第240話 食堂の厨房へ特製のシンクを作った。

温泉を作った次の日。


ウーテからはもちろんメアリーやカタリナ、それに他の住民からも大好評だった。


流澪も「うん、ちゃんと出来ててすっごい気持ち良かった。」と温泉を経験したことある人にも太鼓判を貰えたので合格だろう。


実際本当に気持ち良かったからな、もっと早くやっておけばよかったと思うくらいだ。


これからも改良・改善出来るところを見つけてよりよい村にしていきたい、流澪は住民の幸福度が高いとは言うがそれに甘えてはいけないだろうし。


温泉は終わったがまだ仕事は残っている、現在俺はドワーフ族にお願いして厨房を見学させてもらっているところだ。


カタリナの言う通りシンクは無い……が、必要無いような気もしている。


何故か。


食器を洗う過程が生活魔術で完結しているからだ、しかも手洗いや食洗器よりピッカピカになってる。


だが野菜や米なんかは汲んできた水を使って洗っているな、それを洗う場所としてはありなのかもしれない。


「ちょっと聞きたいことがあるんだ。

自由に水を出したり流したり出来る、錆びにくい材質の台があれば欲しいか?」


調理をしているドワーフ族に聞いてみた、要らないと言えばシンクは作らなくていいだろう。


「そんな事が可能なのか!?

 是非欲しいぞ、野菜も米も洗い放題で食器の浸け置きが出来るではないか!」


「食器の浸け置きは必要か?

 見学させてもらったが、生活魔術で綺麗になってると思うけど。」


「頑固な汚れを落とすにはそれなりの魔力が必要らしくてな、浸け置きをしてやりたいんじゃが人手が足りない時があるから当たり前にならんようにしておらんかったのだ。

 だが自由に水を出せるなら別だ、是非欲しいぞ。」


なるほど、想像錬金術イマジンアルケミーで大きなものを作る時に多くの魔力を消費するようなものか。


確かに違う事をするのに同じ魔力消費量な訳が無いしな……失念していた。


「それならこれから作るよ、どのあたりに作ればいい?」


「そうじゃな……食器を浸け置きする用はここ、野菜を洗う場所はここへ設置してほしい。

 だが今は暇だしそこまで急いだものではない、手の空いた時でいいぞい。」


ドワーフ族はそう言うが、暇な時にしておかないと忙しい時には俺が入る余裕もないし今日やらせてもらうとしよう。


というか今日の夜は宴会なのに暇なのか……俺の感覚では相当な量の料理が作られてるし忙しそうに見えるんだけど。


まあドワーフ族の感覚だしな、俺は俺の仕事をするとしよう。


まずは水源の確保、これはウーテに頼んで食堂専用の水を引っ張れるようにしよう。


他の所から引っ張って来てもいいが、衛生上何かあってはいけないし。


後は配管だがこれもオレイカルコスで解決、後は配管をどう這わせるかだが……これも食堂の近くに給水と排水を組み込めば大丈夫だろう。


早速やってしまおうということで、まずは材料の準備。


ウーテは哨戒があるらしくしばらく帰って来ないので、先に配管だけ済ませてシンクの材料を準備して帰りを待つことにするか。




倉庫に行って想像錬金術イマジンアルケミーで必要になりそうな量の塊を錬成、その後ケンタウロス族に食堂前へ運んでもらう。


「今日は何をされるのですか?」


「食堂で調理してくれているドワーフ族のために洗い場を作るんだ。

 わざわざ水を汲みにいって大変だったみたいだし。」


「なるほど……もしかしたら牧場にもあれば喜ばれるかもしれませんね。」


確かに、牧場も水を使うことはあるだろうしあってもいいかもしれないな。


だが実際に現場の声を聞いてみないと分からないな、そこまで必要じゃなければ設置しなくてもいいし。


「デパートで皆に書いてもらったアンケートの集計が終われば話し合いを開くよ。

 それまで聞いてもらって必要であれば要望を出してくれ、その後対応するから。」


「分かりました、そのようにしますね。」


結構仕事が溜まってしまっているからな、絶対しなければならない事以外は極力後回しにしたい。


見回りもアンケートの集計が終わるまで出来なさそうだし、もし早急に必要なら意見が出ててもおかしくなさそうだからな。


だが、絶対必要そうな厨房でもそういう声が挙がってないのでそういう発想がないのかもしれない……そもそも上下水道が整備されてないから当然かもしれないが。


「では私はこれで、また何かあればお声がけください。」


「いつも済まないな、助かったよ。」


ケンタウロス族と別れてウーテの帰りを待つ、聞いてた時間によるとそろそろ帰ってくるみたいだが……お、帰って来たみたいだな。


俺はウーテに向かって手を振ると、ドラゴンの姿のままこちらへ向かってくる。


こうして正面から向かってくると結構な迫力だ、流石ドラゴン。


「村長、どうしたの?」


ウーテに事情を説明、理解してもらえたようで早速シンクを設置しに向かおう。




想像錬金術イマジンアルケミーでオレイカルコス製のシンクを作製、思いのほか時間が経っていたのでその後配管を設置・埋設まで済ませた。


想像錬金術イマジンアルケミー、本当に便利だな。


そしてウーテに水を発生させてもらって動作チェック――うん、バルブの開閉も問題無いな。


ウーテの能力で発生した余剰分の水は排水に繋げているので溢れることは無い、これで完成だな。


「シンクが完成したぞ、これで水も使い放題だ。」


「おぉぉ、まさか今日のうちにやってくれるとは!

 感謝するぞ!」


ドワーフ族は早速シンクを使って作業を始める……分かったように使っているけど本当に上下水道が無い世界で生きてきたんだよな?


適応力が凄い、もしかしたらだがドワーフ族は考えたり慣れたりする能力に長けているのかもな。


「私の仕事はこれで終わりかしら?

 哨戒から帰ったし温泉でゆっくりしてきていい?」


「あぁ、呼び止めてすまないな。

 ゆっくり休んでくれ。」


ウーテはかなり温泉が気に入ったらしく、ウッキウキで家に着替えを取りに戻っていった。


さて、もう少ししたら宴会の準備が始まるだろうし食堂に長居しても邪魔だろう……俺も退散して時間までアンケートの集計に取り掛かるとするか。

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