第327話 神の提案についてしっかりと話し合った。
「ねぇ、人間をやめるのは拓志と私のどっちかでいいの?」
神の提案について流澪が質問を返す。
「うん、そうだよ。
いくら星の衝突とは言っても所詮は核を失って死んだ星だから、魔力っていう制限が無い神の力なら十分対抗しうるからね。」
「魔力という制限が無くなるってどういうことだ?
いくら人間をやめても魔力には依存するだろう、大精霊ですらそうなんだから。」
俺は神の言葉に疑問を感じたので質問をする、いくらなんでも魔力を不必要としたうえで魔術やこの力を使える生物なんて居ないはずだし。
それこそ神そのものにでも……まさか。
「君達のどちらか、神様デビューしよう!」
「「「「「何ィィィィィ!?!?」」」」」
神のとんでも提案にその場に居る全員が叫ぶ。
あの紳士だったイフリートも叫んでたな、それくらい異常な事なんだろう。
もちろん俺もビックリしてる、俺の寿命についても色々考えてたけど神になるなんて不可能だと思ってた。
「開 拓志とドリアードは契約してるから一番適任だけど、どうする?
ドリアードの力も強くなるしこの星は救えるし、いいことづくめだと思うんだけど。」
「神になった時のデメリットは何があるんだ?」
「開様!?」
人間でありたいと頑なに言っていた俺の態度を見て、メアリーが心底驚いた声を出して叫んだ。
俺だって人間として天寿を全うしたいけど、それより前に世界ごと滅ぶのは嫌だぞ。
どうにかしてこの世界を救えるなら、俺は人間をやめてでも救うつもりだ――それくらいこの世界が気に入ってる。
妻達や子どもも居るし、カタリナとの子どもとはまだ出会ってすらいない。
流澪やエルケとの子どもも作りたいし。
それに村の皆や魔族領・人間領の皆が大好きだ、俺が人間をやめて救えるならそうする。
「デメリットねぇ……特に無いよ。
強いて言うならこの星の管理者としてこれから生きていくことになるかな?」
「待て、それはお前の仕事じゃないのか?」
「星一つに対して神様は一人、これは超巨大な星じゃない限り神達の中で絶対のルールなんだ。
そして君が神になったら僕より世界の住民に慕われてる、核が君を新しい管理者として受け入れることになるのさ。」
色々とややこしいな……俺が神になればこの星は俺が管理することになるのは分かったけど。
だが星一つに対して神が一人というルールがあるとは思ってなかった、もし俺の住んでいたチキュウにも神が居るなら一体どの神が本物だったんだろうな?
「それと君が管理者になったと同時に契約内容の更新の話が核からあると思う。
主に不干渉の約定についてだね、もし結ばないなら今後の進化は緩やかになるけど普段通りこの村で生活出来るよ。」
案外事務的な手続きが有って気が抜ける、神らしく何かすごい力でどうこうするものじゃないんだな。
だがそれより気になることがある。
「普段通りの生活って、それはどこまで出来るんだ?」
「言葉通りさ、本当に今まで通りの生活が出来るよ。
子どもだって作れるし、ただ神としての仕事もしてもらうってだけで。」
案外神の存在定義って緩いんだな……もっと厳格にルールが決められていると思っていたよ。
「神様、つかぬ事をお伺いします。
開様が神になられて……寿命はどのようになるのでしょうか?」
「神をやめるまでずっと、かな。
生命だけど生命じゃない、神って他の生物の定義にあてはめれないものだからね。」
なるほど、無理に急がなくても俺が神になった時点でドリアードの存在は俺が神をやめるまで確立されるわけだ。
村も食料集めに躍起になっていたところがあったし、それをしなくてよくなるのもちょうどいいな。
案外神になるのも悪くないかもしれない。
「拓志分かってるの?
事実上の不死になるって相当辛いはずよ?」
流澪が泣きそうな顔で俺に質問してくる、流澪は頭がいいからそういった事を考えたことがあるんだろう。
だが俺はもう覚悟が出来てる。
「皆を救えるならそれでいいさ。
それに人間という非力な存在で不死になるわけじゃない、前の世界で人間のまま不死になるよりよっぽど幸せに過ごせると思うぞ。」
実際皆を救うのと同じくらい神の生活が楽しみだったりしている、覚悟というのは語弊があったな。
「君は本当に変わってるねぇ、神になるなんて普通なら拒否すると思うんだけど。
信仰心は集めなきゃいけないし、かといって好き勝手すると反発が起きるし。
だから僕は不干渉の約定を結んで信仰心だけを……っと、こんなことは言わなくていいか。」
もうだいぶ聞こえたから隠しても無駄だぞ。
考えとしては間違ってはないし、それぞれ向き不向きがあるからこいつにはそれが一番性に合ってたんだろうな。
倫理的にはあまり良くないかもしれないけど、神にそういうのを求めるのも間違ってるような気がする。
「他に説明することはないか?」
念を押して聞いておく、後で説明してなかったなんて言われても困るからな。
「うーん……あ!
神にだけ見える紋章が空に浮かんだらタカマノハラへ来てね。
念じたらそこに移動出来るから。」
「タカマノハラ……そこに何かあるのか?」
「神の定例会議があるのさ。
といっても自分が受け持ってる星の状態の報告くらいだけどね。
君の時間間隔で言ったら100年に一度くらいだからそこまで気にする事はないよ。」
絶対忘れる自信があるぞ。
100年って……人が一人しっかりと寿命を迎える頻度だし。
「さて、それじゃ開 拓志を神にするよ。
他の立候補者は居ない?」
神の言葉に流澪が少し手を挙げそうになっていたのが分かった、だが俺を見て挙げずに俯いて沈黙を貫く。
「……よし、この世界の主要な人物の意見も貰えたし早速儀式に移るよ。」
「分かった。」
俺は神に手を握られ向き合う、改めて神をしっかりみると幼さはあるがかなり美形なんだな……羨ましい。
そんなことを考えながら儀式とやらが終わるのを待つ……絶対にこの世界を救うという決心と神になる楽しみを胸に抱いて。
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