第381話 カタリナの出産も終わり、落ち着いて2人で話をした。

「村長、もう朝よ?」


「う、んん……寝てしまってたか。」


昨日カタリナと話すために部屋に来たんだが、眠っていたので起きるのを待っていたら俺も眠ってしまっていたらしい。


ベッドにもたれかかって寝てたからか、体が痛いな……。


想像剣術イマジンソードプレイで体調不良を切っておこう――よし、快適になった。


「おはようカタリナ、眠ってしまったようですまない。」


「いいのよ、私も今起きたから。

 それより家に帰らなかったの?」


「俺も赤ちゃんが抱けるその日まで出来るだけこっちで過ごすつもりだぞ。

 たまには家に帰るけどな。」


「嬉しいけど、3日か4日に1回程度でいいわよ。

 村長は私だけの男じゃないんだから……流澪ちゃんにエルケちゃんとの子どもも作らないとでしょ?」


確かにその通りだが……俺としてはカタリナを優先したい。


でもそれがこの世界ではいけないのかもな、一人に執着するのをあまり良しとしてないし。


浮気とかは許されないみたいだけど。


「分かった、じゃあそのくらいの頻度にしておくよ。

 それと赤ちゃんの名前なんだが……何か考えてたりするか?」


この聞き方だと俺が考えてないのがバレそうだが、事実そうなのだから仕方ない。


怒られたらきちんと謝ろう。


「この子には悪いけど全く考えてなかったわよ……。

 だってまだもう少し先だと思ってたし、あまり早く考えすぎると色んな案が出すぎて決められそうになくって――村長は?」


「……俺もだ。

 今日は呼ばれない限りどこにも行くつもりはないし、一緒に考えるか。」


内心少しホッとしたのは何とか隠しておく。


「そうね、カール君やペトラちゃん、ハンナちゃんの名前って前々から決めてたの?」


「大体案はメアリーとウーテが考えてくれてたが、決定は産まれてからだな。

 ウーテは双子だったからかなり時間が掛かったけど。」


俺がそう言うと「そういえばそうだったわ。」と笑うカタリナ、その子に一生ついてくるものだから下手に決めれないのは分かってくれよ?


「村長はこの子にどういう人生を歩んでもらいたい?」


「どうしたんだ急に。」


「名前に私達の願いを込めるのもいいのかなぁ、って。

 よくある名前を付けたり、功績を残した過去の人の名前をもらったりするのが通例だけど――この子にはそういうのに縛られず名前を付けてあげたくって。

 ただでさえ早産だったのに、こんなウルリケさんじゃないと出来ないような対応で無事に産まれたんだもの、他の人と同じは何か嫌だなって思ったのよ。」


なるほど、そういう事か。


カタリナの言いたいことは分かる、俺が前の世界で住んでいた国もそういう気持ちで子どもに名前を付けた親がほとんどだろう。


時々絶対読めないだろ、っていう子も居たけどな。


ちなみに俺も学生の頃に宿題で親に聞いた話では、『道を拓いていく志を持てるように』という気持ちを込めた名前だと言われた。


前の世界ではそんな事出来なかったが、この世界では出来ている……気がする。


そう思いたい。


閑話休題。


名前に意味を求めるカタリナ、そしてその理由も聞いている――ならこの名前を提示してみようか。


「そうだな……それならフライハイトというのはどうだ?」


「確かに聞いたことない名前ね、何か意味があるの?」


「俺が前に住んでいた世界の国の言葉の一種で、意味は『自由』だよ。

 カタリナの願いを聞いて思いついたんだけど、どうだ?」


「――フライハイト、自由……うん。

 いいと思うわ!」


カタリナにもしっくり来たようで良かった。


屈託のない笑顔で返事をしてくれて俺も自然と笑顔になる、無事に決まって良かった。


「よろしくなフライハイト。

 早くここから出て来てくれよ、待ってるからな。」


俺は培養液の中に居るフライハイトに話しかける。


すると、俺の声が聞こえたのか手足を動かして反応してみせた。


言葉の意味は分かってないだろうが、反応してくれて素直に嬉しい。


それに元気そうで良かったよ、その調子で成長してくれよ。




名前も決まって二人で世間話をしていると、同時にぐぐぅー……と大きなお腹の音が部屋中に鳴り響いた。


朝ご飯も食べずにずっと話してたからな、そういえばお腹はペコペコだ。


カタリナと一緒に食堂に行こうと誘ったが、ここから離れたくないの一点張り。


流石に一歩も外に出ず太陽の光を浴びないのは良くないので、何とかしようとしたが頑なに動かない。


仕方なく俺は外に出たが、奥様方にカタリナはどうしたのか問われたので事情を説明。


数分後には少ししょぼくれたカタリナが部屋から出てきた―ー一体何を言われたんだろう。


「ずっと部屋の中に篭りっぱなしなんて許しません、って怒られちゃった……。

 ポーションで健康そのものなんだから運動もしてくださいって、その間は見ててくれるみたい。」


「良かったじゃないか。

 実際そのほうがいいと思うぞ。」


「そうね、じゃあそうさせてもらいましょうか。

 とりあえず食事に行きましょ、また大きい音が鳴って恥ずかしくなるのは嫌だし。」


俺とカタリナは2人で手を繋いで食堂へ。


入った瞬間に皆から祝いの言葉と心配してたという言葉、それにボディーランゲージを盛大に受けて再び俺とカタリナのお腹が盛大に鳴る。


頼む、食べさせてくれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る