第348話 マルクス城のトラブルが全て片付いたので村に戻った。

俺は周りの天使族にアンドレアはどこに居るか聞き、謁見の間に居るだろうということを聞いてそこを目指す。


ケンタウロス族とその背中に背負われているベッドで寝てるマティルデを見て、変な声を出したり懐疑的な視線が送られたりしてるのを背で感じながらだけど。


特に何もしてないから。


そして謁見の間に到着すると、アンドレアは玉座から凄い速度で立ち上がりこちらに一礼。


そんな畏まらなくてもいいのに。


「アンドレア、実はな――」




俺はホープストーンの正体やウンディーネの事など、この短時間で起きたことを説明する。


アンドレアは全てを理解出来てないのか変な表情になっているけど。


気絶しているとはいえ母親が娘の前でしていい表情じゃないぞ、というか人前でしちゃダメだ。


俺達はアンドレアの気を確かにするため必死に声をかける。


努力の甲斐あって何とかすごい表情のまま気絶するのを避けることが出来た、ケンタウロス族が途中小声で「放っておいてもいいのでは?」と言ってたのはちょっと怖かったけど。


「……とりあえず現状は把握出来ました。

 偶然とはいえ大精霊であるウンディーネ様にご迷惑をおかけしているとは……誠に申し訳ございませんでした。」


「いいわよ気にしなくて。

 辛かったけど天使族に非は一切無いんだからね。」


ウンディーネ……口は悪いけど根は悪くないんだな。


てっきり何か罰を与えたりするのかと思ったけど、そんな事は無くて一安心。


「ところで、ライフラインの水が復旧したと報告がありましたけど……。」


「それは私の能力で解決しておいたわ。

 ただ出すだけなら私でも出来るし。」


「そうだったんですね、ありがとうございます。」


その後はマティルデも起きて、村に滞在する際の注意点や報告の仕方等々を全員で話し合った。


今後も交流は続けたいし定期的な報告をしたいという事で、転移魔法陣を設置する許可も貰えたし。


秘術なので心配ではあったが、立ち入り禁止にしておけば大丈夫らしい。


特に移動する場所も無いし、地上を管理する程人手は余ってないそうだ。


今日滞在してるだけでも結構のほほんとしてる雰囲気だったけどな、もしかしたら俺がそう思っているだけかもしれない。


「それでは……マティルデをよろしくお願いいたします。」


「分かった、責任持って村で預からせてもらうよ。

 マティルデも辛くなればいつでも帰っていいからな。」


「天使族の長の娘として仕事は全うしますのでご安心を。

 では、行ってきます。」


そうして俺はこの場に居る全員と瞬間移動。


俺一人で触れるのは不可能なので全員に手を繋いでもらった、これでも大丈夫なんだな。


これは今後に役立つ事を知ることが出来た、大人数の移動もこれで一気に楽になる。


そして俺はマティルデの住む家を想像錬金術イマジンアルケミーで作り村の案内。


日も暮れかけていたので案内板に貼ってある地図を拝借し、空中から施設の説明をしたくらいだけど。


「――これくらいかな、他に何か質問はあるか?」


「今のところは大丈夫です、分からなければまたお尋ねしますので。

 村長でなくても他の人に聞けば大丈夫でしょうか?」


「魔族か俺以外の人間じゃなければ誰でも大丈夫だぞ。

 魔族と人間は各領から訪れてる客人だからな、もしかしたら詳しい人が居るかもしれないがやめておいたほうがいいだろう。」


「分かりました。

 それと……非常に言いづらいことがあるのですがいいですか?」


「気にせず言ってくれていいぞ、どうしたんだ?」


「先ほど帰って来た方々以外にも、食堂で技術交換をしていた方が居たと思うのですが……そちらの方は帰って来なくてよろしいのですか?」


―-あ。


俺はその言葉を聞いて慌ててデニスを迎えに行く。


マティルデが言ってくれなかったら俺一人じゃ思い出せてなかったかもしれない、ありがとうマティルデ。


そしてごめん、デニス。




それからマティルデとも別れ、俺は風呂に入りに行った。


すると、オスカーとイフリートが仲良く談笑しながら風呂に入ってるのが見える。


ドリアードが樹、ウンディーネが水を纏っているようにイフリートは擬態を解くと火を纏っているんだよな。


風呂の温度は大丈夫かなと、恐る恐る手で温度を確認してみるといつもの温度で一安心。


「おぉ、村長帰っておったのか。」


「少し前に帰ったよ、それより二人は仲良くなったんだな。

 確かにオスカーも火を使うし、気が合うと言えば合うのか。」


「いや、ワシらは契約したぞ。」


それを聞いた俺は吹き出した後「はぁ?」と久々に素っ頓狂な声を出してしまった。


「驚くかもしれないが本当なのだよ。

 これほど安定した全体集団は過去に無い、そこに神が住んでいるとなれば火を一番強く扱えるオスカー殿と契約するのも道理というわけだ。」


「いや、だがオスカーは不死じゃないぞ?」


「それだが、不死にしてもらおう。

 シモーネはキュウビに先立たれるのは悲しいが……まだまだ天寿を全うするのに時間は残されているはずだ。

 微力ながら村長の神の仕事を助けさせてもらうとするぞ。」


オスカーほどの実力者の力が微力なら、それ以外は力にすらならないと思うけど。


「分かった、あれは想像剣術イマジンソードプレイじゃないと出来なさそうだからナイフを持ってる時にさせてもらうよ。」


「それと村長。」


「どうした?」


俺とオスカーが会話していると、イフリートが何かを思い出したようで俺を呼ぶ。


「シルフがこの村に訪れている、どうやらドリアードと私がここに居るのをかぎつけたらしい。

 もし見かけたらよろしくしてやってくれ、少し元気過ぎる節はあるが悪い奴ではないのだ。」


「分かったよ。」


マルクス城で思っていたことがまさか本当に起こるとは……大精霊全てが滞在してる村ってパワーバランス的に大丈夫なのだろうか。


ドリアードを見る限り何かあれば駆けつけてるみたいだけど、そのあたりは後で大精霊達を集めて聞いてみるか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る