第352話 メアリーとオスカーの模擬試合に決着がついた。
メアリーとオスカーが模擬試合を始めて数分。
メアリーは自分の周囲に風の結界を纏い、矢筒の中にあった矢を全て空中に展開している。
オスカーも何度か爆炎を周囲に広げて矢を無効化しようとしたが、その度にメアリーが矢ではなく風のみでオスカーに攻撃を仕掛けているので下手には動けない様子だ。
オスカーも時たまインファイトも仕掛けようとするが、オスカーに対して強烈な向かい風を放ち、動きを鈍くして距離を取るかそのまま風に乗って攻撃を仕掛けて対応するメアリー。
戦闘に関して素人の俺が見ても分かるぞ、メアリーは世界最強の生物であろうオスカーに対してかなり善戦している。
「はぇー……村長の奥さん凄いわね。」
ドリアードも感心した様子で模擬試合を観戦している、他の大精霊も手に汗握っている状態だ。
「頑張れメアリー!」
シルフも子どものように大声で歓声を送る、俺も送ってやりたいがどちらにも勝ってほしいから応援しづらい。
「やるなぁメアリー殿……やはり神にも認められる頭脳を持った者が力を手に入れるとこうなるか。」
「そんな、買い被り過ぎですよ?
それよりそろそろ勝ちを譲ってはくれませんか?」
「ワシの生涯で負けは妻以外作らぬと決めておるからそれは無理だ。
そろそろ決めさせてもらおう……!」
オスカーは巨大な火の壁を生成し、それがメアリーに向かって進んでいく。
フィールドの端から端まである壁、逃げ場が無い……オスカーの勝ちだな。
そう思っていたが、風の結界でそれを往なした直後メアリーがオスカーに向かって矢を連発で打ち込む。
「もらいました!」
全ての矢がオスカーに襲い掛かる、まさかメアリーが勝てるのか!?
「かかってくれたか。」
矢はオスカーに直撃する少し手前で一気に燃え出し消えていった。
それを見たメアリーは驚愕の表情で固まってしまう、試合を観戦している俺を含めた大精霊も驚きを隠せない。
ただ一人、イフリートを除いて。
「なるほど、不可視の炎か。」
「なんだそれは?」
「オスカー殿をよく見てみるがいい、周りの景色が揺らめいてないか?」
イフリートにそう言われてオスカーの周りをよく見てみると、確かに景色が揺らめいている。
「こればかりは火や炎に深い知識がないと知らぬことだ。
いくらメアリー殿が聡明と言っても知らぬ事は分からなかったであろう?」
オスカーはそう言いながら瞬時にメアリーとの距離を詰め、首元で手刀の構えをした。
「私の……負けです。」
「良かった、何とか気絶させずに試合を終わらせれたか。
村長の奥方を傷つけたり気絶させたりするなど、畏れ多くてやりづらかったから助かったわい。」
まさか俺に嫌な思いをさせないようメアリーを気遣った上で試合に臨んでいたのか?
しかもそれを自分の勝利に繋げたうえで実行するなんて……それを聞いたメアリーはかなりしょんぼりしてるし。
オスカーは人間の姿でメアリーを担ぎ、観客席まで飛んできた。
膂力だけでそんな距離が飛べるって……やっぱり戦闘でオスカーに勝つことは無理なんじゃないかなぁ。
「完敗です、勝てると思ったんですがねぇ。」
「そう簡単に最強の座を渡すわけにもいかぬさ。
もし負けたなんて事があればシモーネとキュウビになんと言われるか……。」
2人とも強さにこだわってる節があるからな、オスカーが強いからこそ夫婦の契りを交わしてるのもあるんだろうし。
「んぅぅ……はっ!
私オスカーおじ様に負けて……それから!?」
ふとウーテの意識が戻って少しびっくりしてしまう。
俺の膝枕で寝てたからな。
「そのまま寝てたよ、そしてメアリーとオスカーの模擬試合も今終わった。
オスカーの勝ちだ。」
「あぁぁぁ……見たかったぁぁぁ……。」
ウーテは心底残念そうに観客席の床へ溶けていった、ばっちいから床に寝そべるのはやめなさい。
「ウーテさん、私との試合はどうしますか?」
「やるぅ……。」
やるのかよ。
「でもちょっと立ち直らせて。
正確にはお腹空いたから何か食べさせて。」
食べるといってもなぁ……何も持ってきてないぞ。
「ふむ、ちと待っておれ。」
オスカーがそう言うと、空中へ飛び上がったと思ったらドラゴンの姿に変身。
そのまま飛び立っていってしまった。
何かアテがあるのだろうか?
オスカーが飛び立って10分程経過。
めそめそしてるウーテを慰めるメアリー……本当にこの2人が模擬試合をやるのか?
「あ、オスカーさんが戻って来たよ!」
空を飛んで遊んでいたシルフが空を指差して叫ぶ。
その方向へ目をやると、何かを咥えたオスカーが帰って来ているのが見えた……あれはなんだ?
そしてコロッセオのフィールドへ着陸、口からそれを離すと人間の姿へ戻った。
「みんな、ユニコーンの肉が手に入ったから食うぞー!」
ユニコーン!?
そんな神聖な生き物食べて……というか殺して大丈夫だったのか!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます