第412話 ウンディーネを追って瞬間移動を試みたら、そこは白銀の世界だった。

「さっっぶ!!!!」


ウンディーネを追いかけて到着した場所は、先ほど話題にも出た極寒地域の大霊峰……恐らく頂上付近。


あまりの寒さに叫んでしまった、雪山でこんな声をあげるのは事故に繋がるのに。


だが頂上付近なのでたぶん大丈夫……だよな?


俺の声を聞いたオスカーは、能力を使って暖かい空気を閉じ込めた結界を作ってくれた。


一気に快適になってびっくりする。


「これで暖かくなるだろう。

さて、ウンディーネ様は……お、居たぞ。」


オスカーが指差す先を見るとウンディーネが立ち尽くしている、やはりフェンリルの封印が解けてたのだろう。


「あなた、ここに封印されてた犬知らない?」


ん、喋れる誰かがそこにいるのか?


ウンディーネが誰かに喋りかけていたので近づいてみると、そこには毛皮を着こんだ少女がかまくらの中で鍋をつついていた。


まさかの状況に俺も固まってしまう、どうしてこうなっている?




「あの、えと……フェンリルの事?」


少女はウンディーネの問いに恐る恐る返事をした、喋った後は鍋をつついてるけど。


怖がってるなら食べるのをやめたほうが好印象だと思う。


「そうよ、知っているのなら教えて。

 私の封印から逃げ出すなんて思ってなかったわ、再び封印しないと。」


「やめて!

 フェンリルは何も悪い事してない!」


かまくらの中から少女は必死の表情でフェンリルの封印を止める――魔力も何も持たないのか大精霊であるウンディーネにそこまで食って掛かるなんてすごいな。


鍋をつつくのを止めてないのも胆力がある、こういう環境で育つとああなるのだろうか。


叫んだあとも何かの肉を頬張ってたし。


「今はそうかもしれないけど、あいつは過去に世界を敵に回してるのよ。

 そんな危険因子、放っておけないわ。」


ウンディーネも理由をしっかり説明していると、吹雪の奥からザッザッと何かが歩いてこっちに近づいてくる音が聞こえる。


まさか……フェンリルか!?


皆もそれに気づいたのか一気に臨戦態勢を取った、ラウラもハーフドラゴンになって無の力を貯めている。


「あっちに敵意は無いですが、油断しないでくださいです。」


「ふ、氷を扱おうと狼だ。

 ワシが負ける事なぞあり得ぬ。」


相変わらずすごい自信だ、実際それだけの実力をオスカーは持っているんだけど。


「来るぞ……!」


吹雪の奥から徐々に近づいてきた影は、姿を視認出来るまでこちらまでやってきた……と思ったら、咥えたイノシシを奥のかまくらへイノシシをしまいに行ってしまった。


「え、私達が眼中に無いってこと……?」


あまりの展開に臨戦態勢を取っていた全員が固まってしまった。


イノシシしまい終わったフェンリルがこちらに戻ってくると、少女を自身の毛皮で覆って俺達に話しかけてくる


「客人、お待たせしてすまなかった……しかし、久々の客人がウンディーネとは。

 その節は世話になったな。」


「それはこっちの台詞よ、どうやってあの封印から抜け出したのよ。」


「ふふ、それに関しては種明かしをする。

 だが冷えるだろう、まずは鍋をつついて温まってはどうだ?」


世界と敵対した精霊だっていうから相当身構えてたのに、まさかおもてなしをするほど物腰柔らかとは思ってなかったぞ。


ほら、大精霊4人は明らかに狼狽えてるし。


「とりあえずいただきましょうか……この地域の食事も食べておきたいし。」


ドリアードも訳の分からない事を言って鍋をつつきだしたし……そんな幼い子から食糧を奪うのはやめてやってくれ。


まったく、仕方ないな。


俺は想像錬金術イマジンアルケミーで全員が入れるかまくらと大きめの鍋を錬成し、雪解け水を入れて火で沸かしだした。


「フェンリル、さっきのイノシシをこっちに。

 それと野菜があるならそれも頼む。」


「村長、フェンリルも少女も気絶しておる。」


しまった、最近は想像錬金術イマジンアルケミーで誰かが気絶するなんて事なかったか油断してたぞ……!


とにかく看病をするとしよう、こんな雪山で気絶なんて命に関わるかもしれないし。


鍋は2人が起きてからだな、話したいことも山ほどあるし。

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