第259話 ハンバーガーを食べていると、アレが食べたくなったのでドワーフ族に相談した。

ピザにハンバーガーとジャンクフードが村に普及、食堂に行くと結構な頻度でそれらが提供されるのでカロリーが怖い。


自転車での見回りはもちろん、鍛錬も少し気合を入れて体に負荷を掛けて行う事にした。


メアリーやウーテは仕事で動くから分かるが、カタリナや流澪がどれだけ食べても太らないのが気になる。


カタリナなんて特にだ、妊婦だからかなりの量を食べてるし少しくらい太ってもいい気がする……いや、太れと言ってるわけではないけどさ。


俺は少しお腹周りが気になり出している、だからこそ鍛錬をしてるわけで。


刀を自分で使いたいという目標が一番だけど。


しかし女性に体形の事を聞くのはかなり危ない、どんな答えが返ってくるか分からないからな……少し観察してみるとするか。


だが、ジャンクフードを食べてて欲しくなるものがある。


酒は進むが、それに合う食べ物がもう一つ……そう、フライドポテトだ。


太ってきたのを気にしているんだが、どうしても食べたい。


なので食堂に行ってドワーフ族に相談してみる。


「――というわけで、ジャガイモを細く切って油で揚げて塩をまぶしてほしい。」


「ふむ、わかったぞい。

 簡単に作れるしつまみにもなりそうじゃ。」


相談してみると快く快諾、そして倉庫からジャガイモを取ってきて手際よく皮をむいて細切りに。


ジャガイモ10個が細切りになるのに5分とかからなかった、手を怪我しないようにしてほしい。


包丁を使ってる時、手の動きが早すぎて残像が時々見えてたし。


しかも包丁の材質はオレイカルコス、もしもがあると指が無くなるぞ。


「よし、油は熱してある。

 早速揚げてみるとするかの。」


芋を油に投入、ジューッという音だけでお腹が空くのは何でだろうな。


「……こんなものかの。」


ドワーフ族が油からジャガイモを取り出してお皿に盛りつけて塩をまぶす、これでフライドポテトの完成だ。


嗚呼、ジャンクフードの匂いがする。


ドワーフ族がフライドポテトを口に運ぶ、すると笑顔で「美味いぞ!」と叫んだ。


その声を聞いた他のドワーフ族がこちらにやってくる、そしてさらにあるフライドポテトを取っていった。


俺も無くなる前に食べさせてもらおう。


美味っ!


やはりこの村の作物は質がいいんだろう、というか前の世界で本当に美味しいフライドポテトって食べたことが無い気がするし。


基本はジャンクフード、加工後冷凍して何日も保存された物を食べてたわけだからな。


それに比べてこの村のジャガイモは収穫後時間を止めて保存されているから、収穫したてものを使って料理が作られている。


それを更に繊維を一切傷つけない切れ味の包丁で切って、油で揚げているからな。


これが前の世界より美味しくないわけがない、料理の美味さは鮮度から来ているようなものだ。


しかしこれ、いくらでも食べれるな……揚げたてでホクホクで。


なんて思っているとあっという間にジャガイモ10個分のフライドポテトが消えてしまった。


5人で食べていたとはいえ早すぎる、しかも3人はビール飲んでるし。


ずるいぞ。


「村長、このフライドポテトとやらとハンバーガーを一緒に提供すればいいのか?」


「それが俺の住んでいた世界で合わせて売られていた人気の組み合わせなんだよ。

 ハンバーガーはドワーフ族の力で他の味付けを開発してくれると助かる、俺も知ってるんだがうまく言語化出来ないし材料も分からないからな……。

 簡単な奴でいうなら薄く切ったチーズを挟んで食べるのは美味かったぞ。」


「こんな簡単な料理が人気とは……村長の居た世界は面倒くさがりが多かったのかの?

 だがこの工程の少なさと限られた材料で、この世界より美味い料理を作っているのには驚きじゃ。

 手の込んだものが全てではないという事だろう。」


ドワーフ族から提供されてた料理はかなり手の込んだものが多いからな、前の世界の料理人たちも手の込んだことをしてないと言うわけでは無いんだろうが……ドワーフ族からしたら簡単なのかもしれない。


そしてその日から早速フライドポテトを食堂に出すことに、芋を揚げるだけなので簡単だからな。


最初は物珍しさから頼む人が居たが、出てきたものを見て「こんな手抜きなんて珍しい……。」とぽつりと呟いている。


だが一口食べると笑顔になって一口、また一口と手が止まらなくなっていた。


芋を揚げて塩をまぶしただけなのに何でそんな美味しいんだろうな、俺もそう思うよ。


これを最初に考えた人は天才だと思う。




その後食べ過ぎたので自転車で村を追加で一周見回りした後に、きつめの鍛錬をして家に帰宅。


帰る間際にビールを飲んでしまったけど……美味しかったので良し。


メアリー・ウーテ・カタリナの3人はフライドポテトの話題でもちきりだ。


「あれ、流澪は?」


「まだ研究施設よ、村長の助言で完成に近づいた……というかほぼ完成だから試作の模型作りに勤しんでるわね。

 私はそういうの得意じゃないから帰らせてもらったのよ、ダークエルフ族は物凄い楽しそうだったけど。」


確かにダークエルフ族はそういうの好きそうだな、かなり手先が器用な種族だし。


「それよりフライドポテトですよ、あれはハンバーガーにもお酒にも合いすぎます。

 鶏肉とも合うのでは、と言ってみたらドワーフ族が厨房の奥に引っ込んでしまいましたが。」


チキンナゲットを思い浮かべる、だけどあれってどうやって作ってるんだろうな?


焼いてるのか揚げてるのか……どちらにせよ美味しいし合うだろう。


ファストフード店じゃなく居酒屋なんかでも一緒に提供している所が多かったし、大勢で行けばその2つは鉄板だったからな。


風呂も入って寝るぞという時に流澪が帰宅、子ども達が寝てるのを気づかってか静かに家へ入ってきた。


「おかえり、遅くまでお疲れ様。」


「フライドポテト……食べたかった……。」


誰かから聞いたのだろう、今まで聞いたことのないような悲しい声で流澪がつぶやいた。


明日は食べれるから、そんな悲しそうな顔をするな。


そして流澪の目からポロポロと涙がこぼれだす、そこまで食べたかったのか……。


仕方ない。


「こっそり食堂に行くぞ、材料がある場所は分かってるから想像錬金術イマジンアルケミーでフライドポテトを作ってやるから。」


それを聞いた流澪は一気に笑顔になる、かなり遅い時間だけど太るとかは気にしないんだろうか。


年頃の女の子なんだし……とも思ったが流澪は果実以外かなり細いので気にする必要もないか。


羨ましい。


「美味しー!

 村の料理も美味しいんだけど、こういうジャンクフードもたまに食べるといいわよね!」


誰も居ない食堂で流澪が元気にフライドポテトを頬張る、俺は非常に眠たいので早く食べてほしい。


ジャガイモ3つ分はやりすぎたか……と思ったが「おかわり!」と言われた。


嘘だろ、どれだけ食べるんだ。


「もうやめとけ、太っちゃうぞ。」


あまりに眠たかったのでついぽろっと本音を口に出してしまう、慌てて口を押えるが既に出てしまった言葉は引っ込めれない。


「私どれだけ食べても太らないし、体重が増えても胸のカップが大きくなってるだけなのよね。」


あまりに羨ましすぎて思わず小突いてしまった、全てのぜい肉がお腹に行く俺に謝ってほしい。

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