第250話 カールと一緒にデパートの改装へ行くことにした。

長くなった話し合いも終わり、その日は最低限の仕事をして休むことに。


その次の日。


「しかし、村長がドリアード様の力を行使出来るなんてね。

 これでずっと気にしてた戦闘面でもある程度活躍出来るんじゃない?」


ウーテがドリアードの力をどう使うかについて提案してくる。


悪い話じゃないが、俺もちょくちょく鍛錬はしているからな……出来れば自分の力で戦いたい。


鍛錬所に通う住民達にはどう頑張っても敵う気がしないけどな。


だが、ウーテの提案自体は悪くない。


「使い慣れてないからいきなりは難しいと思うぞ。

 だけど困った時に使えないのは困るから、ドリアードとある程度知識のすり合わせはしておくよ。」


話し合いの時に思い付きでドリアードの力を使えないか試したら、思いの外簡単に使えてしまったからな。


服をめくりあげる為に使ったんじゃないかと疑われて、必死に弁解する羽目になったけど。


「おふぁよ……話は何となく聞こえたけど戦闘面で私を使いたいならもっと私を満足させてね。

 契約の支払いは<還る場所>なんだから、私が村に感じる満足度がそのまま村長の力に直結してると言っても過言じゃないのよ?」


ドリアードがあくびをしながら床から生えてくる、他に現れる方法はないのだろうか。


結構怖いぞ?


「っ……びっくりした、ドリアード様居たんですね。」


「そりゃここが私の<還る場所>だからね、それに契約者の村長の家に居るのが一番いいわ。

 夜の営みを覗いたりしないから安心してね、それにそういう時間は私絶対寝てるから。」


絶対と言い切るあたりよっぽど寝るのが好きなのかもしれない、最上位の精霊なのは間違いないんだがどうも子どもっぽさがあるから気が抜けるな。


ドリアードがそう言うとウーテが少し顔を赤らめて体をもじもじさせる、可愛い。


「そういえばドリアード、昨日急に消えたけどどこに行ってたんだ?」


「ここから大分離れた島で火山が噴火したらしくってね、周りの住民に被害が及ばない程度に活動を抑えて来たのよ。」


ここから離れた島……少なくとも人間領じゃないな。


人間領は島じゃないし、地形を見た限りでは活火山は見当たらなかった……と思う。


「その島、どこにあるか教えてくれたりはするのか?」


「それはダメよ、あちらも他人の介入は望んでないかもしれないし……私は私の仕事をしてるだけだから。

 頑張って探すか偶然発見して、貴方達で交流を図ってみなさいな。」


それもそうだな、何でも教えてもらっては面白くないし。


機会があれば全世界を回る旅とかをしてみたい、村がある限り難しそうなので誰かを派遣する形になるだろうけど。


「それじゃ私は食事に行くわね、とりあえず今はかなり満足してるからある程度好きに私の力を使っていいわよ。

 説明足らずの神様じゃないから一応言っておくけど、私の力を使う時は村長自信の魔力を使うから注意してね?」


そう言ってドリアードは床にすっと消えていった、木製だから自由に出入りが出来るのだろうか。


もしそうなら、全世界どこにでも一瞬で飛べるということだよな……俺もその能力は使えたりしないかな?


そう思って試してみても何も起きない、やっぱりこれは無理か……残念。


そうこうしているうちにメアリーとカタリナ、それに子ども達も起きて来た。


よし、それじゃあ皆で食事をして仕事に向かうとするか。




食事をしていると、今日はやたらとカールが俺に抱き着いてくる。


いつもはメアリーと同じくらいなのに、今日はメアリーより明らかに俺へ抱き着いてくる率が高い。


父親として嬉しいが、どうしたのだろう。


「最近開様がカールに構えてなくて寂しいんじゃないでしょうか。

 私と一緒に居ても開様を探しているような感じがしますし……パパとよく呼んでいますよ?」


「何でもっと早く教えてくれなかったんだ、カールがそんな寂しがっているなんて知らなかったぞ。」


俺は抱き着いてくるカールの頭を撫で、優しく抱き寄せる。


んへへ、とカールの頬が緩む――めっちゃ可愛い。


「最近お忙しいようでしたから……それに開様が帰るころには子ども達はぐっすりですし。

 すごい寝つきがいいんですよね。」


「ペトラとハンナもものすごい寝つきがいいわ、村長の遺伝なのかしら?」


俺は寝つきが悪いワケじゃないが、そこまでいいほうでもないと思う……どちらかと言えば普通なんだけど。


寝れない時だってあるしな。


多分何かしらが作用しているんだとは思うが、それは分からない……だが寝つきがいいのは決して悪い事では無いので深く考えないようにしよう。


それより今の問題はカールだ、ここまでべったりでは今日も奥様方に預けるのは可哀想だし。


「村長、今日の予定は?」


カタリナが食べながら俺の仕事を聞いてきた。


「デパート内部の改装と、ドリアードの力を使って空気の循環を実際に試してみるつもりだ。

 それで窓の位置を決めて、その後は一方通行用の仕切りを作るぞ。」


「それくらいならカール君と一緒に行けばいいんじゃない?

 そろそろ物心つく年頃だし、お父さんが普段どういった仕事をしてるか見るのもいい経験かもよ?」


「それはそうかもしれないが、想像錬金術イマジンアルケミーとドリアードの力での仕事だからな……いくら俺の子どもだからと言って真似出来ることじゃないし。

 でも、見せるくらいなら悪くないかもな――そうするか。」


カールは俺達の会話を何となく理解したのか、きゃっきゃと喜んでいる。


それじゃあ、食べたら一緒にデパートへ行くとするか。




カールと一緒に誰も居ないデパートの中へ。


メアリーから事前にどう仕切りを作ればいいか簡単な図を書いてもらっていたので、それを見ながらとりあえず中を一周。


カールも歩行器を使って一人で歩きながら俺を追ってくる、結構速度が出てるので目を離さないようにしないとな。


俺はドリアードの力を使って風を起こしてみると、確かに循環は可能そうだ……だが窓は増やしたほうが良さそうなのでどこに窓を付けるかあたりを付けておこう。


1・2・3階を一周し終わって窓を設置する場所も決まったので、ケンタウロス族に頼んで資材を運んでもらう。


「珍しいですね、今日はカール様とご一緒ですか?」


「離れたくなさそうでな、カタリナから仕事を見せてもいいんじゃないかと言われて今日は一緒なんだよ。」


「良かったですねカール様、いつも村長を呼ばれてましたので。」


だからなんで皆そういう事を教えてくれないんだ、今日初めて知ってちょっとショックだったんだぞ。


だが構ってやれなかったのは俺も悪いので、口には出さずに胸に留めておく。


資材を運んでもらいながらあたりを付けた場所に窓を設置、そしてそれを解放して再度風を循環……よし、うまくいってそうだ。


資材も少し余ったみたいだ、まぁこれくらいはいつもの事だし。


「よし、それじゃあ帰るとするか。」


「おや、村長こんな可愛らしいガラス細工の人形をいつの間に作られたんですか?」


残りの資材を入れた箱を持ったケンタウロス族が俺に問いかけてくる。


「そんなもの作った覚えはないぞ……でも確かにあるな。」


箱を見せてもらうと、メアリーによく似たガラスの人形が入っている。


「何なんだろう、メアリーのことを無意識に考えていたのかもしれない。」


俺は箱からガラスの人形を取り出すと、カールが俺の下へ結構な勢いで走ってくる。


転んだら危ないからゆっくり歩きなさい。


「ぼくのー!」


カールは俺が持ってるガラスの人形を指差して叫ぶ……え?

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