第361話 ようやくゴタゴタが落ち着いて日常が戻って来た。

アマテラスオオミカミが村に来て3日。


思ったより長く滞在しててびっくりしている、神の感覚からしたら3日なんて一瞬なのかもしれないけど。


それよりずーっと食べてる気がするな……というかアマテラスオオミカミって普段の食事はどうしてるんだろうか。


俺は食べないと多分無理だけど……生まれながらの神は大精霊みたいに別に食事をしなくてもいいのかな?


もしかしたら俺も食べなくてもいいのかもしれない。


でも絶対試さないぞ、この世界での食事って最大の娯楽なんだから。


最近は麻雀やダーツにトランプなんかも出来たけど、食事と酒には敵わない。


どっちかを止めろと言われたら間違いなく前者だ、それくらい食事と酒は偉大。


俺はドワーフ族に感動を伝えながら食事をしているアマテラスオオミカミを見ながらご飯を食べていると、クズノハが俺に声をかけてきた。


「村長、ちょっといいかの?」


「どうしたんだ?」


「魔族領での宴会の日程候補が出たのじゃ。

 最速だと明後日より2日間、それから村長には追加で1日ほど魔族領の式典に参加してほしいらしいのじゃが……大丈夫かの?」


「今のところ問題無い、最速で入れてもらって構わないぞ。

 楽しいことは早くした方が皆もいいだろうし。」


「有難い、ではそのように伝えておくのじゃよ。」


クズノハはしっかりとメモを取って食堂を出る、村の住人ではあるがすっかり魔王の妻として魔族領の仕事もこなしているな。


あれでいて村の仕事もやっているらしいから驚きだ、一体いつ休んでいるのだろうか。


「クズノハは頑張りすぎている、そう思わないか?」


「っ……びっくりした。

 もう村に居るんだから影法師で話しかける必要もないだろう。」


背後からいきなり声がしたので思わず飛びのいてしまった。


声の主はキュウビ、わざわざ影法師で俺に話しかけてくる理由は何だろう。


「すまない、最近のクズノハが心配で影法師で見ていたんだ……。

 流石に家の中までは監視してないからな?」


「それを聞いて安心したよ。

 俺も頑張りに驚いてるが辛かったらゆっくり休むだろうし、魔王なり村の誰かなりに辛いと言うと思うぞ。」


「それならいいんだが……実際クズノハは元気なんだ。

 監視も止めたほうがいいのだろうか、影法師の展開はこう見えて結構大変なのだよ。」


「やめていいと思うぞ。

 どうせ影法師で仕事するなら、パーン族の上位が開拓してる島であいつらを監視してくれよ。

 誰かを派遣する手間も省けるし。」


「それじゃあ。」


あっ……仕事を振った途端逃げたな。


一瞬で影法師を消すあたりよっぽど嫌なんだろう、まぁ転移魔法陣は展開済みだしわざわざ影法師で監視しなくてもそこまで手間じゃない。


キュウビはまだ村に来て日が浅いから気づかなかったんだろう、いくら頭が良くてもどういう技術があるかというのを知ってないと考えようもないだろうし。


さて、俺は宴会までゆっくりさせてもらうとするか。


神になってから1日1日が濃密過ぎて疲れているし、たまには休んでもいいよな。


たまには休むと結構な頻度で言ってる気もするけど……きっと気の所為だ。




食堂を出ると裏手が少し騒がしくなっているのに気づいた。


何かと思って見に行くと、メアリーを含めた狩り部隊がそこそこの武装をして集結している。


それに冒険者ギルドでグレーテが面倒を見ている冒険者達も、こっちは顔面蒼白。


「何してるんだ?」


「あ、開様。

 この間言われてた私のダンジョンコアを稼働しまして、とりあえずこっちには作物と家畜・食用動物・ワイバーンを各層に生成するようにしました。

 今から冒険者ギルドの方々のワイバーン狩りのテストに行くんです、念のため武装をしてるのはそのためですよ。」


「本当に大丈夫なのか?」


「ワイバーン如き、なんて言葉を生涯で口にするとは思いませんでしたが何の脅威でも無いですね。

 この後レオ様とトラ様も来られますし。」


そりゃ余裕だ、レオとトラがタイガと同じことが出来るなら飛んでようがワイバーンはデモンタイガーに対して成すすべ無しだからな。


そういえばタイガは今何をしてるんだろう、また外の見回りに行ってるのかな?


寂しがって構っている途中にマルクス城を見つけたから、また構おうと思ってたのに……アマテラスオオミカミが来てから一度も姿を見ていない。


ちょっと心配だ。


「それなら安心だな。

 俺はレオとトラの名前を聞いてタイガが心配になったからちょっと見てくるよ。」


「タイガ様ならラウラとクルトさんの家に居ると思いますよ?

 ラウラと何やら楽しそうにお話されてましたが……。」


あ、そうなのね。


満足して話が出来るラウラに報告してるんだろうな、それならよかった。


「じゃあ俺もついていくとしよう。

 狩り部隊の働きとか見たことないし、もう俺も死ぬこともないからついて行っていいよな?」


「構いませんが……見ても何も面白いことはないですよ?」


そんな事はない、村の皆がどういう戦いのするのかを知るのは大事だし……凄い事をしている人を見るのは楽しいぞ。


――と俺は思っていたのだが、俺が付いてくる事を聞いた冒険者達の顔色は蒼白どころじゃなくなってしまった。


そんな不安にならなくていいから、普通に訓練をしてくれたらいいから。

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