っていた転移魔法陣をくぐる、出来るだけパーン族の里には近づかないようにしないと。


見るだけで不機嫌になってしまいそうだし。




ストーンカの死体がある場所までウーテの背に乗って移動。


空中から分かるかどうか不安だったが結構大きな体をしていたので簡単に発見、着陸しようと高度を下げてる途中にメアリーとシュテフィも発見した。


「待たせたな。」


地上に降りてメアリーとシュテフィに合流。


「私達もさっき着いたところです、シュテフィさんの能力でストーンカの時は止まっています。

 開様は箱とロープの作成をしていただいて、終わればストーンカの食肉加工をお願い出来ますか?

 周囲の警戒はしておくので。」


「分かった、任せておけ。」


俺は立ってる場所から見渡して箱とロープを量産していく、簡単な物なら現地調達して即座に加工出来るのも想像錬金術イマジンアルケミーの強みだな。


コロポックル族が居た島でも簡易拠点を作るのに役に立ったし。


俺が錬成で次々箱を作っていると、シュテフィが難しそうな顔をしているのに気づく。


「ねえ皆、ストーンカってどれくらいの頻度で見るの?」


「数十年に一度見るか見ないかじゃないですか?

 普通なら里を捨ててでも逃げるので、その後どうなってるか分からないですけど。」


どうやらストーンカについて気になることがあるらしい、俺達とは違う時代を生きてたから何か分かることがあれば助かるな。


ストーンカの生態や活動時期を知っていたら村でも警戒出来るし。


見かけたら速攻で討伐するんだろうけど。


「ストーンカって広い場所ではあまり見ないのよね、狩りをするのを嫌う種族だから。

 狭い島とかに住んでる魔物や動物を自分の血を飲ませて巨大化させて、それを持ち前の強さで狩って生きてるらしいんだけど。」


そんな事が出来るんだなと思って聞いてると、俺はふと思いついたことがある。


「シュテフィ、ストーンカって他の地域にも生息してるのか?」


「むしろ未開の地に居るのが不思議なくらいだけど。

 誰かが運んで来たんじゃないかしら?」


そんな事をすると思わないけどな……なんでだろうかと悩んでたらとあることを思い出した。


ドリアードが何か話したそうにしてたな、ちょっと呼んでみるとするか。

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