第309話 災厄の集塊で出来ることは今のところ無いので、久々にいつもの日常を過ごした。

エルケを村で保護した次の日。


俺は結局風呂を出た後に遊戯施設へ直行、食堂に行くと妻達と合流してしまいそうだったし。


別にしても良かったんだけど昨日はだらけたかったからな。


結局軽食を食べながらダーツの練習をしていた所をカタリナに見つかり家へ連行、そのままエルケが住む部屋の増設をさせられた。


想像錬金術イマジンアルケミーですぐだからいいんだけど、どうにも乗り気になれなくて申し訳なかったな。


だらけたいって言っても「また今度ね、今はダメ。」って一蹴されたし。


実際その通りなんだけど。


で、そんな事があった翌日が今現在。


何故かエルケが裸で俺の布団に入り込んでいる……何で?


昨日部屋を作って案内したし、エルケが部屋に行った時おやすみって言った記憶もあるのに。


これじゃ上位の言う通り、エルケを誘拐して好きにしてると思われても仕方ないぞ……どうしてこうなっているんだ。


「あ……村長おはようございます。」


「あ、あぁ……おはようエルケ。

 とりあえず今の状況を説明してもらっていいか?」


俺が起き上がって変な汗をかきながら思考を巡らせていると、エルケが起きたので挨拶と同時にこの状況について聞かせてもらわなければ。


昨日俺が酔ってエルケを連れて来たとかじゃなければいいんだけど……寝る前までお酒飲むんじゃなかったなぁ。


「今私はパーン族の長でもないただのエルケ個人ですから……お世話になっているお礼をする方法が私の純潔を捧げるしかないと思い、意を決し村長のベッドにお邪魔したんです。」


そんな事は気にしなくて良かったんだが、普通に休んでてくれればそれでいいのに。


「ですが村長はお疲れだったのでしょう、呼んでもゆすっても起きられず。

 既に服は脱いでたのでお布団にお邪魔させていただいたら、物凄いふかふかで気持ち良くて……その……抱き着いたまま私も眠ってしまいました。」


その言葉を聞いて心の中で「良かったあぁぁぁ!」と叫ぶ、何も無くて良かったよホント。


別にエルケを妻に迎え入れるとかそういうつもりは今のところ無い、ただ仕事や役職から少し離れて日常を過ごせる精神状態になってほしいだけだ。


「エルケからお礼を貰おうなんて思ってないから安心してくれ。

 今はただ休んでくれ、元気になったらパーン族の長に戻ってくれればそれでいいから。」


「ですが……。」


「これは俺のワガママなんだ、あんな状況になってた女の子に対して何もしないわけにはいかないだろ。

 男の格好つけだと思って気にしないでくれ、たまたま転がり込んできた長期休暇だと思ってくれればいいさ。」


実際その通りだし。


エルケはまだ納得してない様子だったので「俺はこの村で一番偉い、その俺が休めと命令する。」と柄にもなく権力を行使させてもらった。


これくらいいいよな?




朝食と朝の運動を終えて久々に感じる村の見回りへ。


ここ最近はバタバタしていたから出来てなかったし、今日はいつもよりしっかりしておくとしよう。


とりあえずその前にイザベルの家に寄るとするか、カウンター術式の進捗状況が気になるし。


そう思って家を訪ねたのだが……イザベルに会う事は出来なかった。


ザビン曰く、今物凄い集中して術式を組み立てているので邪魔をしないでほしいとのこと。


それなら仕方ない。


まあイザベルが2日欲しいと言っていたから今日か明日には完成するのだろう、だからこそ集中してやってるんだろうし。


……もしかしてイザベルは根詰めて納期を短めに取るタイプなのだろうか。


それならやめさせないとな、いつか体を壊してしまうし。


カウンター術式を発動させる時には同行するだろうし、その時聞いてみるとしよう。


イザベルの家を後にして村の見回りを再開、このまま居住区を回ろうと思いコロポックル族とパーン族の居住区がきちんと機能しているかしっかり見ておかないとな。


「村長、もっと花畑を増やしてくれないとホーニッヒの量を増やせないってビーナが文句言ってるぞ。」


「花の種はあればすぐに増やせるが……どうだ?」


「あるぞ、他の虫が必要だろうって集めてくれてるからな。」


コロポックル族はこのあたりに生息している虫を完全に従えているのだろうか、割とすごい事している気がする。


俺は種を受け取って、花畑をほぼ倍の面積に増やした。


「これでいいか?」


コロポックル族に聞いてみると蜂と会話をしている様子、口は動いているが言葉は発してない……どうやって会話してるんだろうな?


「とりあえずは大丈夫だけど、出来るならもっと増やしてほしいって。

 それといきなり増えたから相当びっくりしてたぞ。」


前者は種次第ですぐ対応出来るが後者は慣れてくれとしか言えない。


虫の寿命なんて知らないから慣れるまで生きてるか分からないけど。


「そういえば島で暮らしていたように空間認知能力を歪ませる工夫とかはしないのか?

 コロポックル族って結構伝説になってるらしいし……見つかると面倒だから出来ればしてほしいんだけど。」


「もうやってるぞ、コロポックル族が心を許している村の住民しかここに辿り着けないようにしてある。

 どうやってるかは秘密、分かれば簡単に解除されちゃうから。」


コロポックル族が想像以上に器用でビックリ、色んなことが出来るんだなぁ。


他に何かしてほしい事や困った事があるか聞いたが特に何も無いらしい、平和に過ごせてて何よりだ。


さて、次はパーン族の居住区だな。


俺はコロポックル族の居住区を後にして、パーン族の居住区へ向かう。


距離的にはそこまで離れてないので自転車で2分くらいで到着、パーン族が居たので声をかけようとしたが向こうも俺に気付いた様子。


「皆ー!

 村長がお見えだぞー!」


俺に気付いたパーン族が他のパーン族に向かって叫ぶ、俺は何事かとびっくりしたがそれから十秒後には居住区に居るであろうパーン族全員が土下座をして俺を出迎えだした。


そんなことしなくていい、顔を上げてくれ。


見回りに来ただけだから。

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