第396話 式典のため人間領に出発した。
「ふわーぁ……そろそろ起きないとな……。」
俺は少し差し込みだした朝日で目が覚める、目覚まし時計が無くてもこんな早朝に起きれるようになるとは思ってなかった。
前の世界では寝過ごしかけることが多かったんだけど。
今日は人間領で式典が行われる日、俺がすることは挨拶と祭壇の上で皆を見ていることくらいらしいが……祭壇ってどんな規模なんだろうな?
あまり高すぎると昇るのがしんどいし恥ずかしいので、村で使っている指揮台くらいのものが望ましい。
挨拶は昨日の夜メアリーがカンペを渡してくれたので覚えようとしたが、かなりの長文だったので断念。
あれ読み終えるだけで5分くらいかかるんだけど、話の長い校長先生みたいになるから止めたほうがいいんじゃないだろうかと思う。
一応聞いてみたけどダメらしい、頑張ります。
ちなみに俺が着る服は一番派手じゃない落ち着いた感じ、だが威厳が出るような服の一着のみにしてもらった。
妻達はその結果に不機嫌そうになったがこればかりは譲れない。
「村の技術力の誇示を……。」なんて言ってたが、そんなことしなくても分かってくれてるだろうし、もしそうしたいなら他の所でしたほうが絶対に効果的だ。
ちなみに参加者は魔族領の宴会に参加したのとほぼ同じ面子らしい、結構な大所帯だな。
さて、一回普段着に着替えて朝食を食べに行くか。
そう思って服を着替えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「入っていいぞ。」
「おはようございます開様――おや?
なぜ普段着に袖を通してるんですか?」
「なぜって……朝食くらい食べないとだろ?」
だがメアリーを見ると、式典に参加するためのドレスを着ている……皆それでご飯を食べるのか?
「もしかして伝わってなかったんですかね……朝食は人間領のお城でいただくことになってるんですよ。
そしてそのまま式典に、というのが今日の流れなのですが……。」
何だって、そんな事は何も聞いてないぞ。
「そうだったのか……知らなかった。
じゃあすぐに式典用の服に着替えるよ。」
「すみません、こちらの落ち度です。
では下でお待ちしていますね。」
まさかの伝達ミスにびっくりしたが、その地の朝食って食べる機会が少ないからどんな料理が出るか楽しみだな。
前の世界の住んでた国にかなり似ている食文化だから、味噌汁とか玉子焼きとか……そういうのが出ると嬉しい。
期待しよう。
俺は胸を躍らせながら式典用の服に袖を通した――ん?
ポケットに何か入ってる。
取り出してみると、結構な数の装飾品が……これだけで2・3キロの重さがあるって相当だぞ。
まさかこれ付けなきゃダメなんだろうか。
肩が凝りそうで嫌だなぁ……もしそうなったら流澪に頼んで
着替え終えて妻達と一緒に集合場所へ、これも聞いてなかった。
広場ではなく人間領に続く転移魔法陣の前だし、俺一人で行動してたら間違っていた自信しかない。
最悪瞬間移動で何とかなるけどさ。
「村長、僕の連絡不足で迷惑をかけたようだ……すまない。
だがこの朝の件以外は全て伝えているはず、今日はよろしく頼むよ。」
「大丈夫だ、俺も人間領の朝食が楽しみだし。」
俺がそう言うとデニスがムッとした顔で俺を睨む、ドワーフ族の料理に飽きたわけじゃないから安心してほしい。
「ワシもついて行って正解じゃな。
食べさせてもらったもの、全て村で提供出来るよう舌で盗んでやるわい。」
「はは、ドワーフ族なら簡単に作れるようなものしか出ないよ。
王族とは言え朝食はそんな凝った物は食べないからね。」
デニスの言葉を聞いたリッカは笑いながら口を挟む、デニスはそれで少し得意げになったが俺は朝食が余計楽しみになった。
もしかしたら俺の希望通りのものが出たりしてな。
「リッカ姉さん、そろそろ……。」
リッカの隣にいた男の子が少し急かすように小声でリッカに話しかける。
確かあの子はリッカの弟、シモンだったかな?
様子を見る限り魔族に変化はしてないような……魔族領で大使をしていると聞いたがリッカと同じ症状にはならかったようだ。
魔素の濃度が未開の地と魔族領じゃ違うのかもしれない、報告書を読んで知っているとは思うが対処できるようにしておかないとな。
人間領ではその心配もなさそうだけど。
閑話休題。
「うん、そうだね。
じゃあ皆、出発しようか。」
リッカとシモンを戦闘に続々と転移魔法陣をくぐって人間領へ出発。
何だか人間領に行くのも久々な気がするな。
そういえば式典が終わればマックスが村に来るんだっけ、ダンジュウロウからマックスの願いを叶えてくれって言われたけど……それもその時言われるのだろうか。
村で叶えれることがあれば是非叶えてあげたいものだ、マックスには相当お世話になったし、この後もなるだろう。
だがとりあえずは式典を恙なく終わらせ――いや、まずは朝食だな。
お腹も鳴ってるし、まずは腹ごしらえ。
人間領の朝食を堪能させてもらうとしよう、変に気を利かせたり気合を入れたりしていつもと違う物を出されないといいけど。
……。
フラグになりませんように。
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