第228話 アンケートが無事完成したので回答率を上げる策を講じた。

書斎でアンケートを作っていると、誰かが書斎のドアをノックする。


「入っていいぞー。」


俺が呼びかけるとウーテが入ってきた、どうしたんだと聞くと「何してるか気になっただけ。」だそうだ。


俺が紙にアンケート内容を書いているとまじまじとそれを見つめる。


「それ何?」


「デパート利用者に答えてもらえればいいなと思うアンケートというものだ。

 良かったところや悪かったところ、改善点やその他意見なんかを聞いて今後に繋げていけるように出来ればと思ってな。」


「なるほどねー。」と言いながらウーテはじーっと俺が書いてるところを見続ける、ちょっと恥ずかしい。


「利用した時に感じた不満点とかお客がどう感じたとか、こっちに悪い印象が働きやすい質問になりすぎてないかしら?

 抽選会をするほど人気があって村・魔族領・人間領の商人全員がデパートに向けて本気を出してるのに。」


「そういう声を集めるのが目的だからな。

 俺はデパートが開店しても簡単な見回りしか出来ないし、中で対応している人達はそれで精一杯……お客全員を見えてるわけじゃない。

 だからこれを書いてもらって意見が欲しいんだ、それを参考に改善していけるし。」


問題は回答率なんだけどな、前の世界ではこんなアンケートに答えるなんて本当に時間が余っている人かそういうのが好きな人、それに見返りが用意されているから仕方なくといった3パターンくらいのものだ。


とりあえず今回はただ用意するだけして、あまりに回答率が低ければ何か考えるとしよう。


ウーテに見てもらいながら原案が完成、印刷所に持っていってデパート利用者分刷ってもらうようお願いしにいくか。




印刷所でラミア族に原案を渡してお願いする、明日にでも作り終えておきますと心強い返事がもらえた。


デパート開店まであまり日にちがないから、間に合うかどうか不安だったんだよ。


村の住民は出来ないことを出来ると言わないので安心して仕事を任せることが出来る、逆に出来ないと言われたことは滅多にないな。


仕事を上手く振り分けれてるという事にしておこう、教育施設も出来たので仕事の質が更に向上する可能性だってある。


「村長、そういえばこのアンケートというものはどこに掲示するのですか?」


「それは掲示しないよ、デパート利用者に配って書いてもらうんだ。」


ラミア族が版を準備しながら原案を読んでいる……何か悩んでる様子だがおかしいところがあっただろうか?


「これ、内容を見る限りデパートを利用し終わった後に答えてもらうんですよね?」


「もちろんだ。」


「村の住民でさえあの中で買い物すると結構疲れますよ?

魔族や人間の方々はデパート近くで荷物を抱えてへたり込んでいるのを前回も見かけましたし、答える体力が残っていますかね……。」


そんなことになっていたのか、知らなかったとは言えそれだとほとんどの人が答えないかもしれない。


ウーテは何も言わなかったが、ドラゴン族の体力と他の人の体力は明らかに違うからな。


「仕方ない……見返りを出すとしよう。

 ドワーフ族の所へ行ってくる、ラミア族はそれの印刷を続けててくれ。」


「分かりました。」


俺は印刷所を出て食堂へ、多分大丈夫だと言われるお願いだが一応許可を取っておかないとな。


俺が食堂に入って席に座らず厨房へ向かうと、何かあったのかと察したドワーフ族がこちらへやってきた。


「村長が厨房まで来るとは珍しい、どうした?」


「――というわけなんだ。

 それで回答率を上げるために、食堂でアンケートの紙を提出したら料理と飲み物を1品ずつ無料で提供したいんだが……大丈夫か?」


「その程度の人数なら構わんぞ、並んでもらってもいいし広場もあるからの。

 食材は念のため補充してもらえると助かるが。」


「それはもちろん、なら作物の錬成と収穫は明日行う。

 狩りもメアリーに伝えて多めに狩ってもらうようお願いしておくから。」


「なら問題無いの。

 その紙とやらは一度こちらで預かればいいか?」


ドワーフ族にそう言われて頼むと返事をしようとしたが、そこまで手間をかけさせていいものだろうか。


それに……ただ紙を預かるだけだが、外から持ってきたものを触って逐一手を洗っていたのではしんどいだろうし。


気にしすぎかもしれないがつい最近十日熱があったし油断はできない、誰か紙を受け取る人を配備しようか。


「いや、それは他の誰かに頼むよ。

 まだ誰になるかは分からないが、その人から受けた料理と飲み物を準備してくれればいい。

 後はいつも通りでいいから。」


「うむわかった、ではそのようにしよう。」


言葉は悪いがこれに釣られないデパート利用者は居ないだろう、どうしても早く帰りたい人以外は皆回答してここに来てくれるはずだ。


俺はそれくらい村の食事に自信がある、前の世界・魔族領・人間領と色んな食事を食べてきたがこの村に住んでるドワーフ族が作った料理が一番美味いからな。


仕事を増やして申し訳ないが、より良いデパートの運営をするために頑張ってもらおう――その分俺もしっかり働かなければ。




次の日。


俺とカタリナ、それにケンタウロス族で作物の錬成と収穫を行うため田畑に来ている。


俺は他のプラインエルフ族かラミア族に頼もうかと言ったのだが、カタリナがどうしてもやりたいということでついてきた。


クリーンエネルギー機構の研究は今デパートと教育施設の関係で休みみたいだし、時間が余っているらしい。


「妊娠してるんだから無理はするなよ?」


「まだまだ大丈夫よ、調子が悪くなったら無理せず伝えるから安心して。」


実際顔色も良く元気そうなので心配はしてないが、急に来る体調不良もあるので出来れば休んでてほしいが……あまり抑制しすぎるとストレスになるだろうし。


俺はいつも通り種を生活魔術で蒔いてもらい錬成、そのまま生活魔術で収穫――それをケンタウロス族が手早く荷車に積んで倉庫へ。


「この仕事ももっと効率化出来ないかな。」


俺がぽつりと呟くと、カタリナとケンタウロス族に驚いた顔をされた。


「これより効率化なんて無理でしょ、ただでさえ反則みたいなことしてるのよ!?」


「そうですよ、村長の想像錬金術イマジンアルケミーがあってこそこの仕事は成立しているんですから!」


早口で突っ込まれたが、俺が効率化したいのはそこじゃない。


想像錬金術イマジンアルケミーも生活魔術もこれ以上無いものなのは分かってるよ。

 俺が効率化したいのはケンタウロス族の倉庫への搬入だ、あらかじめ箱詰めしておいたら倉庫にしまう時も楽なんじゃないかと思って。

 今はあるもの全て荷車に積んで向こうで仕分けしてるだろ?」


「それはいい考えだけど、箱を積み上げるなんて不安定過ぎて逆効果なんじゃないかしら?」


「そうですね、運搬の時に注意しながら運ぶのは神経を使いますし。

仕分けもそこまで苦労しないようある程度同じ種類を積み込むようにしているので。」


2人から反論されるが、俺は前の世界で市場やスーパーの品出しを見たことがあるからな。


要はいつも使ってる荷車じゃない、積み上げても不安定じゃない箱とそれを運ぶ専用の物を作ればいいわけだ。


「また考えておくよ、もし試作品が出来たらケンタウロス族に使ってもらいたい。」


「もちろんです。」


そんな話をしながら錬成と収穫を繰り返していると、倉庫からドワーフ族が少し怒った様子で何かをこちらに叫んでいる。


よく聞くと「作りすぎじゃ、倉庫に入りきらんぞ!」と言っていた、話に夢中になって作りすぎたか。


俺達はドワーフ族に謝って片付けを始める、今度から注意しないとな……。

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