第247話 話し合いで俺とドリアードが居なくなっても大丈夫だと説明した。

「すまない、待たせたな。」


俺は集計した紙を持って広場へ行き、話し合いへ合流する。


「ほほかったわへー。」


物凄い口に物を頬張りながらドリアードが俺に話しかける、食堂で食事を貰ってここで食べてるとは思わなかった。


だが本人が居るなら話し合いもしやすいだろう、一応未来の心配も解決出来たとは思うが解釈違いをしていると大変だからな。


「それじゃ話し合いを続けてくれ、一区切りついたら俺から意見を出すから。」


「一応既に一区切りはついてるんですよね。

 それで一番賛成を得られた意見は、開様の寿命を延ばすという意見です。」


メアリーからとんでもない言葉が出てきて噴き出してしまう、どうして俺をどうこうしようとするんだ。


そもそもそんな方法があるとも思えない、いくらポーションや想像剣術イマジンソードプレイで健康を維持したとしても人間の体には限界がある。


「出来なくはないわよ?

 ただ人間として存在出来なくなるけど。」


俺達の話を聞いていたドリアードが食べ物を飲み込んで意見を出してきた……なんだって?


人間として存在出来なくなるのは物凄い不安だけど。


「「「「「ドリアード様、本当ですか!?」」」」」


話し合いに参加している全員がドリアードに食いつく、結構な迫力だったのか最上位の精霊なのにたじろいている。


「落ち着いて、村長の意思だってあるんだから。

 本人が人間として命を全うしたいなら、それは尊重されるべきじゃないかしら。

 あ、ダジャレじゃないわよ?」


かなり真剣な話なのにオヤジギャグを挟んでくるドリアード、皆も真剣に聞いてたのに最後の一言でため息ついちゃってるじゃないか。


「そんなあからさまにガッカリしないでよ……。

 いいわよ、皆がそんな態度するなら方法も教えないから!」


ドリアードが頬を膨らませて拗ね始める。


陽が落ちたら眠くなるし本当に子どもみたいだな、最上位の精霊なのか疑わしいまであるぞ。


そういうのはもっとこう、神々しいというか威厳があるというか……そういうイメージだったんだけど。


皆は慌てて「ごめんなさい!」と取り繕う、俺は別に知りたくないから教えてくれなくてもいいんだが。


「むむ……思ったより素直に謝るのね。

 村長の人柄ゆえ長く生きて欲しいのかしら、それとも村長のスキル目当て?」


「両方と断言しましょう、村長は少しでも永く世界に居てもらわねば困る存在になっておるのです。」


オスカーがドリアードに弁明する、そんな風に思ってくれるのは有難いけど。


「リムドブルムの貴方からその言葉が出るという事は本当なんでしょうね。

 それなら教えてもいいけど……村長の意思を先に確認するわ。

 貴方は人間で居られなくなっても長生きしたいのかしら?」


「長生きはしたい、だが人間で居られないというのは正直かなり不安だな。

 今後の生活や妻達、それに村の皆と今までと同じように接することが出来るか分からないし。

 今すぐには返事出来ない、しばらく悩ませてくれ。」


俺は本心を口にする、皆は少し残念そうな顔をするが俺の意思を汲んでくれたのか「わかりました。」と口々に返事をしてくれた。


「ありがとう。

俺も皆と少しでも長く一緒に居たいのは本当だ、そこは分かってくれよ。」


「村長の意思が確認出来たという事で、この件は保留ね。

 方法は口にしないでおくわ、そのほうが村長も安心するでしょうし。

 それより村長、未来の話について村の住民に話す事があるんじゃないかしら?」


「そうだった、とりあえず俺が人間として命を終えたとしてその対処法なんだが――」


俺はドリアードに背中を押されて解決法を皆に説明する、今はこれが分かっているだけでも充分だ。


人間をやめて長く生きることは……少し悩ませてもらうとしよう。




「なるほど、ドリアード様の別個体を顕現させれば最悪の事態は免れることが出来ると……。」


「そういうことだ、あってるよな?」


「その解釈で間違いないわよー。」


ドリアードはご飯とお酒を飲みながら幸せそうな顔で返事をする、本当に食事が好きなんだな。


「それなら狩りの成果を増やしましょう、そして内臓をタイガ様・レオ様・トラ様の分を取り分けて残りは自然の肥料として扱うことで解決出来るのでは?」


「牧場で育てている動物の糞尿も使えると思うわ、今は生活魔術で処理してもらってるけど集めて肥料に回せるはず。」


「それより食糧用と肥料用と成果を分けて狩りをすればよいのでは?

 それなら今までより狩りを多くするだけで手間が減るかと思います。」


「私達だけじゃなくて、魔族領と人間領にも通達を送って同じ活動をしてもらったほうがいいかも?

 自然は世界のありとあらゆるところにあるんだし。」


俺が考えていた事やそうじゃない事まで、多種多様な意見が飛び交う。


やはりこういう話し合いは大事だ、俺の一存で決めるよりずっと効率がいい意見が出るし。


ドリアードは食事の手を止めて、目をキラキラさせながら頷いているので皆の意見は正解なんだろう。


「いい住民を持ったわね、村長。」


ドリアードが俺を肘でつつきながら話しかけてくる。


「本当にな、俺はこの世界に来て本当に恵まれているよ。」


「最初はここに一人で飛ばされて野垂れ死ぬと思ってたのに、短い期間でよくここまで村を成長させたものだわ。

 デモンタイガーが懐いてくれたのは本当に運が良かったわね。」


「俺もそう思……ってなんで俺が転移してきた状況を知ってるんだ!?」


何気なく返事をしようとしたが、見たり聞いたりしてなければ知らない情報がドリアードの口から出てきて驚いてしまう。


「そりゃあ見てたからよ。

 神様から転移者が来るって通達があったから心配で見てたのよね。」


知らないところでドリアードとは面識があったみたいだ、向こうだけの一方的なものだけど。


「ありがとう、知らないところで守られてたみたいだな。」


「村長個人には何も力を使ってないわよ、災害に関しては止めたけどね。

 ……あ、それで思い出した!

 ドラゴン族の皆、本気で力を使う時は可能なら私に言ってからしてよね!

 あれで世界の天候やらが狂ってバランス整えるの私なんだから!」


ウーテの力の暴走の時だな、まさかそんなことまでしてくれてるとは。


俺個人には何かしてないにしても、助けられてたのは確かみたいだ。


子どもみたいで最上位の精霊か疑わしいと思ったが、見てないと分からない情報を知っているしウーテが本気で力を使っても災害が起きてないところを見ると、本当にバランスを整えてくれているんだろう。


疑ってすまない、と心の中でドリアードに謝っておく。


口には出してないからな、セーフ。


少し話が逸れたが、今後の方針も決定した。


狩りの頻度を増やして食糧用の他に肥料用の家畜を狩って肥料に、牧場の家畜が出した糞尿は一時保留。


魔族領と人間領には通達をして、自然を保護する方向で動いてもらおうということになった。


もし方法が分からないといけないので、流澪がある程度簡単に出来る方法を文章にまとめてくれるらしい。


クリーンエネルギー機構の研究は大丈夫かと聞いたが、今はドワーフ族が部品の金型を作っている最中らしいので手待ちとのことだ。


……相変わらず俺のやることが無い。


いや、肥料を想像錬金術イマジンアルケミーで作って土に混ぜ込むのは仕事なんだけど……一瞬なんだよな。


まぁいいか、それより皆解散する雰囲気を出してるけどデパートのアンケートの集計の結果も話し合いたいから待ってほしい。


ドリアード、皆を誘って食堂に行こうとしないでくれ。

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