第81話 魔族領まで陸路を敷いて関所を作った。
魔族領までの陸路を敷くことにしたので、ウーテ・グレーテ・ハインツを連れて最初に魔族領へ向かっていた街道を歩いている。
「また陸路なんて急ですね、どうしたんですか?」
グレーテは魔法陣があるのに何故わざわざ陸路を準備するのかという顔だ、普通はそうなる。
「メアリーが安易に未開の地を目指す人が増えるかもしれないという見立てをしててな、もしかしたら無理に山越えをして命を落とすかもしれないだろ?
それの先手を打つというわけだ。」
話ながら歩いていると途中まで敷いた街道の端までたどり着いた、そして
「確かにそれはあるかもしれませんね、儲け話に躍起になる冒険者は絶対に居ますし。」
むしろ今までは大丈夫だったのだろうかと不安になるが――だが魔王が何も言ってこないということは、トラブルは起きていないのだろう。
何も無いのが一番だけどな、目先の金になるかどうか怪しいものに命を懸けるなんてもったいなさ過ぎる。
だがそれが冒険者なのかもしれない、もしそうなら俺は一生冒険者にはなれないだろうな。
なるつもりもないけど。
ちなみに移動は徒歩ではなくハインツが引っ張る荷台に乗って走ってもらっている、めちゃくちゃ早くて少し怖いが……確認と時短の為には仕方ないことだ。
「村長、山まで到着しました。」
そう言われて前を見ると確かに山だ、俺がこの世界に来て1年以上経つけどここまで家から離れたのは初めてだな。
魔法陣で移動した魔族領はノーカウント。
「しかし山となるとしんどいですね、ハインツさん大丈夫ですか?」
「ケンタウロス族の長である私が、これしきの山を登れないとでも?
村長の街道でお膳立てまでしてもらうのに出来ないわけがないでしょう。」
グレーテとハインツが軽い煽り合いで盛り上がってる。
「空気を読まない発言をするが、山は徒歩で越えないぞ?」
「「え?」」
2人がとぼけた顔をして俺を見てくる、だって危ないししんどいだろ?
「ここからはトンネルを設置する、山の中を向こうまで貫通している道のことだ。
大まかに言えば魔族領まで続く坑道みたいなものだな。
鉱石を掘らないから坑道ではないけれど、地中に走っている道という点では同じだ。
というわけで、
よし、無事に開通してそうだな。
「向こうの光がかすかに見えるな。
ここを抜ければ魔族領だ、トンネルを抜けるまで走ってみてくれ。」
「抜けた先はどうするのですか?」
「そこから先は魔族領だから俺の管轄外だろ、許可も無しに街道を繋ぐことは出来ない。
それに時間があったからここまで作業をしたんだ、終われば一旦魔族領側の入り口は閉じるぞ。」
許可を取り忘れてただけなんだが、戻って魔王と話せば快諾してくれるだろう。
こちらへ来る目的が見合ってるかどうかは魔族領の判断に任せよう、うちは基本的に来るもの拒まずだから。
一旦帰って一度解散し、俺は魔王のところに街道を繋ぐ許可と関所の管理をどうするか話に来ている。
「それは有難い話じゃし関所の管理も出来るが、未開の地の魔物がこちらへ流れて来た場合はどうするのじゃ?」
「村から腕利きを関所へ常駐させる、関所と村の行き来するための魔法陣も設置するから安心してくれ。
関所の材料は村が持つし警備の人に食事提供もするから、警備の人手と賃金なんかは魔族領に任せたい。」
「そちらへ行くための目的はどういったものであれば許可するのじゃ?」
「領外に出るからな、前科が無い者かつ村に害をなさないであろう人物の希望なら基本的に聞き入れてくれて構わない。
許可を出した人には割符のようなものを発行して渡しててくれ、それを確認して村まで便で運ぶようにするから。」
俺も魔族領を隅々まで見えたわけではないから、これで俺の知らないものが手に入る機会が増えるかもしれない。
知らない食糧とか便利な道具とか、村には技術はあるが道具はそんなに種類がないからな。
ただ質が良すぎるだけで、最近包丁とかオレイカルコス製も作ってるし。
まな板は大丈夫なのかと思ったら、まな板もオレイカルコス製だった――この世界には無いはずの、ものすごい硬い鉱石が武器ではなく調理器具になってるのは平和な証拠と捉えるべきか?
「では、関所は首都を出て少し行ったところに構えることにするのじゃ。
案を練って後程村へ持っていくようにするのじゃ、それまで待ってほしいのじゃ。」
「わかった、急いでるわけじゃないからいつでも構わないぞ。」
そう言って謁見の間を後にする、これで後は魔王の案を待てば陸路が開通するな。
次の日の昼、魔族領から案が出来たと言伝が届いた。
早すぎないか?
目を通すと、関所の隣に15人が住める宿舎と魔族領までの送迎をお願いしたいという記載があった。
それくらいは何とでもなるな、割符のサンプルも一緒に届けてもらえたので早速取り掛かるとしようか。
ローガー・ハインツ・ヤンの3人に関所の事を話し、警備の人員をそちらに回してもらうよう頼み、他のケンタウロス族とミノタウロス族には関所と宿舎の材料を運んでもらう。
後は風呂のためにウーテ、魔法陣のためにミハエルも付いてきてもらうことに。
ミハエルには事前に村へ魔法陣を書いてもらっている、これで向こうに書いて繋げれば完成するな。
ウーテの希望もあり陸路で目的地まで行くことに。
街道を敷いてるからケンタウロス族が一気に飛ばしてくれる、最近移動と言えばウーテに乗って空路ばっかりだったからこれはこれで気持ちいい。
ただ飛ばしすぎる時もあるのでそれはやめてもらいたい、安全運転大事。
ウーテとミハエルが小さくなってプルプルしてる、怖かったのか……。
材料を運び終わり、
「こんなものでいいかな?」
ケンタウロス族とミノタウロス族に意見を聞いてみる。
「大丈夫だと思います、後は家具・お風呂・魔法陣の設置で先ほどの案は完了するかと。」
風呂は大きくしたほうがいいのか、1人ずつ入ることを考えたほうがいいのか……。
「大きいお風呂で問題無いんじゃない?
もし1人で入るにしても広いほうが気持ちよさそうだし。」
それもそうだ、お風呂も錬成してウーテにお湯を出してもらって完成。
排水は少し行ったところに川があるので貯水場を作ってそこから川へ排水、水をきれいにする魔法陣はミハエルが書けるらしいので書いてもらった。
後は移動魔法陣を書いてそれを少し厳重に囲って、これで関所は完成。
後はここから魔族領まで街道を敷いてこの仕事は終わりだな。
「よし、今から魔族領まで街道を敷いていく。
その後は軽く魔族領で羽を伸ばして帰るとするか。」
そう言って俺たちは街道を伸ばしながら、のんびり魔族領へ向かった。
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