第278話 遊戯施設で起きていた問題を1つずつ解決していった。
遊戯施設が出来て2日、デパートも無事終了して話の話題は遊戯施設へ一気にシフトチェンジ。
村の住民じゃない人達もあれは何かと気になっている、そりゃあデパートの近くにあんな建物が出来たら気になるよな。
だが、あれは試用期間で現在村の住民しか利用出来ない。
各遊びの簡単なルールブックに施設自体のルールを書いた告知物、そして少しでも遊べる人を増やしておかないと初心者だけが固まってしまっては面白くないからな。
そして村へ移住してきたサキュバス・インキュバス族もこれらに参加してもらっている、昨日から村へ徐々に移動してきているので簡易的な適性検査で接客適正が高い人を数人遊戯施設での仕事を請けてもらうことに。
後日しっかりと教育施設で適性検査や講義をするらしいけどな。
「村長、ジャガイモの在庫が心許ないとドワーフ族から言伝です。」
「分かった、すぐに補充へ向かうよ。」
ドワーフ族から言伝を頼まれたケンタウロス族が話しかけてくる、その背にあるのは大量の料理……が入った箱にシュテフィの能力で鍵をしたもの。
箱の中は時が止まってるので出来たてホヤホヤだ、注文が入ればここから取り出して提供すればいい。
空いた時間に作ってくれればそれでいいし、この案は名案だと思う。
そのための地下室だ、ここには入るだけ料理と飲み物を保管しておいてくれよ。
さて、俺はジャガイモの補充へ行かないとな……あそこで麻雀に勤しんでるカタリナを呼ぼう。
「カタリナ、ちょっとジャガイモの補充を手伝ってくれ。」
「これが終わったらでいいかしら、今オーラスだから。」
「オーラスならいいぞ、もう1回は無しだからな?」
「分かってるわよ、遊びにのめり込み過ぎないっていうのは私達で決めたものでしょう?
それにこれも遊んでるわけじゃないのよね、遊び方を教える人と教えられる人の視点両方を考えながら打ってるだけ……あ、それロンよ。」
俺と話しながら手番を進めていると、一切の無駄がない不要牌の切り方をして最速で和了。
点数こそ3900点だがこれでカタリナのトップでゲーム終了。
「ここ空くわよー。」
カタリナが周りに呼びかけると待機していた人がそこに入る、どうやらあの椅子が順番待ちらしいな。
「それじゃ行きましょうか。」
カタリナは早足気味に畑へ向かって歩いていく、ちょっと……俺を置いていかないでくれ。
「よし、これくらいあればいいかしら?」
荷車10台分のジャガイモを補充、そこまで時間はかかってないけどこれ以上求められると少し心配になる。
ドワーフ族からは両手で〇を作って返事が帰って来た、どうやらこれで足りるらしい。
「これで終わりだな、皆お疲れ様。」
カタリナを始めとしたケンタウロス族とミノタウロス族を労う、そして2種族はそのまま食堂へ向かっていった。
ジャガイモをたくさん見てたらフライドポテトを食べたくなったらしい、気持ちは分かる。
「そういえばカタリナに少し聞きたいんだけど。」
「どうしたの?」
「なんで皆あんなに麻雀が強いんだ?
俺も10年以上経験があるし、決して弱くないと思って紹介したゲームなんだけど……。」
「何でって……そんなの山を積む時に欲しい物が来るように積めばいいでしょ?
サイコロの目を操るのが少し難しいけど……。」
堂々とイカサマ宣言いただきました、説明するのを忘れてたよ!
おかしいと思ったんだ、あんなにバカスカと高い手が入るうえに物凄い速度で和了していくし……それにウーテなんて国士無双十三面待ちだぞ、配牌で入っていいものじゃない。
天和よりすごいんだもん、確率を計算するととんでもない桁数になりそうだ。
さっきの3900点は積み込みが賽の目で崩れたんだろう、だからさっさと手を作って和了したわけだ……どこに何があるかは大体分かってるから。
「それはイカサマだぞ、簡単に言うとルール違反だ。」
「え、そんなこと言ってなかったじゃない!?
テクニックとして認めてくれないの?」
「ダメだ、あまりにフェアな遊びじゃなさすぎる。
多少覚えてしまうのは仕方ないが、基本は分からないように山を作って適当にサイコロを振って配牌をしてくれ。
それにそのテクニックを認めてしまったら、もうジャンケンとほとんど変わりないだろ?」
それを聞いたカタリナは少し考えて納得してくれた、後でメアリーとウーテにも伝えてくれるらしい。
流澪はどうしたのかと聞いたが、そもそも積み込みを嫌っていたらしくやってなかったそうだ。
流澪らしいと言えば流澪らしいな、世代的にはネット麻雀勢だったろうし……牌を触ってイカサマというのは苦手だろう。
それに……流澪はここが出来てからずっとダーツエリアでダーツを投げている、カタリナと分かれて見に来たがやっぱり投げていた。
ちなみにクリーンエネルギー機構はほぼ完成しているらしい、足りない物があるらしいので今はそれの製作待ちとのことだ。
そろそろ村の夜も電気で明るくなるな、それ以外にも色々なことが出来そうだ。
この世界を壊さない程度に便利な暮らしをさせてもらおう、環境破壊が確認出来たらそれに関しては即刻中止をするつもりだし。
そんなことを考えながら流澪のダーツを見ていた、プロの実力に興味があったからな。
今はゼロワンをしているらしい、俺も過去にやったことあるが終わるのに1時間かかったぞ。
もう少しというところでバーストの嵐になるんだ、プロならサクっと終わるんだろうが素人にきっちりと点数を取れと言うのは酷な話。
楽しいからいいんだけど。
「あら拓志、居たのね。」
「見させてもらってるよ、ゼロワンなんだな。
今どれくらいなんだ?」
スコアボードを見せてもらうと第3ラウンドで残り142点、これは501のゼロワン。
つまり180点と177点を連続で決めている、この実力なら180点を2回取れただろうに。
「なんでこれ20のトリプルから19のトリプルなんて刺さってるんだ?
いくらプロでも慣れない環境ですっぽ抜けた偶然か?」
「そんなわけないでしょ、501を最速で終わらせるならそのスコアになるのよ。
ダブルアウトやマスターアウトが無ければそうじゃなくてもいいんだけど……。」
聞いたことのない単語を喋りながら流澪は的の前で矢を持って構えた。
体が一切ぶれず見たことない真剣な表情で狙いを定める、180と177を取ってるから残りは144点か。
色々作り方はあるけど、と思ったら流澪は迷いなく20のトリプルに2本。
その後は12のダブルへ入れて無事501終了、本当に3ラウンドで終わらせた。
嘘だろ……いや、流石プロというべきか。
しかしわざわざ12なんて狙いにくい数字のダブルで決めなくてもよかったのに。
もし狙うにしても12のダブルへ先に投げたほうがリスクを減らせると思うんだが。
流澪に質問していると、さっきのダブルアウトという単語の意味を教えてもらった。
ダブルアウトというのは、ゼロワンをあがる時にダブルで点をぴったりにしなければならない。
俺の知らないところで相当難しいルールでやってたんだな、それで2ラウンド目は19のトリプルに入れてスコアを偶数にしたわけだ。
狙った場所へ自由自在に入れれるからこそ出来る芸当だろう、プロになるまでの努力は物凄かったんだろうな。
「拓志は私のダーツ見てどう思う?」
「すごいと思うぞ、そんなポンポンと狙った場所へ投げれるなんて並大抵の努力じゃ無理だろうし。」
「実際その通り、相当努力はしたわ。
それと同時に色んなことに興味を持ったから、ダーツをしてない時間はそれをしていた……でもそれがダメだったのね。
私をダーツや剣道、主にスポーツ面で成功させたかった母に、化学や物理学で成功させたかった父の争いが始まったの、その中心はもちろん私。
1日10時間ずつ母と父について言う通りにしてたんだけど、1分1秒でも過ぎると罵詈雑言と共に暴力で攻め立てられたのよね。
で、いつしか10時間ずつが12時間ずつになって、私の時間は睡眠時間を含めて消えたの。」
ダーツを極めたに近い腕前に惚れ惚れとしていたが、流澪の過去を聞いてただすごいとは言えなくなった。
少し悲しそうな顔をしてる……だが気にはなっていたことではあるし、より深く流澪を理解するためには知っておかなければならないことだろう。
そして続きを話そうとした流澪が泣きだしたので抱きしめる。
「落ち着いてからでいいぞ、ゆっくり話してくれ。」
「ぅん……ありがと……。」
俺は流澪の背中を撫でながら抱きしめてやる、泣き止んで続きを話してもいいなら聞かせてもらうとするか。
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