第249話 アンケートの結果について話し合いをした。

アストリッドにしこたま笑われて恥ずかしい思いをしていると、固まって話していた女性達がこちらに戻ってきた。


「アストリッドさん、何をそんなに笑っているんですか?」


メアリーがアストリッドに尋ねたのでアストリッドが理由を話す、慌てて止めようとしたが間に合わなかった。


「ふふ、開様の世界の住民は想像力豊かなのですね。」


優しい返事だったがそれはそれで恥ずかしい、あれだけ笑われた後だからだろうか。


だが淫魔の他に夢魔とも訳される種族だったから、あながち前の世界の解釈は間違ってないのかもしれない。


想像なのにすごいな、それともそれを投影してこの世界を神が作っているのだろうか。


……流石にないな。


「それより開様、先ほどデパートの抽選枠増加の件について皆で話し合って意見をまとめたのですが、聞いてもらえますか?」


「もちろんだ。」


「デパート内部の進路を一方通行にして、入り口から出口まで人の流れを一定にしてしまえば現状起きている混雑が緩和されると思います。

 中のお店で取り扱う商品を予め聞いておいて、それを活版印刷で大量印刷して全員に配布すれば興味のないところは素通りしてくれますし。

 このあたりは情報漏洩対策をしっかりしないとダメですが、現状住民の信頼度を考えると問題ないでしょう。

 中の混雑さえ解消すれば現状でも抽選枠の増加は可能だと思います。」


なるほど一方通行か、混雑を緩和するにはよく使われる手だな。


「それを整理する人員はどれくらい必要そうだ?」


「それなんですが、上半身まで届くくらいの壁を設置して所々に進路を示す印を掲示すれば人員は削減出来るかと。

 それとさっきの活版印刷の印刷物ですが、こういった物が売っていたと帰った後に見せて話の種になれば更にデパートが認知されるかと思いまして。」


かなり考えられてるな、確かにチラシなんかの効果はかなり高いだろうし、口コミはこの世界で最高の宣伝だろう。


お店の人の売り文句と実際の消費者の声は、どうしても後者が信頼される傾向にあるからな。


「分かった、次のデパートで試してみるとしよう。

 それと、壁を超えていくマナーの悪い客もいるかもしれないが、その対応はしっかり決めたほうがいいな。」


「即座に退出、出入り禁止でいいんじゃないでしょうか。

 専用の呪いをかけた装飾品をシュテフィさんに頼んで準備してもらえば、それも可能ですし。」


シュテフィの能力、デパートで大活躍だな。


もしこれがうまく行けば、サキュバス・インキュバス族が移住してきた時にデパートの増設も視野にいれていいかもしれない。


「これ皆で話し合ったみたいになってるけど、ほとんどメアリーさんの意見に乗っかっただけなのよね。」


「建物内の一方通行は盲点だったわ、前の世界ではデパートやショッピングモールが沢山あったけど一方通行なんて無かったし。」


メアリーが照れて頬を掻いている、だがメアリーならそれくらい考え付くだろうな。


俺だって一方通行なんて思いつかなかったし、サキュバス・インキュバス族が来るまで現状維持だろうと諦めていた。


多少の不満は出るかもしれないが、抽選枠の増加という声は非常に多かったので出来得る対応をしたと受け取ってもらうしかない。


それに見逃しがないようにその日の商品リストを事前に渡すわけだから、買い忘れは自己責任という事で……少し投げっぱなしな気もするけど仕方ないよな。


「あ、そうだ。

 もう一度デパート内を見たい場合もあるかもしれないけど……その場合は今までどうしてたんだ?」


「解呪した痕跡を見て再入場の対応をしてます、呪いって解呪したとしてもきれいさっぱり消えるには1日ほどかかるんですよ。

 解呪さえしてしまえば呪いの効果は発動しないので安心していいんですけどね。」


アストリッドが俺の質問に答える、そんなことが可能だったんだな。


それなら何か準備する必要もない、この件に関しては解決だ。


その後は細々したアンケートの内容について皆で話し合い、順次対応していくことになった。


途中オスカーも風を操るドラゴン族を連れて来てくれて、空気の循環が可能だということが分かって良かったよ。


やけに時間がかかると思ったら、わざわざデパートまで行って実証してたみたいだ……そこまでやらなくてよかったのに。




長かった話し合いも終わり、皆で食堂に行こうとしたその時。


「あ、もう一つ話すことがあったの忘れてた!」


ティナの大きな声に皆が振り向く、どうしたんだ?


「これ村長に渡してって言われてたのを忘れてたの。

 教育施設の途中経過をまとめた書類、今まで講義を受けた人の名簿と教えてる仕事の適性等級と一言も添えてあるわ。

 これを村長が見て今後どうするか判断してって言われてたんだけど……時間あるかな?」


俺はティナから書類を受け取ると、俺がまとめる必要のないくらいほぼ完璧な書類だった。


その人の種族や名前、現在請け負ってる仕事と適性検査の適性等級などなど……概ねティナが言ってたものが記載されている。


前の世界でもこんな完璧な書類見たことが無い、というか手書きでよくここまで綺麗な表を作れたものだ。


これで途中経過ということは、まだ教育施設で講義を受けてない人がいるんだろうな。


よく考えたら妻達も受けてないし、それはそうか。


「ありがとう、これは俺がすることはほとんど無いよ。

 結果をその人たちに通達して仕事をどうするか選ばせてやってくれればそれでいい。

 もしその人が抜けて仕事が手薄になるなら、そこはその都度相談してくれれば大丈夫だから。」


「分かったわ、そう伝えておく!

 でもシュムックや鉱石の目利きで私よりすごい人が出るなんて思ってなかったよ……シュテフィさんすごすぎ。」


シュテフィにそんな才能があったのか、それは俺も驚きだ。


ティナの目利きは実際凄いからな、本気で選ばれたシュムックからこの魔力が相当上がる装飾品が出来たんだし。


シュムックの質で付属効果も変わるらしいし、これは最高品質なのだろう……それを見抜いたティナを超えるシュテフィ……すごいな。


ノームと契約して何かが変わっているのだろうか、と考えたところでふと一つ疑問が浮かんだ。


俺はドリアードと契約してるが、俺にも何か変わったことがあるのだろうか。


そう思って風を起こせるか試してみる。


風は想像錬金術イマジンアルケミーで作れないし、ちょうど話題に上がったドラゴン族の力で自然に関わるからな。


そう思った瞬間、突風が吹き出して皆の服がめくれ上がった。


俺は風にびっくりしたのと目のやり場に困った2つの意味で顔を隠す……偶然か?


「何も説明してないのに力を使ったからびっくりしたじゃない。

 それとも女性の服の中が見たかったのかしら、村長も男ね……。」


地面から顔を出したドリアードが話すだけ話してそのまま消えていった、その発言には語弊があるからやめてほしい。


ほら、女性達が俺を睨んでいる……違うぞ、違うからな?

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