第267話 シュテフィに頼んでドリアードを異世界に送り込んでもらった。

デパート初日、妻達はカールを連れて朝早くに家を出発。


カールはいつも寝てる時間なのに頑張って起きていた、出発前には目をこすって必死に耐えていたけど。


大丈夫かな、途中で寝ると大変そうだけど。


だが早いうちから色んな経験をする事は悪いことではないし、参加して今後どうするかカールに聞くのもいいだろう。


色々な物に興味を持っていると、想像錬金術イマジンアルケミーに間違いなく活かせるし。


さて、俺は朝ご飯を食べてペトラとハンナを奥様方に預けてシュテフィの所へ行くとしよう。


それと精霊樹がどういったものかをドリアードに聞かないとな、シュテフィに頼む時に同席してくれれば助かるんだが。


呼んでみたら何とかなったりしないだろうか?


そう思った俺はドリアードの召喚を思い浮かべる、すると絶賛睡眠中のドリアードが目の前に現れた。


パジャマにナイトキャップとかなり満喫して寝ている、この分だとどこかにベッドもあるだろう。


床に呼んでしまったけど、怒られないだろうか。


「うぅ……ん……。

 ベッドがかたぁい……むにゃ。」


猫のように床をモミモミしながら寝ぼけているドリアード、どんなにやっても固いままだぞ。


気持ちよさそうに寝ているので、毛布だけ掛けて朝食を食べに食堂へ行くことに。


その足でペトラとハンナを預けるとするか。


帰ってきたら怒られそうだけど事故だと弁明することにしよう。




ペトラとハンナを預けて朝食を食べたので一度帰宅。


ドリアードはまだ床で寝ていた、毛布で簀巻きになったような状態で。


寒かったのだろう、花の季節とは言え朝はまだ冷えるし。


「ドリアード、起きてくれ。」


これからシュテフィの所へ行くので流石に起こすことに、昨日寝るのが遅かったのだろうか?


「うぅん……おふぁよ……。」


毛布から手だけ出して目をこすり出すドリアード、これだけ見ると本当に子どもみたいだ。


「あれ、村長?

 もしかして召喚を使ったのかしら、教えてなかったのに。」


起きて状況を把握したのだろう、俺に質問してきた。


「知ってたなら教えてくれてたらよかったのに。

 出来るのかなと思って試してみたら出来てしまったんだよ、まさか寝てるとは思わなくて。」


「昨日ちょっと遅くまでお酒を楽しんでたからねー、ごめんごめん。

 で、召喚を使ったってことは何かしら用事があるんじゃないの?」


「そうなんだよ、実は――」


俺はシュテフィの能力と精霊樹の確保の可能性を説明。


ドリアードはそれを聞いて快諾、というより異世界に興味を持っているみたいだ。


もしかして探しに行くつもりだろうか、だが俺が前の世界に行くのと違って完全な異世界なら縁もないし戻って来られるだろう。


それに何かしら自然があればドリアードは瞬時にそこへ移動出来る、この世界から一時的にドリアードが居なくなるのは怖いが様子を見る限り大丈夫だろうな。


「それじゃシュテフィのところへ行くか。

 今の時間ならダンジョンで鉱石を掘っているはずだし。」


「分かったわ、それじゃ行きましょうか。

 ……でも、私も朝ご飯食べてきていいかしら?」


お腹は空かないはずだが、よっぽど食事が気に入っているのだろう。


村自体が俺とドリアードを結ぶ契約だし、満足してくれないと何かしら不利益が起こりそうなので承諾。


俺としては早くしたかったが、思えば急ぐことでもないし大丈夫か。


「それじゃあ俺はシュテフィの所へ行って事情を説明しておくから。

 食べ終わったらダンジョンへ来てくれ。」


「分かったわ、今日はハンバーガー食べよっと!」


寝起きから元気な事だ……いや、胃もたれとかいう事は無いし食べたいものが食べれるのだろう。


ちょっと羨ましい。




「――という訳なんだが、何か心当たりある世界を知ってるかな。」


「突拍子も無い話ね、精霊樹と言われてもどんなものか分からないと。

 世界樹とやらが生えてる世界は知ってるけど、それと同種なのかしら?」


そのあたりはドリアードに聞かないと分からないが、近しい物を感じるしそこから当たってみるのもいいだろう。


というか聞いても異世界の事だし分からないかもしれない、実物を確認するのが一番だろうな。


「あ、話は変わるがシュテフィに聞きたいことがあるんだ。

 精霊を使って身体能力を向上出来るんだろ、あれって使用後とか体に負担はあるのか?」


これ以上精霊樹について話しても進展しないので個人的な質問をしてみる。


「特に無いわよ、魔力を身体能力に回してるようなものだから。

 自分の限界以上の向上も可能だし、それをしたからと言って動けなくなるなんて事は無いわ。

 ただ魔力の消費は上昇量に応じて高くなるし、少しだけでも結構な魔力を消費するからそれだけ注意すれば大丈夫よ。」


「ちなみに、シュテフィが昨日ローガーと戦っていた時はどれくらいの魔力を消費してたんだ?」


「私の魔力の半分くらいかしら?

 それくらいしないとローガーと張り合えないし……ヒルデガルドさんに両手短剣の才があるから是非って言われてるんだけどね。

 徒手格闘が好きだから断ってるけど、負けっぱなしはちょっと悔しいから今度習ってみようかとも思ってるわ。」


村で一番魔力量が多いシュテフィの半分って……いくらアラクネ族の装飾品で魔力量が増えてるとは言え注意して使ったほうが良さそうだな。


あそこまで上昇させなければもう少し抑えれるんだろうけど。


今度試しに使ってみておこう、どれくらい魔力を使うか知っておきたいからな……その時はシモーネに同席してもらってどれくらい減っているか確認してもらうか。


だがシモーネの調子次第だな、今のところ大丈夫だとは言ってたが無理はさせたくないし。


「ほまはへー。」


シュテフィと話をしていると、後ろからドリアードの声が聞こえる。


ハンバーガーを口いっぱいに頬張りながら、しかも両手にハンバーガーとフライドポテトを抱えて。


行儀が悪いからやめなさい。


「大精霊がなんて格好で歩いてるのよ……。」


シュテフィも呆れている、ドリアードはもっと威厳を出していいと思うぞ。


「美味しくてつい、それにこれだけ食べてたら待たせ過ぎると思ったのよ。

 それで、何か精霊樹について進展はあったのかしら?」


俺はシュテフィと話してめぼしい世界があることを説明、それを聞いたドリアードはふんふんと頷いた後少し考えて口を開いた。


「その世界樹ってこんな感じだったかしら?」


ドリアードは近くの石を拾って地面に絵を書き出した。


すごい分かりやすいし上手い……こんな能力があったとは。


「そうそう、こんな感じだったわよ。

 あ、でも花も咲いてたわね……これは精霊樹って花が咲くのかしら?」


「相当環境が良ければ咲くはずよ。

 ということは空気中の魔素も豊富で土壌もしっかりしてる世界なのね。」


「理性のない魔物しか住んでない世界だから環境が破壊されてないのかも。

 私もこの村に来てそういう知識を得たけど、そういうことじゃないかしら?」


「文明は無いけど生命がある世界か、珍しいわね。

 とりあえずその世界に行って苗木があればそれを、無ければ種を拝借してきましょうか。」


シュテフィとドリアードの会話が終わり、シュテフィがすぐに異世界への扉を開く。


「それじゃ行ってくるわねー。」


「気を付けてな、必ず帰って来てくれよ。」


俺は異世界の扉をくぐるドリアードを見送る、帰って来てくれないとこの世界が困るから本当に気を付けて欲しい。


分からない事があったから教えて欲しかったけど、質問する間もなく行ってしまったので帰って来てからでいいか。


「それじゃ村長、私は仕事に戻るから。

 ドリアード様が帰ってきたらまた呼んでちょうだい。」


「分かった。」


そう言ってシュテフィは採掘の仕事に戻っていく、そこでふと気づいた。


まさか……ドリアードが帰るまで俺ってここから動けない?


早く帰って来てくれよ、やりたい仕事が無くはないし鍛錬所にも行きたいから。

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