第18話 ワイバーンの肉で宴会、メアリーの気持ち。

クルトがワイバーンを狩ってきた、一人で。


哨戒を頼んでたんだが、まぁそれはいい。


大丈夫だったのか?


「ワイバーンが居たって、ケガはないのか?」


「僕がいくら子どもでも、ワイバーンに遅れはとらない。

 それに美味しいんだよ?」


ケガがないならそれでいい。


「私も食べたことないです。

 ワイバーンなんて見たら隠れてやり過ごしていたので……。」


それはそうだろう、小型竜とは言えかなり大きい。


とりあえずデニスを呼ぼう。


「デニスさんを呼んできますね。

 もしかしたら調理法を知ってるかもしれませんし。」


メアリーと考えてることが一緒だった。


頼んだぞ。




メアリーがデニスを呼んでくると、ラウラも一緒に来た。


手伝いの途中だったんだな。


「ワイバーンか!

 ワシが若いころ一度食ったことあるが、非常に美味じゃったぞ!

 開どの、今日は宴会じゃ!」


前に歓迎会しただろう、またやるのか?


「クルトどのの歓迎会ということでよかろう!

 ワイバーンの肉だぞ、次食べれる機会はいつ来るかわからんぞい!」


確かに。


クルトが滞在してる間しか食べれないだろうし、哨戒の度に見つかるとも限らない。


ならみんなで楽しくいただこう。


ラウラはクルトに近寄って心配してる。


クルトが出ていくときどうするんだろうな、ラウラは。


目が恋する乙女な気がする。


メアリーも嬉しいやら悲しいやらという表情だ。


当人の判断に委ねるしかないかな。


とりあえず宴会の準備だ。


「メアリー、ローガーとハインツに宴会をすると知らせてくれ。

 俺はデニスたちの準備を手伝う。」


「わかりました、伝え終わりましたら私もそちらに向かいますね。」


伝言を頼むと、いつものメアリーに戻った。


先のことを考えても仕方ないからな。




ワイバーンの肉だが、どんな肉かも見たことないので想像錬金術イマジンアルケミーではどうすることも出来ないだろうな。


クルトに頼み、調理場まで運んでもらう。


ドワーフ族がワイバーンを隅々まで触って調べ始める。


4人で話し合いをした後、デニスが俺に話しかけてきた。


「開どの。

 牙を1本もぐから、それで包丁を作ってくれんか?」


「それはいいが、ここにある包丁じゃダメなのか?」


「ワイバーンの鱗と骨はとてつもなく硬くての。

 よほどの業物か、それを上回る強度のものじゃないとキレイに捌けん。

 ここの包丁じゃ刃がダメになって終わりじゃ。」


その鱗を貫いてるクルトの牙、やっぱドラゴンってすごいな。


牙がもがれたので包丁を錬成する。


「希少素材のワイバーンの牙が包丁って……。」


メアリーが悲しそうにしてたが、まだ牙はあるから俺の倉庫に入れておくつもりだ。


何か欲しいものがあったら言ってくれ。


「ほほ、思った通りじゃ。

 この包丁なら楽に皮も骨も切れるでの。

 こっちは任せておけ、開どのたちは広場の火おこしを頼んだぞい。」


わかった、そっちは任せたぞ。




火おこしに行くと、クルトが弱めにブレスを吐いて終わった。


俺がすることないじゃないか。


火を眺めてると、クルトが疑問そうな顔をしてこちらに話しかけてくる。


「ワイバーンの牙ってすごいものなの?

 僕、まだ牙の生え変わりがあるから抜けたやつが欲しいならあげるよ?」


「ドラゴンの牙をいただける!?

 ワイバーンの牙なんて目じゃないくらいの素材ですが、お父さんやお母さんに怒られませんか?」


メアリーがびっくりしてるが、親が欲しがったらこちらは引き取れないのはもっともだ。


「怒らないんじゃないかなぁ、今までの生え変わりでも保管なんてしてないし。

 そろそろ抜けそうだから、抜けたら持ってくるね。」


「わかった、無理に抜かなくていいからな?」


「それは痛いからしないよ、大丈夫。」


ドラゴンでも痛いことがあるんだな。


ラウラ、どの歯が抜けそうか気になるからってクルトの口に顔を突っ込むな。


クルトも困ってるぞ?




ワイバーンを捌き終わり、焼肉の準備が出来たので宴会開始。


味はデニスの話通り極上だった。


前の世界含めて、今まで食べた肉で一番美味い。


「クルトさん、またお願いします!」


という声がちょこちょこと聞こえる。


ケガして親と話すときに怒られたら怖いから、あんまり無理強いするなよ。


「そっか、クルトさんは永住するわけじゃないですもんね。」


ウェアウルフ族の子どもがちょっとしょんぼりしてる。


「僕は出来れば永住したいんだけど。

 親がなんて言うか次第なんだ。」


クルトがラウラを抱き寄せてそういうと、ヒューヒューと指笛の音が聞こえる。


ラウラの顔が真っ赤だ。


メアリーは羨ましそうに2人を見ている。


とりあえず親待ちだな、クルトの話通りなら問題は起こらないとは思うが。


ここに永住したいとなると少し話は変わるだろう。


本人の意思と説得次第だな。


談笑の中、ワイバーンの肉が無くなり宴会はお開き。


みんなちゃんと片付けをするんだぞ。




ワイバーン1匹、かなりの肉の量だったのだが一晩で全部食べ終わった。


美味しかったから、みんな食が進んだのだろう。


氷の季節になると今あるもので生活しなければならないし、その前に英気を養えたな。


デニスがワイバーンの骨と鱗付きの皮を持って俺の家へ。


「武器の素材になると思うぞい、倉庫に入れておくぞ。」


「あぁ、わざわざありがとう。

 何が作れるかわかったりするか?」


「何でも作れると思うぞい、剣・槍・防具……。

 小型とは言え竜じゃ、どこも万能素材だからの。」


量に限りはあるし、話し合いをして決めるか。


「じゃ、倉庫に入れておくでの。

 おやすみじゃよ。」


「あぁ、おやすみ。」


さて、今日はもう寝よう。




寝る準備をしてベッドに行くと、メアリーが俺のベッドに居た。


どうした?


「開様、お話があります。」


真剣な顔だな。


「私のことをどう思っていますか?」


「どうって、一緒に住んでくれて補佐をしてくれている……」


「そういうことではございません。」


話しているうちに遮られた。


「言い方を訂正します。

 私のことを女として見てくれていますか?」


酔った勢いなのか本気なのか。


そう思いつつメアリーを見る。


……変わらず真剣な表情だ。


本気なんだろうな、なら真剣に答えよう。


「魅力的な女性だと思っている。

 今まで見てきた女性で一番だと断言してもいい。

 ハインツに夫婦と間違われてから、意識していたさ。

 だが女性とはあまり縁がない人生を送ってきたからな、自分に自信がないのが現状だ。」


「開様は私にとって魅力的な男性です。

 それにこれ以上ないであろう生きる力と助ける力を持っている、この先同じような人とは出会うことはないと断言出来ます。

 お願いします、私を妻にしてくださいませんか?」


これ以上ない告白をもらった。


この世界の女性は強いのか、メアリーが強いのか。


ここまでされたら応じなければ、男の沽券に関わる。


「俺でよければ、是非。

 妻になってくれメアリー。」


俺が返事をすると、メアリーは涙を流して抱き着いてきた。


「大好きです、開様……。」


「ありがとう、俺もメアリーが好きだよ。」


抱きしめて、唇と肌を重ね、夜は更けていった。

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