第159話 いずれ来る未来の対策を取ろうとしたら、大事になりそうだ。
「珍しいですね、村長がここまで鍛錬を続けられるなんて。」
ドワーフ族に刀を打ってもらえると言われてから1週間、まだ出来たという報告は無いが俺は少しでも自分の刀を使うために鍛錬所に通っている。
今は基礎的なストレッチとトレーニングしかしてないけどな。まずは体を作らないとダメだと言われたし。
「自分だけの武器が手に入るんだ、最初は観賞用にと思ってたが武器として作ったなら使わんと勿体ないって言われたんだよ。
それでちょっとな、まだまだ使うには程遠いけど……まぁ頑張ってみるよ。」
鍛錬を見てくれているウェアウルフ族は「なるほど、それはいい動機です。」と言いながら微笑む。
俺もいつか運動はしなきゃダメだと思ってたしいい機会だ。
それより。
鍛錬所でリッカが刀術を教えているのはどういう事なんだろう、というか汎用の刀ってもうそんなに作れているのか。
「あ、リッカさんが刀術を教えてるのが気になりますか?
何でもどの種族に技術提供をしようとしても、専門家で無い以上何も教えてもらうことが出来ずしょぼくれていたら鍛錬所が目に入り、そこで刀術の訓練をしていたのを皆が見て教えを乞うているところです。
もちろん我々も他の武器の扱いや体の使い方を教えていますよ。」
なるほどな、人間領の生活や仕事に役立つ技術は手に入らなかったのは可哀想だが、戦闘技術も立派な技術だ。
魔物の討伐や冒険者なんかには大いに役立つだろう、良かったな。
俺もリッカが居る間に刀術の訓練に参加出来るようにならないと……だが焦ってもしょうがないのでやれることをやることにする。
見回りと作物の錬成があるので今日の訓練はほどほどにして終了、それと同時にリッカも鍛錬所から出てきた。
「お、もう指導は終わりか?」
「終わらせてもらったのよ、この後村長の奥様方と人間領の町の造りを説明することになってるから。
その後はケンタウロス族の所へ行って人間領に売ってる服のデザインを教えに行くわ、技術は教えれなかったけど知ってるアイデアを案外欲しがられててね。
その代わりに人間領では絶対出来ないことをさせてくれるらしいけど、村長何か知ってる?」
色々ありすぎて思いつかない、ドラゴン族の背に乗って空を飛んだりケンタウロス族の速さで地上を駆けたり、そういうのは絶対にここでしか出来ないからな。
魔族領でもケンタウロス族は人を乗せて馬車を引いているが、速すぎると怖がられるので前の世界で言う原付程度のスピードしか出してないらしい。
首都内となるともっとゆっくりだからな、ケンタウロス族の本気は村でしか味わえないぞ。
「色々あるけどどれかは分からないな、でも妻達やケンタウロス族が言うならきっとすごいことだと思うから期待しててくれ。」
「ちょっと怖いけど期待してる、この村は驚かされることが多いから……村長は数少ない人間だし仲良くしてね?」
別に誰であろうと友好的であればちゃんと接するつもりだから安心してくれ。
リッカと別れて作物の錬成と収穫、今日はカタリナがリッカと話をしに行っているので他のプラインエルフ族に手伝ってもらった。
どうも小麦の減りが早いらしい、何かに使っているのだろうか?
だが
横で控えていたケンタウロス族とミノタウロス族が積み込みと倉庫への運搬を手際よくやってくれたので30分もかからず終了。
遠目でシュテフィが険しい顔でこちらを眺めているのでどうしたんだと聞いてみると、「この村は村長がいる限り一生安泰ね……。」と険しい顔そのままで言われた。
理想としては俺が居なくてもこれに近い状況になることだけどな、流石に
作物の錬成と収穫が終わったので次は見回り、特に異常は無いと思うがやっておかないと落ち着かない。
もしかしたら新しい発見やその時に気付ける何かがあるかもしれないしな。
牧場に立ち寄るとチーズとバターの生産はかなり順調のようだ、小麦も補充したし今度はピザを作ってリッカの歓迎会でもするとしようか。
バターとチーズを宴会で使いたい旨と伝えると、新しい料理が食べれることを察したのだろうか牧場の人たちは歓喜の雄たけびと共に作業へ取り掛かり出した。
確かにピザは美味しいがそこまで期待されるとちょっと不安になる、出来れば通常通り仕事をしてほしい。
牧場から出て各種族の居住区を回っていると、クズノハから声をかけられる。
「村長、待たせたがダンジョンコアの生成が終わったぞ。
まだ誰も所有権を有しておらん、出来たてホヤホヤじゃ。」
「やっと出来たか、急いではなかったが欲しいことに変わりはなかったからな。
早速使いたい……と言いたいがこれについては話し合うことがあるから受け取るだけにしておくよ。」
「おや、既に何を出現させるか決まっておるかと思ったのじゃが。
じゃがこれは村長に渡すと約束した品じゃ、自由にしてくれて構わぬぞ。」
クズノハの言う通り何を出現させるかはある程度決まっている、だがこのダンジョンコアの所有権を俺にするには情報が足りない。
ちょうどいいのでダンジョンに行ってダンジョンコアに知りたいことを聞いてみるとしようか。
『おーい、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?』
俺はダンジョンに行ってダンジョンコアに頭の中で話しかける、どういう理屈か知らないがこれで話しかけれるんだよな。
『うん、大丈夫だよ。
今日は何を新しく作るの?』
『別に新しい物を作りたいわけじゃないんだ、俺が死んだ時にダンジョンコアの所有権はどうなるのかと思ってな。』
そう、2つ目のダンジョンコアは俺に何かがあった時や寿命を迎えた時のためのもの。
そのためにも信用出来る人で、かつ一番長く生きる人に所有権を持ってもらわなければならない。
『所有者が死んでもダンジョンコアが破壊されない限りダンジョンは生きてるよ。
ただ、今みたいに意思疎通は出来なくなるからずっとその仕様のダンジョンが稼働するのが君には問題かもね。』
『そういう仕様か、少し安心したよ。』
『そんな話をするなんて、病気にでもなったのかい?』
『いや、俺は人間だから他の種族より寿命が短いんだよ。
まだまだ死ぬつもりはないが、先の事を考えれるうちに考えておこうと思ってな。』
だが今の会話で心配は少し無くなった、俺が死んでも今使っているダンジョンは稼働するから問題は無い。
だがずっと同じ仕様だと不都合があるかもしれないので、2個目のダンジョンコアは当初の予定通り寿命が長い信用出来る人に使ってもらうのがいいだろうな。
食事の時に妻達にダンジョンコアの件を相談する、すると意外な答えが返ってきた。
「人間ってそんなに寿命が短いんですか!?」
そうか、人間と接するのは俺が初めてだろうからな……話してなかったし知らないのも仕方ない。
寿命が短いことに相当驚いてショックを受けていたので、夫婦を解消されるかと不安になったがそんなことはなかった……良かった。
それよりこの先のことを真剣に話してくれているのでありがたい。
「3人で真剣に話しているところ悪いが、このダンジョンコアは……。」
「しばらく開様が持っててください、村の族長総出で明日話し合います。」
あ、割と大事になりそうだ……寿命が短いと言ってもまだ60年くらいは生きると思うんだけど。
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