第315話 別視点幕間:エルケの心情。
私はエルケ、パーン族の長をしています。
今パーン族はかなりの転換点に立ってるのよね、一族のほとんどは未開の地の村で保護され里には囚われた一族の上位を残して誰も居ないし。
かくいう私も村で保護をされています。
災厄の集塊の真実を村の人が物凄い勢いで解明していったのには驚き。
でも私や先代――その祖先がずっとしてきたことが無駄だったという事実が分かったのと、村長に優しくされて自分を支えていた何かが切れちゃって……恥ずかしいところを見せちゃったわ。
でもそれで村長の家に住まわせてもらえてるので役得かしら、あの人に純潔を捧げてそのまま妻になりたいし。
今村長には奥様が4人おられるので、私がそこに混ざって問題があるかどうかを確認。
全員から「どんどんアプローチしていいですよ!」という回答をもらえました。
なので積極的にしていったのですが、今はダメという返答。
残念……ですが一族の問題が解決してないのは事実ですし、当然と言えば当然ですね。
村長が長という立場を忘れて休めと言われたので、その通りにしていたら一族の問題が頭から抜けてました……。
長についてからずっと地籠をしていたので、休める時は気持ちを切り替えて休むというのを徹底してたら、気持ちの切り替えが瞬時に出来る特技を習得していたのですよね。
不本意です、別に要らないし。
もっと役に立つ事を習得したかったです、村長を悩殺する体型とか。
奥様方のようなボンキュッボンな体型のほうが男性は好みでしょうし、私は経験が無いのでそういう話を聞いたという程度の知識ですけど。
私が保護された2日後、ついに上位について話し合いをする事に。
村には話し合いをする場所が無いという事でパーン族の里にある大会議堂に案内。
村にはあんなに色んな種族が居て大勢の人が暮らしているのに、話し合いをする場所が無いなんて……今までどうしてたのでしょうか。
聞かないでおきますけど。
私は村長と先に簡単な話をして、上位は生かして労働力にしたいというのは分かってますが。
村どころか世界で恐らく最強のドラゴン族、それもその長のオスカー様が上位を罰して終わらせようというように話を持っていってます。
それに他の住民の方々も同意見ですね。
村長とは言え人間ですし、ドラゴン族や他の種族がああもハッキリと意思表示をしたならそれを飲むのかと思いきや。
何かを思いついたようにする村長、まさか今の今まで上位への罰を考えてたのでしょうか。
休ませてもらっている身なのでそこまで真剣に考えてませんでしたが、結構無茶をしてたんですね。
そして私の許可が居ると、一応同種族ですし……と思い話を聞いてると長として話がしたいと言われました。
気持ちを切り替えましょう――よし、私はパーン族の長。
上位に与える罰の内容を聞くと、新発見の島の開拓と地図の作成――ここまでの戦力を持っている村の長の妻を誘拐してその程度なら慈悲深すぎる措置ですね。
私はもっと過酷な物を想像していましたが、能力を上手く活用出来る罰を探されてたそうで。
ですが逃走に関してはどう対処するのでしょうか?
私が意見を言わせてもらった後に、島の発見者である村長の妻の一人、流澪さんの意見を聞くことに。
結果は賛成、ですが私と同じく逃走に関してどうするかという意見は同じ。
そうですよね、だって逃げれますし。
そして村長から対策を聞くと監視役が上位を島で見つけれなければ追放、魔族領と人間領という場所にも通達を送り知ってる限りの場所から追放者の居場所を奪うらしいです。
見つけ出して斬首とかじゃないんですね、運が良ければ生き残れます……この村の息がかかってない場所に流れ着く必要はありますけど。
村の住民も村長の寛大な措置にびっくりしている様子。
この流れで決定しそうですが、パーン族の長としての私としては不満があります。
村で2日過ごして分かりましたが、食糧の援助や道具を貸与させれば島の開拓もかなり容易になるので罰にならないと思うんですよね。
長である私を差し置いて裕福な生活を送り、下々の者を苦しめてた上位には私個人としても恨みがありますので。
援助について聞くと、特に何もするつもりはないとのこと。
良かった、と胸を撫で下ろそうとした時――その次に続く村長の言葉に耳を疑った。
今までで最大規模の宴会に上位も参加させるというじゃないですか!
一体どういう事、と聞こうとしたんですけど村の住民の方々が物凄い形相で村長に食ってかかっていったので私は一歩引いて黙りました。
怖すぎます、特にオスカー様。
理由を聞くと脱走の確率を下げるためらしいです、確かに村の食事は滅茶苦茶美味しいですし今後食べれないとなるとかなりショックですね。
食欲を利用した平和的拘束――力で服従させるより強いかもしれません。
その後謝罪をした後に宴会に参加、そして島の開拓ということでまとまって話し合いは終了。
オスカー様が伝えに行くと言われましたが、これは私の仕事だと思いさせてもらう事に。
一人でも大丈夫なのですが、護衛としてオスカー様もついてくるみたいです。
心強い事この上ないでね、ではパーン族の長として罰を伝えに行くとしましょう。
「御子と神官、そしてそれらに使える兵の皆さん。
未開の地の村の村長の妻を誘拐した罪に対する罰を伝えに来ました。」
「長――大変ご迷惑をお掛けしました。
まさかこのような事になるとは。」
「驕りが過ぎましたね、ですがあなた達が犯した罪によって救われた命もあるのは事実です。
それと私も一族を騙していたので、それは謝らなければなりません。
ですがそれはまた後日話しましょう、今は罰の内容を伝えます――新発見した島の開拓及び地図の作成が罰だそうですよ。」
内容を伝えるとキョトンとしている上位達。
それはそうよね、だっていつでも逃げていいぞって言ってるのと一緒だし。
「それともう一つ、近日中に行われる未開の地の村最大規模の宴会にあなた達も参加してよいと伺っています。
もちろん皆さんの前で謝罪をしてからになりますが……。
そして罰を終えれば村に住まわせてもらえるはずですよ、もちろん逃走を企ててもいいですが追放扱いとなり未開の地はもちろん、魔族領と人間領という場所にもその通達が届きますので完全な新天地で生き残るという憂慮はありますが。」
宴会に参加するという言葉を聞いて物凄い真面目な顔に。
そういえばピザを食べたって言ってたっけ……もう既に料理で釣れることが確定してそう。
「分かりました、誠心誠意村の方々に謝罪させていただきます。」
「これ以上一族の汚点にならないよう、しっかりしてください。」
私は上位と離れ、オスカー様と村を目指す。
「あ奴ら、絶対に逃走などせぬな。
余程村の料理が美味しかったと見える。」
「そうですね、あそこまでとは思いもしませんでした。」
オスカー様も呆れている様子、謝罪の時に恥の上塗りをしなければいいのですが……ちょっと不安ですね。
ですが私も不安、長年一族を騙していたからなぁ……皆許してくれるかなぁ……。
そんな不安を抱きながら村へ到着、とりあえず今日はお風呂に入ってご飯を食べてゆっくり休もう。
よし!
今から私はパーン族の長じゃない、保護されたエルケ個人になった!
また謝る時に長になるから、別にいいよね!
いっぱい休みます!
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