第215話 次のデパート開店に向けて新しい商品を探してみた。
稔の季節も半分くらい過ぎただろうか、ここ最近は昼間でも少し肌寒く感じる日が多い。
氷の季節に開店するデパートの準備を進めなきゃな……と言っても抽選会で当選した人に配る呪いを施した装飾品と、村から出品する商品くらいだけど。
なので俺がすることって実は何も無い、村の住民に全て任せて大丈夫。
なのだが……村長としてそれはどうかと思うので、見回りがてらやることを探そうと試みることにした。
もしかしたら出品する予定の無い物で、取り扱えば好評になりそうなものがあるかもしれない。
出来るのはそれくらいなんだよな、
前の世界にあってこの世界で再現可能な物を売りに出したりしてみようか、アルミも出来たし自転車とか割と需要があるかもしれない。
それは後でやるとして、今は村の見回りだな……それが終われば鍛錬所で少し体を動かすとしよう。
牧場を久しぶりにじっくり見回る、牛や羊がゆったりと歩きながら草を食べてるのを見ていると癒されるな。
「村長珍しいですね、何か御用ですか?」
管理をしているケンタウロス族に声をかけられる、デパートに出品出来る物を探していることが用事といえば用事か……待てよ?
「そういえばチーズやバターって大分量産出来るようになったのか?」
「村長が牧場に向いた土を錬成してくださってるので、元気な個体が増えて牛乳がたくさん搾れるようになりましたからある程度は。
村で使うと大分消費されてしまいますが……この調子で行けばどんどん生産量は増やせそうです。」
今は少ないが将来的には増えるという事だな。
「チーズやバター、今度のデパートに出してみないか?」
「え、でも食品はあまり出されてなかったように思いますが……。」
「だからこそだ、そこに村でしか作れないものがあれば目玉商品になるかもしれない。
保管に関してもプラインエルフ族が一人ついてくれれば生活魔術で何とかなるだろう、村の分は少し我慢しても大丈夫なはずだが……どうだ?」
俺がチーズやバターの出品を進めるとケンタウロス族は考え込む、すぐに断らないということは挑戦したい気持ちはあるのだろう。
「少し考えます、美味しいのは間違いないですが生産が間に合わないかもしれないので……搾っては運んでの繰り返しで結構時間を取られるんですよ。」
「それならタイヤを付けたタンクを利用するのはどうだ?
搾った牛乳をそのタンクに保管して運べば、往復する時間も減るんじゃないか?」
タンクはアルミで作ればいいし、蛇口をつければ中に入れた牛乳の取り扱いも楽になるだろう。
それくらいは
「そのようなことが可能なら是非!
それがあれば今の搾乳量でも商品に出来るかもしれませんし、私達も楽になります!」
「じゃあ早速済ませてしまおう、
そう言って倉庫に行こうとすると「材料をお出しするのをお手伝いしますね。」と言ってついてきてくれることに。
確かにそれは有難いな、では頼むとするか。
倉庫についたのでアルミとゴムを出してもらう、蛇口に真鍮があれば一番なんだけど……合金ということは知ってるが何の金属を混ぜればいいかわからない。
なので純アルミ製の蛇口とタイヤ付きタンクを作製、完成品がここにあっては邪魔なので完成品の設置を行わず、ケンタウロス族にどこへ設置するか聞いてそこまで連れて行ってもらう。
「ここで大丈夫です、ここなら使うのに利便性が高いので。」
ケンタウロス族が指し示した場所にタンクを錬成、これで酪農が楽になれば嬉しい。
早く使いたいのかとんでもない速さでタンクを引っ張って牛の所へ向かうケンタウロス族、そんなに急いで行くと危ないぞ。
というか牛がびっくりして逃げてるじゃないか、やめてやってくれ。
しばらくして落ち着きを取り戻したのか乳搾りが始まり、搾れた牛乳をタンクに移す。
「村長すごいです、これすごい便利ですよ!」
子どもみたいに喜ぶケンタウロス族、作って良かった。
「また何か改善点が思いついたら直すから教えてくれよ。
俺は別の所へ見回りに行ってくるから。」
「分かりました!」
俺はバターやチーズの生産量が増えますようにと願いながら牧場を後にする、他に何か商品になるものがあればいいんだけどな。
その後村全体を回ったが、特に新規商品に繋がりそうなものは無かった。
後は俺の自転車くらいかな……タンクの時に一緒に作ってしまえばよかったな。
振り向くとオスカーが立っていた。
「どうしたんだ?」
「ダンジョン攻略部隊の編成が完了したのでな、ダンジョンコアを手に入れるなら村長にも付いてきてほしいのだが。」
ダンジョンコアは欲しい、1つはメアリーに渡してるけどまだ使ってないんだよな。
もう1つあれば村に活かせそうな使い方は思いついてるので是非欲しい、クズノハは魔族領に行くから頼みづらくなるし。
「もちろん行くぞ、ちなみにどんな感じに編成したんだ?」
「シモーネ・クルト・ウーテ殿・ウェアウルフ族・ケンタウロス族・リザードマン族・ラミア族にシュテフィだな、もちろんワシも行くぞ。
都合が悪ければ編成を練り直すが、どうだろうか。」
「都合は悪くないが珍しい組み合わせだな、ラミア族とシュテフィが行くとは思わなかった。」
「戦闘力を示しておきたいそうだ、シュテフィとは手合わせをしたことはないので楽しみではある。」
別に手合わせをしに行くわけじゃないんだからその考えはどうなのだろうか、魔物と戦うところを見たいって意味なんだろうけど。
でもそれは俺も少し楽しみだったりする、不意打ちとは言えドラゴン族に多少の傷を負わせた実力者だし。
ラミア族の魔術も気になる、少々腕試しのような感じもするがオスカーとシモーネが居れば安心だろう。
それにラウラも居るから索敵もばっちりだ、この構成で失敗する要素はない……そもそもそのダンジョンは既に9割攻略しているようなものだし。
「分かった、ダンジョンコアは確保したいし俺も向かうよ。」
「では明日の朝に広場へ集合という事で頼むぞ。
ワシは他の種族にもそれを伝えてくる、それとウルスラの世話を奥様方に頼まねば。」
オスカーは急ぎ足で伝達へ向かっていった、俺も妻達に伝えておかねばな。
「――というわけで明日から数日村を離れる、留守の間よろしく頼むぞ。」
「お任せください、ほぼ攻略済みのダンジョンですが気を付けてくださいね。」
「任せておいて、といってもいつも通りにしておけば村は機能するから問題ないけど。」
「私は何かあるまでは研究施設に行ってるわ、呼んでくれたらすぐに向かうから。」
妻達にも許可を得られたし、今日は明日の準備をして早めに寝よう。
俺は倉庫に行って色々見ながら持っていくものを考える、しばらく何を持っていこうか悩んでいるとウーテが声をかけてきた。
「持っていくものを悩んでるならポーションだけでいいと思うわよ、その面子で何かあると思えないし。」
俺にも何か出来ないか必死に考えてたが、やっぱりそうなるよな。
俺はポーションを数十個バックパックに詰める、準備完了。
そのまま少し悲しくなりながら布団に入る、俺も戦闘面でもう少し何か出来たらいいのになぁ。
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