第313話 災厄の集塊の捕獲に成功した。
災厄の集塊の中身に体内へ侵入されたオスカー、苦しそうな声を上げたと思ったらすぐに普通に戻って全員ポカーンとしている。
「オスカー、大丈夫なのか?」
「もちろんだ。最初は驚いたが何をするか分かってからは一時的に支配権を渡し油断させて後から力で圧し潰した。
精神力でもドラゴンは一流だからな、たかだか魔力生命体ごときがワシを好き勝手出来ると思うな。」
オスカーが規格外で本当に安心したよ、シモーネも最初慌ててたから何が起きたか分からなかったし。
「もう、心配かけるんじゃありませんよ。」
「すまんすまん、さっきも言ったが最初は驚いたのだ。
だがしかし、こいつが体内に入ってきて分かったことがあるぞ――こいつは侵入した体を操れるようだ、小癪な真似をする。
こんな存在があの魔力を全て自身の物にしていたら、ワシでも少し危なかったかもしれんぞ。」
オスカーはそのまま体内に侵入した災厄の集塊の説明を始める、もう集塊でもないからただの災厄かもしれないけど。
「今はどうなんだ?」
「体内で抑え込んだぞ。
殺そうと思えばこのまま殺せるが、それはまだせぬ。」
体内で殺すって何をどうやったら出来るんだろう、そんな体に入ってる病原菌を殺せるような真似をホイホイとして大丈夫なのだろうか。
魔力生命体だから出来るのか、とりあえずオスカーはすごいという事だけは分かる。
「さてエルケ殿、体内に居る災厄の集塊の処遇を決めてもらおう。
これに村が関わったのは偶然、本来はパーン族の問題のはずだ……飼いならすならワシが努力してやるし殺すならこの場で葬ろう。」
オスカーがエルケに問い掛ける。
確かにメアリーが誘拐されなければ災厄の集塊が存在していたことすら分からなかっただろう、運がいいのか悪いのか分からないが……実際の災厄にならず未然に防ぐことが出来たとプラスに捉えるか。
エルケは少し考えてオスカーに問い返す。
「それと意思疎通は可能でしょうか。」
「む……やってみよう。」
「それと……ラウラさんでしたっけ。
索敵魔術で敵意があるかどうか見抜けてましたよね、災厄の集塊は今も敵意があるでしょうか?」
「今は無いです、魔力が放出されている時からお義父様の体内に入られるまではすごかったですが……入った瞬間恐怖を感じている反応になったですね。」
ラウラの索敵魔術、いつの間にそんなことまで分かるようになったんだ。
昔にダンジョンで使った時は動きで推測をしていたが今回はそうじゃないはず、明確に反応が出てないと分からないはずだし。
皆知らないうちに成長してるんだなぁ、俺も頑張らないと。
そういえばこの世界に来た時はポンポン上がってたのに、ここ最近は
もうカンストしたのだろうか、もしそうならあまりに早すぎるから最初から解放しててほしかったんだけど。
あの神の遊び心だろうか、やりそうで困るな。
「エルケ殿待たせたな、これと意思疎通は出来るぞ。」
「確認ありがとうございます。
それはどれくらいの間体内に閉じ込めておけますか?」
「ワシが生きてる間はずっとだな。
主導権は既に取り返しておるし、下手な真似をしたら即刻殺すことも再三伝えてある。」
「厚かましいお願いですが……少しの間それを閉じ込めておいてください。
落ち着いた時にパーン族全員の前で過去について聞き出してほしいのです、私の願いを聞き入れてくれるでしょうか?」
「それくらい構わぬよ。
同じ村に住まわせてもらっている身だ、その程度の願いは気にせず頼んでよいからな。」
オスカーにそう言われてエルケは俺をちらりと見てもじもじする。
まだそういう関係じゃないから誤解されるような行動はやめてなさい。
「村長、エルケさんとそういう関係なの?」
「言い寄られてはいる、落ち着くまでは返事しないって言ってるけど。」
「モテるわねぇ。」
隣に居たカタリナに小声でからかわれる、相変わらず皆嫉妬とかあんまりしないんだな。
前の世界に住んでた流澪も気づいてそうだがニヤニヤしてるし、あれは恐らくからかってきたカタリナと同じ思考をしている。
「さて、とりあえず災厄の集塊に関する騒動はこれで終了だ。
皆お疲れ様、村に帰るぞ!」
「「「「「はい!」」」」」
全員から気持ちいい返事をもらって帰路に就く、用が済めばこんなジメジメした地下なんてさっさとオサラバしたいし。
帰りにも上位からジロジロ見られたのでちょっと気分が悪くなる、だが恐怖と言うより何かを求めるような目だったな。
ピザに心酔したのだろうか?
アレの処遇も決めなければならない、不本意だが村に移住させる方向で話し合いを進めないとな……。
全員村に到着し、この後宴会をするかどうか問われた。
こういうトラブルを解決した後はいつもやってたからな、皆楽しみにしてるんだろう。
「オスカー、キュウビはいつ頃贖罪の旅を終えて村に帰ってくるんだ?」
「早ければ2日後あたりには帰るだろう。
もうそこまで来ているはずだ、この間も切り上げてはどうかと声をかけたんだがな……あと少し終わる仕事をなあなあに済ませたくないと怒られてしまった。」
これはかなりの精度で描かれている地図が手に入るかもしれない、そこまでこだわるという事はそういう事なのだろう。
俺としてはここに森や山がある、程度の物だと思っていたから嬉しくなってしまう。
おっと、こんなことを考える前に返事をしてやらないと。
「分かった、それならキュウビが帰って来た時の約束・パーン族の歓迎会・災厄の集塊問題の解決を全て含めた大宴会をキュウビが帰って来た次の日の夜に行う!
全員それに向けて準備をしてくれ、村で出来る一番豪勢な宴会を行うぞ!」
「「「「「うおぉぉぉぉーー!!!」」」」」
これまで聞いたことないような雄叫びを上げて全員が四方へ散っていく、まだ先なんだがそれだけ準備したいことがあるんだろう。
ドワーフ族はともかく、他の種族は何をするんだろうか。
特にウェアウルフ族やリザードマン族、宴会に関わることなんて何も出来ないと思うんだけど。
「さて村長、大々的な宴会をする以上あのパーン族の上位の処遇もある程度決まっておるのだろう?
意見を聞かせてもらおう、アレに関してはまだ許してはおらぬがな。」
「分かってる、俺もそうだし。
それじゃパーン族の上位について話し合いをするとしよう、各種族の長を集めてくれ。」
今までで一番億劫な話し合いだな、大多数が上位の移住に反対したらどうすればいいんだろうか……。
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