第360話 隕石の処理が終わったので村に帰還した。
「ただいまー。」
俺は隕石の処理をして村に帰還、思ったより時間が掛からなくて良かったよ。
だがこれで心置きなくこの世界を満喫出来るな。
神としての仕事はしないとダメだけど……困った時に力を貸して、文明レベルを見ながら俺が持ってる知識を教えれば大丈夫かな。
そのあたりは流澪と協力しながらやろう、現状電気が無い以外は快適に過ごせてるわけだし。
「開様、おかえりなさい!」
考え事をしながら広場に戻ると、俺に気付いたメアリーが抱き着いてくる。
その声を聞いた他の妻達も俺に抱き着いてきた、柔らかい……けどどうしたんだ?
「拓志、大丈夫?
結構長い時間宇宙に居たけど……。」
「大丈夫だよ、神はそのあたり影響されないみたいだ。」
「何それチートじゃない。」
俺もそう思う、でも死ねなくなったという恐怖を実感するにはまだ経過した時間は短すぎるからな……果たしてどうなるか。
妻達とオスカーが居るからかなり救われるとは思うけど。
流澪は俺が大丈夫だと分かるや否や「宇宙が大丈夫なら他の星から素材を採取して……。」なんて物騒な事を呟いてる。
流石にオーバーテクノロジー過ぎる気がするからやめないか?
なんて思っていると、食堂から何かを食べながらこちらに話しかける声が聞こえて来た。
「神が担当してない星から何かを持ち帰るのは禁止されてるから注意してね。
そこの住む知的生命体が自分達の力でそれを達成するのは別だけど――しかしこのお肉美味しいな……。」
声の方向を見るとオホヒルメノムチ……いや、アマテラスオオミカミが両手にお肉を持って咀嚼しながらこっちへ向かっている。
「あれ、来てるなら声をかけてくれればよかったのに。
というか、来るって言ってたっけか?」
「いや、気晴らしにね。
それにまだ食事に呼んでもらってないし、自分が担当した星だけどまじまじと身近で感じる事ってなかったから時間があるうちにと思って。」
そういえば次の星の担当まで時間があるって言ってたな、迷惑をかけないからいくら居てもいいんだけど。
ただ、チキュウの時みたいにその場のノリで神話になるようなことはやめてもらいたい。
一応俺という神が居るし。
「あ、ちょうどよかった。
聞きたいことがあったのよ。」
流澪がアマテラスオオミカミに質問を投げかける。
ここに一度顕現した時に何か聞き逃したことがあったんだろうか?
「神の定例会議がタカマノハラであるって言ってたわよね。
私が居た国でも同じ名称の場所が神話に出てくるんだけど、同じ場所なのかしら?」
「え、流澪は聞いたことあったのか?」
「逆に無かったの?
男の子ならあの神話なんて一度は食いつきそうなワードなのに……まぁいいわ。」
「猪谷 流澪の質問に答えるよ。
神話をじっくりと読んだことはないから断定出来ないけど、あの時代の御神子が行った巫の記憶では同一の場所だね。」
それを聞いた流澪は驚いている。
そしてそのまま何かを考えだしたのか、真剣な表情でウロウロと歩き出した。
「そんな驚くことや考えることがあったのか?」
「あの神話自体が現実だってことも驚いてるけど、それを記録出来てる私達のご先祖が凄すぎるのよ。
後世に語り継ぐためにも、どういった事が記録されていたかとか記録方法とか記憶から引っ張り出してるの。」
……本当に流澪のほうが神に向いてる気がする。
あの話からそこまで考えることは俺には出来ない、せいぜい「そうだったんだな。」くらいで終わるのが関の山だ。
「猪谷 流澪はいい補佐になれるね。」
「補佐?
俺は神のほうが向いてると思ったんだが。」
「こういう発想が出来る人材は組織のトップに向いてないよ。
ある程度発言力を与えるべきだけど、人を引っ張る力は無い……というより、引っ張られる人が疲れて離れてしまうからね。
同時にメアリー・ウォルフも猪谷 流澪と同じタイプだ、優秀な人材が居て開 拓志が羨ましいよ。」
アマテラスオオミカミの言葉を聞いてメアリーが照れている。
最初の顕現で認められていたから照れなくても、と思ったが……やはり褒められると嬉しいのだろうか。
ふと思い返すと俺は皆を褒める事ってあまりしてないかもしれない、ちゃんと褒めてあげたほうがいいよな。
皆頑張ってくれてるんだし、労いとは別に褒めるという行為も意識していこう。
「神様は私達が優秀じゃなかったとでも……?」
ドリアードと他3人の大精霊はアマテラスオオミカミを少し怖い表情で睨んでいる。
「そ、そんな事ないよ……?
やだなぁ、何千年も僕に仕えてくれてたのにそんな怒らなくても……。」
「村長に仕えてるほうが自由で楽しいですし、食事や遊戯という娯楽もありますからね。
説明もしてくれますし、いざとなれば他の住民の方々が差別なく教えてくれるし……正直言って仕えた長さを鑑みても村長への忠誠心の方が強いですよ?」
ウンディーネがばっさりとアマテラスオオミカミを切り捨てる、そんなストレートに言わなくても……。
「仕方ないじゃないか、不干渉の約定を星の核と結んでたんだから……。」
「自分だけ楽して力を得るっていうのがそもそも気に食わなかったんです。」
正論のカウンターをもらったアマテラスオオミカミは「うわぁぁ……。」と叫びながら後ろに倒れ込む。
肉はしっかりと守っているけど。
落としていたら怒られてただろうからナイスだ。
「慕われてなかったのねぇ……。」
流澪は考えながら気の毒そうにアマテラスオオミカミに憐れみの視線を送った。
流石に俺もちょっと気の毒になってきたぞ。
一応偉い奴だから、皆その辺で勘弁してやってくれ。
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